12月5日の日経新聞に、年収156万円未満のパート労働者の社会保険料を会社が肩代わりする仕組みを厚生労働省が整備する方針という記事が載りました。2026年4月に導入する方向で調整ということなのですが、「年収の壁」対策として働き控えを減らす案ということなのです。そこでそもそも現在の法律では保険料の負担はどのように規定されているのかを復習してみたいと思います。
【厚生年金保険法】
(保険料の負担及び納付義務)※3項以降は略
第82条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。
2 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。
【健康保険法】
(保険料の負担及び納付義務)※2項以降は略
第161条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の2分の1を負担する。ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。
(健康保険組合の保険料の負担割合の特例)
第162条 健康保険組合は、前条第1項の規定にかかわらず、規約で定めるところにより、事業主の負担すべき一般保険料額又は介護保険料額の負担の割合を増加することができる。
12月10日の社会保障審議会年金部会に厚生労働省が出す案は、「企業ごとの労使合意に基づいて労使の負担割合を変更できるようにする。ただし、労働者の負担をゼロにすることは認めない。将来受け取る年金額は変わらない(12月5日の日経新聞記事)。」ということです。同記事によると「標準報酬月額」の等級ごとに、企業判断で負担割合を変えられる。対象は月収8.8万円以上、13万円未満(年収換算で106万円以上、156万円未満)を想定。例えば年収106万円の人は9対1で企業が多く負担し、156万円が近づくにつれて本来の5対5に戻していければ、手取りがなだらかに増えやすくなるということで、労働者の負担をゼロにすることは認めない。将来受け取る年金額は変わらないということなのです。
時限的な仕組み、企業側の保険料負担を軽減する策も検討するとありますが、この方法は現実的にはどのように対応するのかまだイメージがつかめていません。確かに上記の法律の定めのように、健康保険組合は、保険料負担について事業主の負担割合を増加できたのですが、今度は企業ごとさらに標準報酬月額の等級ごとということになると、給与計算の際、被保険者から控除する額も等級ごとに異なり、それに対応する事業主負担はシステムで対応するとしても、非常に煩雑を極めることになると心配です。
また、働き控えを減らすという目的に対して、これまで厚生年金保険の長きにわたる保険料折半負担原則を変更する大義は、人手不足が解消できるということなのでしょうか。確かに壁による働き控えで年末に困る会社はあると思いますが、その解消を企業に金銭的にも事務的にも負担させるということが筋として良い方法なのか、さらに将来の年金額増加などのない健康保険はどうするのか、疑問が沢山浮かんできます。今後審議会でどのように審議され、どのように決まっていくのか注視しつつ、社労士仲間でも議論していきたいと思います。
明日から京都へ出張して、ビジネスと人権の研修を行ってきます。これで今年の出張は終了。チームは仲の良いメンバーでもあるので、楽しんできたいと思います。ビジネスと人権はちょうど2年前連合会の研修を受けてファシリテーターを務めさせてもらっていますが、事務所のビジネスとしてもだいぶ先を見据えて取り組める状況になってきました。新たな社労士の業務の柱になるように仕組化を図り、頑張って取り組みたいと思っています。
今回の出張は前日から入りホテルで少しゆっくり過ごしてみようと思います!年末年始に向けて英気を養ってきたいと思います。