最近社会保険の調査が多いような気がします。また調査の内容が以前に比べて厳しいとも感じており、手続きに誤りがある場合2年間の遡りにより算定と月変のやり直しが必要になるケースもあります。そこで今日は手続上で注意しなければならないポイント2点を取りあげます。
まずは、コロナ禍以後非常に増えてきた一時的な手当の扱いです。業務とは関連性のない慶弔的な手当(例えば結婚祝い金等)は恩恵的ということで福利厚生に位置付けられますが、疑義照会によれば業務に関連する手当であれば概ね福利厚生にはなりえず、報酬又は賞与で保険料徴収をする必要があると考えてよいでしょう。ほとんどの場合課税はされているのですがなぜか保険料については必要がないと考えられケースが散見され、指摘されることが多いです。課税した場合は保険料についても徴収する必要がないか確認したいところです。一時金のことが多いので、その場合報酬に係る保険料ではなく賞与保険料の徴収と賞与届が必要になります。疑義照会の回答と抜粋は次の通りです(疑義照会回答 厚生年金保険適用P8)https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/kounen_tekiyou.pdf
『恩恵的かどうかの判断は、社会通念上での判断となりますが、ご照会の事例は(大入袋に関しては)、賃金台帳に記載があること、金額が1 万円であること、これに加え、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているものであれば、本来の大入袋のもつ性質とは異にし、恩恵的ではないと判断するのが妥当となります。』
もう1点心配しているのが一昨年の適用拡大の運用です。2022年10月の101人以上規模の適用拡大の際の判断としては契約書の内容が適用拡大の4要件(①週所定労働時間20時間以上、所定内賃金が月額8.8万円以上、2か月超雇用見込、学生ではない)に該当しているか否かで判断しました。その際、次の契約更新の際に見直せばよいのではなく、実際の働き方により資格取得の必要が出てきます。つまり恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、更新前でも資格取得する必要があり、Q&A問34に以下の通り示されています。https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.files/QA0610.pdf
『実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。』
業務量が契約段階の予想より増え週所定労働時間が20時間以上の勤務が引き続き続いている等4要件を満たす状況が続く場合は、3月目に資格取得しなければならないという点について会社の認識が薄いような気がします。2か月の勤務状況をみて3か月目に入る前に該当者には今後どのような働き方にするかをご本人に聞き取得の判断をする仕組み(フロー)を作る必要があると考えます。この点適用拡大時にそこまで検討されていればよいのですが、これを行わず結果恒常的に20時間以上の勤務が続いてしまったという場合は、これも遡りで資格取得を求められますので注意が必要です。
2024年10月にはさらに従業員数51人以上の企業が適用拡大の対象になります。冒頭にも書きましたが年金事務所の調査は以前より細かく厳しいと感じています。社労士同志の話の中にもそれは出てきていますので、会社にも一度厳密な手続き方法を伝えておくほうが良いかもしれません。