OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

副業について

2024-01-28 18:27:04 | 雑感

先日(1月22日)の日経新聞に「バラ色ではなかった副業」という記事が載りましたが、今後副業・兼業はどのような方向に向かうのか、企業も念頭に置いておく必要があると思います。

記事は日本で実質的に副業が解禁されてから5年が経ち、社員の副業を認める企業は過半数となったものの正社員の副業の実施率は1割に届いていないということです。この企業の数字は経団連が昨年10月に公表した「副業・兼業に関するアンケート調査結果」からの数字であり、経団連企業会員275社が回答した(回答率18.2%)ですが、確かに一昨年あたりから大きな企業は就業規則を変更して副業の申し出があれば対応可能としたいというご要望がかなりあったように感じます。

記事によると、社員の送り出しは認めても、受け入れには慎重な企業が多いということで、リクルートのマッチングサービスでも1つの案件に応募者が20人という状況で、現状の「人手不足下では珍しい『買い手市場』となっている」状況だそうです(ちなみに、そういうマッチングサービスがあることは初めて知りました)。

また企業側と働き手の思いにズレがあることも副業が進まない要因としてあげています。企業側は、「エンゲージメントやモチベーションアップ、スキルアップ」などの効果を考えているようですが、副業者の副業をしている理由は、「収入増、1つだけの仕事では生活できない」が多く、確かにズレを感じます。

やはり副業を行うのであれば現状の仕事にかなりゆとりがある場合なのではないかと思え、週休3日制などが一般的になれば増えてくるのかもしれないと感じます。仕事と家庭の両立を目指して男性・女性共に家事を役割分担している現状を見ると、さらにそこで副業をするのであれば、よほど本人の趣味が高じて収入に結びつくような場合や、やはり収入面の補填という状況が現実的なのかなと感じます。

TACの講師をしている頃は考えてみると本当に体調なども気にせず若さで突き進んでいた感じで、事務所と講師業の両立に加え、まだ子供も小学校から大学受験まで(大学生になってからは一人暮らしになりました)の時期は食事はもちろんお弁当作り、サッカーのユニフォームの洗濯なども含めた家事・子育て全般をよく頑張ったなあと思います。TACのクラスは夜の時期もありましたが後半は日曜日にさせてもらっていましたので、まさに講師業は副業のようなものだったと感じるのですが、それを考えると副業をする場合、やはりパワーが必要と感じます。

ただし、その頑張りは今財産になっていることも感じますので、副業の効果は実感しているのですが、だれにでもお勧めすることはちょっと厳しいように思っています。


厚生労働省の履歴書モデル

2024-01-21 21:38:21 | 労務管理

令和2年7月に日本規格協会がJIS規格の解説の様式例から履歴書の様式例を削除したため、厚生労働省で新たな履歴書の様式について検討を行い、新たな様式例(厚生労働省履歴書様式例)を作成し示しています。令和3年4月16日の労働政策審議会の資料には新たな履歴書様式例を作成に至った背景について以下の通りの記載があります。
・ 厚生労働省では、これまで公正な採用選考を確保する観点から、一般財団法人日本規格協会(JIS)が示していたJIS規格の履歴書の様式例の使用を推奨していた。
・令和2年7月に、LGBT当事者を支援する団体から、厚生労働省、日本規格協会等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われた。
・当該要請を契機に、JIS規格の履歴書の様式例全体が削除された。
・このため、公正な採用選考を進める上で参考となる様式を厚労省において定めることとした。

JIS規格の履歴書と厚労省が作成した履歴書様式例の相違点のポイントは以下の通りです。
1.性別欄を「男・女」の選択ではなく任意記載欄に変更。なお、未記載とすることも可能とする。
2.「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の各欄を様式内に設けない(各欄を削除する)こととする。

以下のリーフに様式例の作成に至る状況や、変更点、新旧を比較した具体的な記載例も載っています。
https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/content/contents/R3_jigyonusi_rirekisyo.pdf

 確かに「公正な採用選考の基本」という厚労省のHPには、公正な採用選考を行うためには「公正な採用選考を行うことは、家族や生活環境に関することなどといった、応募者の適性・能力とは関係のない事項で採否を決定しないということです。
 そのため、応募者の適性・能力に関係のない事項について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。」とあります。女性か男性かという点については能力には関係がない事項かもしれませんが、適性には関係がない、また採用をする場合に考慮すべきでないということについては良く考えてみたいと思います。厚生労働省の履歴書様式は、男・女いずれかを選択する方法ではなくて任意記載欄になっており、未記載も可能ということなので、どのように記載するのかということについてがある意味意思表示になるような気がします。

コロナでここ4年間中断していた、事務所の社外研修に横浜に行ってきました。コロナ前は1泊で主に顧問先の博物館や工場見学に行くことが多かったのですが、今回は久しぶりなので日帰りで行ってきました。やはり顧問先のお仕事の一端に触れることは、事務所の方向性を振り返り、またそれぞれが担当している日常的な業務についても新たな気持ちで取り組めるようになるように感じ、中華街でのランチでもみんな楽しそうでしたので、とても実りある1日になったのではないかと感じました。

   


公契約条例と労働条件審査の連携について

2024-01-14 21:23:18 | 労働法

渋谷区の公契約条例は、平成24年6月第2回区議会定例会で提案され、平成25年1月1日に施行されました。当時の桑原渋谷区長が、リーマンショック後発生した働いているのにもかかわらず貧困に陥っているいわゆるワーキングプアを憂慮して、公共事業における労働者の適正な賃金の確保、過剰な競争の排除等を目的として公共事業の発注に際して報酬の下限額を定め、その支払いを入札等の条件とする「渋谷区公契約条例」を制定しました。当時東京都23区の中での初の公契約条例の制定でした。

制定された公契約条例の目的条文には、区が締結する公契約に係る業務に従事する労働者等の適正な労働条件を確保することにより、公契約に係る事業の質の向上を図り、区民が安心して暮らすことができる地域社会の実現とあり、公契約の範囲は一定の工事請負契約、業務委託契約、指定管理協定で区長が必要であると認めるものです、

この公契約の対象についての報酬下限額を区長が定めるのですが、労働報酬審議会の意見を聴くことになっており、私は施行時から労働報酬審議会の委員となっています。色々と調べてみると学術的にはいくつかに分類されており、憲法と契約の自由の関係など問題点が指摘されているようですが、東京都だけでも10を超えた自治体において公布されており、全国的に着実に広がってきました。

一方労働条件審査は、東京都板橋区で平成20年8月より指定管理者制度導入施設について、効率的な運営やサービス水準の維持・向上、利用者の安全対策など、当初の導入目的にのっとり適切に運営されているかをモニタリングし、客観的に評価・検証を行う取り組みとして社労士会に委託されました。労働条件審査も全国的に拡大をたどり、指定管理者の選定にあたって労働法令の遵守や労働条件への適切な配慮がなされるよう多くの社労士が取組んでいます。

平成15年9月に施行された改正地方自治法により、新たに「指定管理者制度」ができて、地方自治体が指定管理者制度を導入した目的には、民間企業の持つノウハウを活用することによる住民サービスの向上と経費削減の2つが主に上げられており、一定の成果を挙げている一方で、業務委託における競争入札が繰り返され、民間企業では落札コストを下げるため、委託業務に従事する労働者の人件費を低く抑える、低賃金、長時間労働などの労働条件の低下を招いたり、社会保険のみ加入問題などの法令違反が生じるなどが懸念されています。公契約において報酬額についての配慮だけでなく、労働法の違反や人権侵害が起こることは食い止める必要があり、労働報酬下限額の調査、確認と合わせて社労士の行う「労働条件審査」を導入することにより、働く人々の労働環境が確実に守られていくであろうと考えており、これを周囲に提案していくことにしています。

詳しくは全国社会保険労務士会連合会のHPに載っていますのでご参考まで。
https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/271/Default.aspx

年末に受けた健康診断で運動をするべしとの指摘があり、腰痛対策もあり、先日加圧トレーニングを体験してみました。これが普段使わない筋肉を使うのかなかなか終わった後爽快で、少し続けてみることにしました。もともと中学から大学までバリバリ体育会に所属していたわけで、体を動かすことは嫌いではなかったのですが、社労士になってからはとにかく仕事一途で筋肉もふやけており、ちょっとワクワクしています。

2月のBBクラブは完全リアルで行うことになっており、オンラインを行わないため参加者が減ってしまっても仕方がないと覚悟していたのですが、現時点で100名を超す申込みがあり、二次会への参加者も40名弱と久しぶりにコロナ禍前の賑わいが戻りそうです。今日は法改正と労務管理、労働社会保険の動向の取り上げるテーマを検討したのですが、こちらも今から楽しみです。


2024年の仕事始め

2024-01-08 22:02:05 | 雑感

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。2024年のお正月、被災された方々の報道や羽田の事故を目にして、心痛むことが多いお正月でした。辛い年初になりましたが、辰年は「新しいことを始めて成功する、いままで準備してきたことが形になるといった、縁起のよい年」ということのようですので、その言い伝えに期待したいと思います。

昨年28日に仕事を早めに切り上げて事務所のメンバーと納会を行って、年末は例年通り真剣に大掃除をしました。正直掃除は大好きなので苦にならず、様々家の中を整理をして新年を迎えました。お正月もこれも例年通り、駅伝をテレビで見て、初詣に行き、お墓参りに行き、読みたいと買いためておいた本もかなり消化することができ、のんびりと過ごすことができたと思います。5日は初出勤で、事務所のメンバーとこれまた例年通りお世話になっている東急セルリアンタワーからの夜景を眺めつつ新年会で楽しい時間を過ごしました。今年は暦の並びで翌日から3連休でしたので、実際の仕事始めは明日からという気分です。ちなみに今年のおみくじは久しぶりに大吉でした。

明日からは仕事の予定が約2週間びっしりなのですが、今年は少し余裕をもっていきたいと考えています。新しい仕事が入るとつい自分で取り組みたいと思ってしまうのですが、少し絞っていかないと時間は限りがあるわけで、と思っています。事務所はメンバーがそれぞれ力をつけてきており、プロジェクトを沢山走らせる体制ができています。プロジェクト体制をさらに発展させて事務所の今後の方向性に結び付けていくイメージを持ちたいと思います。また、オンライン会議が当たり前になり、1時間ごと会議が入るようになり以前よりさらに時間的にゆとりがなくなったというあたりは会議インターバルで予定を入れない時間を作るなどの工夫が必要だと感じます。

一昨年から取り組んでいる「ビジネスと人権」はできるだけ自分の専門性を高めるため研究していきたいテーマです。ILO駐日事務所の支援を受けて連合会が行っているビジネスと人権の事業(支援できる社労士をできるだけ多く輩出する目的)が軌道に乗ってきているので、その中で私も切磋琢磨しつつ、顧問先をはじめとして企業や業界団体の「ビジネスと人権」の導入支援を積極的に働きかけていこうと思っています。昨今の価値観の大きな変化を企業が自然な形で取り込んでいくくためにも「ビジネスと人権」の主要な論点がとても有効だと感じます。

あとは、社労士としての専門性は大事にしたいと思っていますが、ここまでくると専門性にこだわりすぎず広い視野で物事を見て考えることを心がけてみたいとも思います。昨年後半からその傾向はあり、仕事にこだわらず読む本をはじめとして情報に接し、プライベートな付き合いの友人との時間も確保し、国内外の旅行やスポーツ観戦などをしていると、のびのびとした気持ちの中で思考ものびやかに、また穏やかになっていくような気がしたからです。

色々と今年1年に向けての夢はあるのですが、相変わらず仕事に追われているかもしれません。それはそれで幸せなことだと思いますし、まずは健康で1年を過ごすことを目指していきたいと思います。このブログを読んでいただいている方にとってもを良き1年になりますように。