OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

育児介護休業法の時間外労働の制限規定について

2018-05-06 22:52:47 | 労働時間

初夏までに育児介護休業法の原稿を仕上げる必要があり、事務所のスタッフでプロジェクトチームを作り頑張っています。私も連休中に少し取り掛からねばと思い、育児介護休業法の歴史を調べてみたところ、すっかり忘れていたこともあり、覚書もかねて時間外労働の制限規定の成り立ちを記載しておこうと思います。

第17条 事業主は、労働基準法第36条第1項本文の規定により同項に規定する労働時間(以下この条において単に「労働時間」という。)を延長することができる場合において、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって一定の条件に該当しないものが当該子を養育するために請求したときは、制限時間(1月について24時間、1年について150時間をいう。)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。(一部省略)

この規定が施行されたのは平成14年4月1日です。実は育児介護休業法第19条には深夜業の制限も定められており、時間外労働の制限、深夜業の制限ともに子が小学校就学前までの期間を対象としています。この両規定の施行日は同じと思いきや、実は深夜業の制限規定は平成11年4月1日、時間外労働の制限規定は平成14年4月1日と深夜業の制限規定の方が先に施行されていました。深夜業はそもそも満18歳以上女性は禁止と労基法に規定されていたもので、しかし平成9年に均等法における募集・採用・配置・昇進についての差別禁止の努力規定が義務規定に改正され、それに伴いバランスをとるために労基法の女性の深夜業の制限規定は撤廃となり、対象者を育児介護休業者に絞り込み、異動してきたという事情があります。

時間外労働の制限についても、平成11年4月1日労基法改正施行日前は、満18歳以上の女子に関する規制として時間外労働の制限が定められていたものが、改正により撤廃されたため育児介護休業法に異動してきたという経緯があります。平成11年の労基法改正前の満18歳以上の女子に関する規制をまとめると以下の通りになります。

平成11年改正前の労基法で定めていた女子の時間外労働の上限規制

業種

具体例

時間外労働の上限

工業的業種

鉱工業
建設業
運送業

1週間に6時間
(決算時は2週間に12時間)
1年に150時間

保健衛生業・接客娯楽業

病院
旅館
飲食店

2週間に12時間
1年に150時間

上記以外の非工業的業種

商業
サービス業

4週間に36時間
1年に150時間

1年150時間の時間外労働の上限規制が、育児・介護期間中の労働者を対象に絞り込んだ上で育児介護休業法に異動してきたのだということがわかります。なお18歳未満の女子は、年少者としての保護規定の対象となりますので上記規制の対象からは外れていました。

また時間外・休日労働の制限の例外として、①指揮命令者及び専門業務従事者、②臨時の必要がある場合、③法41条該当者の3つがあるとされていました。この①指揮命令者及び専門業務従事者は、改正ですっかり姿を消してしまいましたが、どのような立場であったかというと、1.業務を遂行するための最小単位の組織の長である者、2.職務上の地位が上記の者より上位にある者で、労働者の業務の遂行を指揮命令する者(管理監督者を含む)と定められていました。完全に私見ではあるのですが、労基法のこの定義が残っていれば、リーダー的な女性がもっとたくさん育って来て、今女性活躍ももう少し進んでいたのではないかという気がします。

上記女子の保護規定撤廃により、当時TACの講師をしていた私は講義を終えて控室に戻る時間帯には受付の女性がいなくなっていたのが、戻った際に残っているようになったということで、法改正の効果を実感したのを覚えています。労基法はこの平成11年改正後21年改正を経て、今回また大きな改正が30年に成立するとすれば、おおむね10年ごとに改正ということになるわけですね。

連休中は、ゆっくり休んだ、勉強に集中した、旅行に行ったなどそれぞれまとまったお休みの中で充実して過ごされたのではないでしょうか。しかしそれにしてもあいにく毎日風が強いと感じたのは私だけでしょうか。最近駅前にできた大きなビルの前に強いビル風が吹くようになり、建物が前にあり比較的静かだったうちのベランダにもその影響があるのではないかと心配になります。

連休は、勉強の貯金も少しできましたが、お天気が良かったので毎年恒例の衣替えをしっかり行いました。服をクリーニングに出すだけではなく、寝具を夏用にしたり、ソファーのカバーも綿のものに変えたり、ブーツをしまい込んだりとずいぶんとすっきりしました。また夏に向けて準備万端になったような気分でいます。


役員専属自動車運転手の断続的労働について

2017-06-18 23:59:19 | 労働時間

役員専属運転手さんの労働時間は役員が朝出社してから夜のお付き合いが終わり帰宅するまでとかなり長くなることが多いのかと思います。以前はいわゆる「お抱え運転手さん」というのは比較的大きな企業では一般的だったかと思いますが、昨今ハイヤー会社と契約をしていることが多いかと思います。

そもそもお抱え運転手さんというのは手待ち時間が長く実質運転している時間は短いのではないかと想像できるので、労働基準法第41条で定める労働時間・休憩・休日の適用除外の一つである監視断続労働に当たるのではなかったかと調べたところ、通達が出ていました。

まず、労働基準法第41条の労働時間等の適用除外については以下の人たちが該当します。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(農業。林業を除く)又は第七号(水産業)に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者(いわゆる管理監督者)三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

上記にある通り、監視又は断続的労働が適用除外される場合は労働基準監督署長の許可が必要になります。それではその許可はどのような場合に行われるかということになりますが、許可基準も通達で示されています。

労働基準法第条の「断続的労働に従事する者」の許可基準(昭和22年9月13日発基17号、昭和23年4月5日基発535号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)

 断続的労働に従事する者とは、休憩時間は少ないが手待時間が多い者の意であり、その許可は概ね次の基準によって取り扱うこと。

(一) 修繕係等通常は業務閑散であるが、事故発生に備えて待機するものは許可すること。

(二) 寄宿舎の賄人等については、その者の勤務時間を基礎として作業時間と手待時間折半の程度まで許可すること。ただし、実労働時間の合計が8時間を超えるときは許可すべき限りではない。

(三) 鉄道踏切番等については、1日交通量10往復程度まで許可すること。

(四) その他特に危険な業務に従事する者については許可しないこと。

 上記基準に加えて役員専属自動車運転手についても昭和23年7月20日基収2483号で以下の通り示されています。
(問)
 事業場等の高級職員専用自動車の運転手は勤務時間としては長時間に及ぶこともあるが、その半分以上は詰所において用務の生ずる迄全然仕事がなく待っている場合、これを断続的労働として取扱えないか。
(答)
 設例の如き場合には断続的労働として取扱って差支えない。

役員専属自動車運転手の断続的労働が認められるのは「半分以上は詰所において仕事がなく待っている場合」ということになるでしょうか。

今週は無期転換の準備のため契約社員就業規則を加筆修正したり、7月のセミナーのレジュメの準備をしたり、10月の育児介護休業法の改正の原稿を書くための準備をしたりしていました。無期転換については労働条件を「従前と同一」とした場合であっても、契約社員就業規則など加筆修正する箇所が結構あり、頭を使う必要がありました。また10月の育児休業の改正原稿については、いつも通りまだ政省令や指針が要綱までしか出ていない段階でのとりかかりであるため、労働政策審議会雇用均等分科会の資料等を読み込む必要があり、なかなか掘り起こしが楽しいです。

時間ができそうなので労働政策審議会の傍聴にも行きたいと考えているのですが、これがなかなかあれこれ予定が入ってしまい忙しくもう少し先の計画になりそうです。 


36協定 一定期間を3カ月に設定する場合

2017-03-26 23:12:07 | 労働時間

36協定の締結は4月1日を初日として締結することが多いかと思いますが、36協定の免罰効果は届出をして初めて発生するため4月1日以前に届け出ておかないと4月以降時間外労働や休日労働をした場合に違法になってしまうことに注意が必要です。特に今年は4月1日が土曜日ですので、3月31日までに届け出を済ませておく必要があります。

ところでこのところ当然に36協定の内容の確認依頼が多いのですが、特別条項について3カ月の延長時間を定めてみたいという会社が今年はやや多めに感じています。

そもそも36協定の延長時間は、「1日についての延長時間及び1日を超える一定期間」についての延長時間を協定しなければならないこととされており、一定期間については、「1日を超え3箇月以内の期間及び1年間」とされています。ということは、1日・1カ月超3カ月以内・1年の延長時間を定める必要があるということです。この1カ月超3カ月以内の期間は、圧倒的に「1カ月45時間」と定めることが多いのです。

ところでさらにここで定めた時間数をさらに延長できるとされた特別条項を締結する会社がほとんどであるのですが、特別条項を3カ月(例えば)240時間などと定めようとするのであれば、いわゆる限度基準に基づく延長時間も3カ月120時間以内に定める必要があります。要するに限度基準に基づく延長時間の期間単位と特別条項として定める延長時間の期間の単位は揃えなければならないということです。1カ月45時間で特別条項3カ月240時間と定めることはできず3カ月120時間で特別条項240時間などと定めることになるということです。

これはどこかに通達があったと思い探したのですが、確か以下の通達の「一定期間として協定されている期間ごとに」、という部分が根拠であったと思います。

「時間外労働の限度基準」の解釈(労働基準法第36条関係)(平成11年1月29日基発45号・平成15年10月22日基発1022003号)

 (3) 一定期間についての延長時間の限度
 イ 労使当事者は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間を定めるに当たっては、当該一定期間についての延長時間は、限度基準別表に掲げる限度時間を超えないものとしなければならないこととしたものであること。
 ハ 一定期間についての延長時間は限度時間以内の時間とすることが原則であるが、弾力措置として、限度時間以内の時間を一定期間についての延長時間の原則(以下「原則となる延長時間」という。)として定めた上で、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限り、一定期間として協定されている期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間(以下「特別延長時間」という。)まで労働時間を延長することができる旨を協定すれば(この場合における協定を「特別条項付き協定」という。以下同じ。)、当該一定期間についての延長時間は限度時間を超える時間とすることができることとしたものであること。

 年度末で今週は皆さん忙しいのだろうと思います。私の方は今週でやっと8週連続セミナー講師の仕事が終わりますので少しホッとしています。我が家のベランダでは受講生OBのMさんから頂いたシクラメンがとてもきれいに咲いています。一鉢は4年前、もう一鉢は2年前に頂いたもので、残念ながら3年前に頂いたものだけは翌年を迎えられなかったのですが、2鉢は元気で毎年楽しんでいます。

それでは、来週から新たな年度に入りますので気分一新して頑張っていきましょう。


裁量労働適用について

2017-03-12 22:52:21 | 労働時間

来週のセミナーは裁量労働についてがテーマであるため、今週末は裁量労働について通達を読み直したり、安西先生の著書を読んだりしてレジュメをまとめていました。専門業務型裁量労働制一つとってもあれこれと話すテーマはあり、36協定ほどではなくても労基法の条文は一つ一つそれなりに深いものだと感じます。ちなみに専門業務型裁量労働制は昭和63年4月1日に施行されているものです。

その中で本来であれば専門業務型裁量労働制の対象労働者が裁量労働の適用から外れるケースについて考えてみました。

労基法第39条の3の専門業務型裁量労働制の条文では、「使用者が、労使協定により裁量労働の要件である事項を定めた場合において、労働者を裁量労働対象業務に就かせたときは、当該労働者は、協定で定める時間労働したものとみなす。」と定められています。要するに裁量労働対象者であったとしても、みなし労働時間で働くことになるのは「裁量労働対象業務に就かせたとき」であり、裁量労働対象業務を行っていないときは「みなし労働時間制」は使えないということになるわけです。

安西先生の著書では、「裁量労働対象業務に就かせなかったとき」とは、①欠勤等によって裁量労働に従事しなかったとき、②当該裁量労働以外の業務に従事したとき(たとえば、他の一般事務労働、出張、労働組合活動、私用外出等)とあります。

これらの業務を行う場合は、本来の業務が裁量労働対象業務の労働者であっても、通常の労働者と同じ実際の時間管理がなされる必要があるということになります。その場合は、就業規則や裁量労働に係る労使協定に、「裁量労働対象業務に従事しなかった場合は、本協定に定めるみなし労働時間の適用はない。」と定めておくことが必要とされています。

先日の法改正セミナーで、改正育児介護休業法で質問の手が上がったのが、やはり裁量労働で働いている場合についてでした。裁量労働対象者の場合の半日単位の子の看護休暇・介護休暇の扱いについてはどのようにすべきか、ということでした。確かに裁量労働は例えばみなし労働時間を8時間としている場合、6時間しか働かなくても8時間とみなされるわけですから、半日単位の子の看護休暇として4時間取得したとしても、みなし労働時間制の考え方から言えば8時間働いたとみなされることになるわけです。厚生労働省のモデル育介規程によると、半日単位の子の看護休暇・介護休暇は「対象労働者の範囲を決めることができる」ようなので、当該半日単位の取得対象者から裁量労働対象者を適用除外すると労使協定に定めることはできるかと、改正前に一度労働局に問い合わせたことがあります。しかし、その部分については今のところ決まっていませんという回答でした。

実務上からいうとかどちらかの扱いになると思います。

①子の看護休暇・介護休暇の半日単位から適用除外しておく(要するに半日単位で4時間働いた日でも8時間とみなされるためわざわざ半日単位の子の看護休暇・介護休暇を取得する必要がない)

②裁量労働対象者からその場合外して、半日単位で子の看護休暇・介護休暇をとってもらう。

どちらが労働者に有利かと言えば、①の半日単位の取得から適用除外しておく方が有利のようにも思いますが、裁量労働制があまりメリハリがない場合は裁量労働から外して半日単位の子の看護休暇・介護休暇を取得できるようにしておく方が取得しやすいようにも思え、会社ごとに決めるのが良いのかなとも思います。

やはりあれこれ実務と絡めてみると裁量労働一つとってもなかなか深いものがあります。

花粉症の季節がそろそろ来たのと同時になんとなく空気が春めいてきてウキウキします。今年は顧問先の担当者の方に花粉症の薬は早めに飲んでおく方が良いですよと言われたので、10日前くらいから対策をしているためかほとんどムズムズもなく快調です。

講師時代良くお話ししたのですが「はなうがい」というものを毎日寝る前に行っていて、それをしないと気持ちが悪く、もう20年くらいは続けていると思います。そのためか比較的風邪もひきにくいように思うのですが、花粉症の時期だけは「はなうがい」ではどうにもならずやはりお薬の世話になります。今は外に出るときガードのためにスプレーするとかいろいろなものが販売されていますが、多少は効果があるのでしょうか。辛い時期を過ごしている方もいると思いますのでくれぐれもお大事に。この季節が過ぎればさらに気持ちの良い季節が待っていますので一時の辛抱と思います。


36協定特別条項を適用する場合の手続きについて

2016-07-18 23:28:17 | 労働時間

最近の労働基準監督署の調査は以前より厳しくなったと感じています。2015年4月に、過重労働による健康被害の防止などを強化するため、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導を行う過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」が新設され、過重労働対策に力を入れているあらわれだと思います。

長時間労働の抑制に最も重要な役割を果たすのが36協定であり、届出は時間外・休日労働を行う会社であれば当然のことなのですが、協定の内容も適正に締結されているかどうか注意が必要です。今年2月に行った渋谷労働基準協会主催の「36協定集中講座」は約120名のご参加があり、講義終了後のご質問も20人くらいの方が並ぶなど会社もかなり真剣に対応を考えていると感じました。この講座では36協定だけをテーマに3時間お話ししたのですが、今年に入って監督署の調査に立ち会うとさらにいろいろなことをお話ししておく必要があることを実感して、来年はさらにお話しするポイントが増えそうです。

時間外労働については1箇月45時間等の限度時間が定められており、この限度時間を超える場合は特別条項を締結しておく必要があります。特別条項についての上限時間の制限はないのですが、通常は1箇月80時間程度の時間外労働を定めている場合が多いかと思います。ちなみに特別条項が80時間を超えて定められている場合は監督署の調査の対象になることが多いようです。

この特別条項は臨時的に適用することができ、その適用は年半分までと定められています。また適用する場合については手続きが必要ですが、「労使の協議を経て」と定めている場合なかなか実行できないケースが多いため「労働者の過半数代表者に通知をすることにより」ということで「通知書」を作成して通知することをお勧めしてきました。

しかし今年になって「通知書」が存在した場合でも、特別条項の適用の後に通知されたものでは認められず、事前通知をすることと是正勧告されるようになりました。確かに通達では「労使当事者間において定める手続きを経て」となっていますから、事前通知をしてから特別条項を適用する必要があるということになるのですが、社員一人ひとりが45時間などの限度時間を超え特別条項が適用される際に通知等の手続きをとるのは人事担当者としては非常に大変なことです。

とにかく一人分の担当の仕事を減らす、人数を増やしてシフトを分割するなど工夫をして、時間外労働は45時間以内に収めるのが一番だと最近つくづく感じております。

特別条項付き協定を結ぶ場合の要件は以下のリーフレットに記載されています。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf#search='36%E5%8D%94%E5%AE%9A%E3%80%81%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%9D%A1%E9%A0%85%E3%80%81%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%80%81%E9%80%9A%E9%81%94'

いよいよ夏休みが始まりますね。受験生はここが勝負どころということになると思います。来年から夏休みを思いきり楽しむためにもとにかく今年力を出し切り頑張ってもらいたいと思います。

私は今年の夏は、以前から登ってみたかった北横岳に挑戦してみようと思っています。


みなし労働時間の設定について

2015-05-10 23:30:38 | 労働時間

労働時間の算定が困難な事業場外労働や労働者の裁量による労働(裁量労働)については、実際の労働時間にかかわらず、定められた一定の労働時間労働したものとみなして算定する「みなし労働時間制」が認められています。

みなし労働時間制には以下の3つの種類があります。

①事業場外労働のみなし労働時間制 ②専門業務型裁量労働制 ③企画業務型裁量労働制

それぞれ採用するには条件がありますが、いずれにしても労働時間の算定が困難であるため、そのくらいの労働時間であろう時間を「みなし労働時間」として決めることになります。

これまで色々な企業の「みなし労働時間」を見てきましたが、おおむね所定労働時間と同じ7時間や8時間という場合が多かったのではないかと思います。時折「9時間」と定めている場合もあり、その場合は法定労働時間の8時間を1時間超えるため、必ず毎日1時間の時間外労働が発生することになり、月単位で行けば労働日が22日の場合22時間の時間外労働が発生し、その時間数の割増賃金を支払う必要があります。

この「みなし労働時間」は当然実態に合わせて決める必要があり、実態とかい離がある場合は労働基準監督署の調査で指摘されることになります。

しかし考えてみれば、36協定の時間外労働の限度は45時間と定められているわけですから、みなし労働時間数は法定労働時間を超える2時間までの10時間が限界ということになります。要するに毎日2時間時間外労働が発生すると2時間×22日=44時間ということで何とか限度時間の45時間内に収まることができるということになります。

例えば実態に合わせて11時間とすると3時間×22日=66時間ということになってしまいます。36協定の特別条項で70時間と定めておけば収まることは収まるのですが、特別条項は臨時の場合に限るとされており、その臨時の場合の考え方は年の半分までとされています。従ってみなし労働時間を11時間と定めることは年間を通じて特別条項を使うということになってしまうため認められないということになります。

「みなし労働時間制」を採用することにより事実上特別条項が使えないということは、通常では認められている業務が繁忙な時期の時間外労働も45時間以内に収めなければならないことになるのは、かえってみなし労働時間と実際の労働時間のかい離を招くことになると考えられます。要するに10時間のみなし労働時間を定めておいて実際はそれを超える時間外労働が年間を通じて行われることになると思われるのです。

労働基準監督署でもこの件については課題だととらえているということです。今回の労働基準法改正に裁量労働の改正も含まれていますので、何とか良い方法を検討してもらいたいものだと思います。

連休は今年はかなりゆっくり過ごすことができて充電できました。連休中はとても気持ちが良い日が続いて気分が明るくなりました。また明日からがんばれそうな気がします。

最近花が以前より好きになりました。前はすぐに枯らしてしまったりしていたのですが、手をかけている分自宅のベランダの花も最近元気です。小さな花を摘んできてちょこっと飾るのも楽しいです。以前受講生OBから頂いたシクラメンも3度目の花を見事に咲かせてくれました。また昨年8月の事務所移転のときに頂いた蘭の花も自宅に持ち帰って地道に水やりをしていたところ、ここにきてたくさんの花をつけてくれて感激しています。

              


36協定特別条項 1年の延長時間数

2015-02-08 11:49:02 | 労働時間

先週は渋谷労働基準協会のセミナーで「36協定集中」を講義させて頂きました。

36協定はたった1枚の届出なのですが、そこには労働時間の考え方を始め色々な要素が詰まっておりそれらも含めて3時間お話しできるということで楽しみにしていました。ところが3時間ではとても話し切れないほどネタがあり、後半はかなりかけあしのバタバタになってしまい少し後悔が残ります。

もっと丁寧に皆さんにわかりやすく整理しながら進められたのにと思いますが、お話しなければならない内容はほぼ話せたので良しとしましょう。36協定恐るべしと実感したのでした。最後のご質問でも何人もの方が手をあげられ、また終わってもご質問が列となり受講された方の熱心さが伝わってきました。

その中で36協定の「労働時間延長の限度基準」と「特別条項の延長時間」は特に大事なところで、担当者は悩まれるという部分です。

延長時間は、基準で「1日及び1日を超える一定の期間(以下「一定期間」という。)についての延長することができる時間を定めるものとされており、ここでいう一定期間は「1日を超え3箇月以内の期間及び1年間」としなければならないとされています。要するに、限度時間は「1日」と「原則1カ月(または3カ月)」と「1年」の3つを決めるということになります。

この一定期間(1日を超える一定の期間=1日を超え3箇月以内の期間=だいたいの36協定は1カ月時々3カ月で決めているところもあります。それに1年)には延長時間の限度が基準で定められています。これが「労働時間延長の限度基準」なのですが、1日の限度時間は定められていないため自由に定めることができます。

この一定期間については限度時間いっぱいに決めておくとすると、1カ月45時間と1年360時間となるわけです。

さらにこの限度時間ではとても時間外は収まらないということで、特別条項を設けることができるわけですが、特別条項には限度基準は定められていません。ただ、特別条項は「臨時」である必要があるため、上記1カ月45時間を超えて特別条項によりさらに延長できるのは年の半分までとされています。

特別条項の一般的な時間数は45時間を超え70時間又は80時間としているのが一般的だと思います。しかしこの特別条項で決めた時間数を超えて時間外労働をしてしまうと違法になりますので、ここは慎重に決めることが必要です。

さらに特別条項の1年間についての決め方は自由なのですが、例えば1カ月が70時間の特別延長を決めている場合は、70時間×6か月+45時間×6か月=690時間という考え方にしてます。

これは計算として自動的にそうなるであろうという数字なのですが、この1年の特別延長時間を例えば630時間とすることもできるわけです。その場合特別延長で定めた1カ月の時間数を限度まで使って時間外労働をしているとおさまらないことになるので、年度の最後の方で630時間に収まるように調整する必要が出てきたりすることもあります。1年の特別延長時間の設定により時間外労働の抑制を図る=枠をはめるということもできるわけです。

長時間労働を抑制するということに力を入れている行政サイドから見るとその姿勢は評価されるような気がしますので、検討に値すると思います。

ところでこの1年の特別延長時間を決めておかず1カ月の特別延長時間だけが90時間と決められていた場合はどうなるかということなのですが、90時間×6か月+45時間×6か月=810時間の時間外労働が許されるのではなく、あくまで1年間は360時間という限度基準の時間数までということになります。1年の特別延長時間を決めておかないと特別延長を4回使うとあとは時間外は一切できない(90×4か月=360時間)ということになってしまうわけです。

最近ネットで買い物をすることにしています。雑貨から洋服まで購入しているのですが、イメージやサイズが違っていたというと返品もできてとても便利です。靴はだいたい同じメーカーのものをとっかえひっかえ履いているのでほとんどネットで購入しています。帰宅時は食材を購入するのでいっぱいいっぱいですから、届けてくれるのは本当に助かります。

また正月明けからセールが始まっているのですが、商品数が店頭とは比べ物にならない数でまた結構「エッ」と思うほど安くなっていたりします。セールになってからショートダウンとチェック柄のシャツ、春も着れるショートコートを購入しました。どちらも大好きなブランドですがショートダウンは1万円程度チェック柄のシャツは5000円で購入(たぶん50%より安い)できました。ほんと便利です。難点はあまりにPCに向かい過ぎて肩こりと目が見えにくくなることです。


36協定特別延長時間について

2014-01-13 22:23:25 | 労働時間

36協定を締結する際の時間外労働の限度時間が定められていることはよく知られているところです。小企業についてはいまだ運用が危ない面もありますが、社労士にそのあたりを相談しようという企業は理解をしていただいていると思います。また特別条項付協定により特別延長時間を定めることも一般的です。要するに特別条項を定めた場合は、臨時的なものに限る特別の事情があれば1年のうち半分まで時間外労働の限度時間(例えば1箇月45時間)を超えて時間外労働させることができるとされています。

この特別延長時間の決め方なのですが、これについて限度時間は定められていません。時々顧問先企業よりどの程度まで認められるのかご質問を受けることがあります。ほとんどの企業は特別延長時間として1箇月70時間~80時間を定めていると思います。ただし、絶対に収まらないので収まらず違法になるよりはという理由から、また派遣業などの場合は派遣先で働く労働者がその時間内で収まらないことがあるという派遣先の要望から80時間を超える特別延長時間を決めるところもあります。

昨年12月20日の毎日新聞の記事に以下の判決がありました。このケースの場合は、建設業であるためそもそも36協定の限度時間の適用除外になっています(平成15年厚労告355号5条、平成11.1.29基発44号)が特別延長時間を定める場合の参考にはなると思います。

労働者の残業に関して結ぶ労使間協定が長時間労働を招いたとして、過労自殺した男性(当時24歳)の遺族が会社と国、労働組合を相手に損害賠償を求めていた裁判の判決で、東京地裁(小野洋一裁判長)は20日、会社に安全配慮義務違反があったとして2270万円の支払いを命じた。焦点だった国と労組への請求は棄却した。判決などによると、男性は石油プラント建設「新興プランテック」(横浜市)に勤務。2008年6月に月160時間、7月に210時間を超える残業をし、精神疾患を発症、同年11月に自殺した。同社と労組は国が定める過労死ライン(月80時間)を超える150時間、繁忙期には200時間まで残業を延長できるとする労使協定(通称36協定)を結んでいた。国は36協定の延長の上限を月45時間としているが、建設業務など繁忙期がある業務は除外しており、明確な上限がない。男性の母親(62)は「過労死ラインを超える残業を受け付けるのはおかしい。きちんと見直すべきだ」と話した。新興プ社は「判決を読んでいないのでコメントは差し控える」としている。

この判決の場合、月80時間超の協定を8年以上にわたって国(労基署)が放置したことについて問題があるとしながらも、国が延長時間の上限を規定しない点については事業活動を営む事業者の経済活動を不当に制約する可能性もあるということで、国が延長時間の上限を規定しない点に理解を示すとともに、同様の前提に立つ36協定を締結し、内容の改善を求めなかった労働組合の行為も違法とは認められないと原告の請求を退けた(労働新聞H26.1.13第2952号より一部抜粋)ということです。

月80時間を超える延長時間については一定の理解を示しているといえます。とはいえ恒常的な長時間労働による心身の疲労蓄積事実を認め、会社の安全配慮義務違反を認定しています。やはり月80時間を超える延長時間を定めることはできるだけ避けるべきという参考にもなろうかと思います。

スタッフのタイムシートを毎月給与計算時にチェックしている私自身の感覚からいうと、1箇月50時間程度の残業をしている場合はかなり帰りが遅くなっているだろうなと感じます。時間外労働が限度時間を超えて発生するのであれば業務の効率化を図る余地がないのかを見極め、また増員を常に見極めていくことが必要だと思います。

今週末は溜まっていたこまごました案件やこれから予定されているセミナーのレジュメを作ったりして結構よく働きました。自分自身の長時間労働は気になりませんがスタッフの残業は気になります。それにしても私自身TACの講師をしていた頃ほどは最近は働けなくなりました。日曜日に授業をしていた頃は本当に長時間労働でしたから。


月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率その後

2013-12-22 21:00:00 | 労働時間

先日ふと平成22年6月の改正である月60時間超の時間外労働に対する割増率50%のことが頭によぎりました。平成22年の改正の際に中小企業には適用を猶予したものですが、3年後に検討することになっていたもので、中小企業に適用になることになれば結構な大事になると思います。

調べたところ労働政策審議会の労働条件分科会で議題に上げることになっていました。

その主な議論は、以下議事録を確認してみると載っていますが、今のところ論点1になっているもののそれほど多くの時間が割かれているとは言えないようです。

<中小企業に適用猶予されている月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率について>
○ 中小企業の労働者の労働条件は、大企業に比べると総じて劣悪な状況にあり、また、最低基準を保障する労働基準法が、今はダブルスタンダードになっていることは問題である。月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予措置について早急に検討すべきである。
○ 大企業では改正労働基準法が施行された平成22年以降も、週35時間以上雇用者に占める週60時間以上雇用者の割合は横ばい。割増賃金率の引き上げが長時間労働の抑制効果があるのか、今後議論が必要。

議論の中では労働時間関係資料が扱われています。
これは毎月勤労統計調査」や「労働力調査」等の基礎的な労働時間のデータの資料につき、ごく簡単に取りまとめているものとされています。

以下議論の中からの資料3についてのあくまで意見の抜粋(一部文言を省略)ですが、まだまだ中小企業への適用についてまで行きついていないようです。

平成21年には、前年秋の金融危機の影響で、製造業を中心に所定内・所定外労働時間がともに大幅に減少し、その後はやや上昇してきているという状況。
まず、1ページ「年間総実労働時間の推移」です。労働者1人当たりの平均値は減少傾向で趨勢的に推移しているが、近年では、一般労働者の総実労働時間はおおむね横ばい、パートタイム労働者の総実労働時間はやや下がっているが、その減少幅はそれほど大きなものではないという中で、一方では、その構成比でみた、パートタイム労働者比率が持続的に上昇していることにより、総実労働時間の平均値が右肩下がりになっている傾向にある。

2ページ「週労働時間別雇用者等の推移」です。週の労働時間が60時間以上の雇用者の割合について見ているもの。上の表にあるように、週60時間以上の労働者の比率というのは、かつて平成15、16年ごろの水準と比べますとかなり低下しているが、一方では1割弱という水準にあることも事実で。特に30歳代の男性で週60時間以上の労働時間の方について見ると、これも同様に、以前よりは比率としても人数としても減っているということではあるが、やはり全体の平均よりはかなり高い構成比になっているということは見られると思う。

資料3「労働時間等関係資料」に週ごとの労働時間の雇用者数の分布が出ており、ここに週60時間以上の労働者の数字が10%近くと出ているが、これを30代の男性で見たときに、18%と、2割近くの方が週60時間労働されているという実態が出ている。

 週の労働時間が60時間というのはどのような意味があるのかということを考えてみると、1年365日で、7で割ると52週、それをさらに12で割って1月の数値を出しますと、法定の40時間を超える残業時間は、月の平均値で86時間になると思う。この数値については、一方では、労働省基準局から出されている労災認定の80時間という基準に照らすと、労災認定が強く推定される時間をさらに超えて労働している方が2割もいるという現状が見えてくる。これほどの長時間労働は、今、社会問題となっている過労死の問題であるとか、メンタルヘルス不調といったような健康上の問題を引き起こす原因にもなっているし、一方で、我が国の構造的な問題となっている少子化問題の一因にもなっていることも指摘されているので、ワーク・ライフ・バランスの観点や、過重労働、長時間労働に対する手当てといった労災防止の観点からもぜひ必要だと思われる。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000024580.html

今後来春までにどのような結論が出るのか時々見ておく必要があると思われます。

9月に渋谷支部の女子会で講師としてお迎えしたイメージコンサルタントの神津先生のところに先週お伺いしました。最近年齢を重ね(先生が歳をとってと言わず年齢を重ねと言ってくださいと言っておられましたので)自分のスタイルに迷いが出ていましたのでちょうど良いチャンスと思っていました。自分に合うお化粧や髪形、カラーなど色々なアドバイスを受けましたが、おおむねこれまで購入してきたイメージやカラーのものが一番合っているということで、それほどお金を今後かけずに済みそうです。洋服もアクセサリーも見せて頂くものが今手持ちのものとほぼ同じという結果でした。カラーは、サマーカラーだそうです。意外に自分のことを分かっていたということでしょうか。支部の後輩に「アドバイスを受けるとその後買い物の時にそれをかなり意識してしまいちょっとつらいかもしれません」とか、「支部長がすごいイメージチェンジして出てくるのでは」などと言われていたのですが、がっかりさせそうです。

今年は長年結んでいた髪をバッサリ切り夏はふんわりウェーブなどと言っていましたが「電気ショック」「爆発したか」など賛否両論でした。今はウェーブが取れて落ち着いたので周りもホッとしているのかもしれません。ショートカットよりは今くらいの長さでふわっとさせた髪型が良いそうです。でもあの爆発がなければここに至らなかったと思いますので必要な迷い道だったのでしょうね。


2日にまたがる労働

2013-06-16 13:43:32 | 労働時間

ここ10日ほどは合併会社の新しい就業規則マニュアルをチェックしていました。直勤務(夜間を含む交代制勤務)もあり労働時間の部分でかなり勉強になりました。その中で労働時間が2日にまたがる場合の考え方について発見がありました。

2日にまたがる場合の労働日については以下の通達があります。

「1日」とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうものであるが、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とする。(昭和63.1.1基発1号)

要するに午前0時を超えて働いた場合、暦日の2日分にわけて労働時間として管理をするのではなく、始業時刻の属する日から引き続く1日分の労働とするということです。例えば前日の時間外労働が翌日にかかるということでも引き続く前日分の労働時間ということになります。0時を超えて5時間しか働かせずその日はその後休めるのだからというような理由で、0時から仕切りなおして8時間以内とカウントし、時間外割増を0時以降つけないというような考え方にはなりません。もし2日目の始業時刻以後まで労働した場合は始業時刻までが前日の時間外労働となり、そこまでは時間外割増の対象となります。

これについては、比較的よく理解されており、運用もほぼどの企業でも問題がないところです。

それでは2日目が休日にあたる場合はどのようになるかということですが、その場合は0時以降は休日労働になるため割増は休日割増の率になります。割増率については0時で区切られるわけです。休日には始業時刻の考え方はないため、前日からの時間外労働が翌日の休日にわたった場合は、何時まで働こうとさらに次の日の0時になるまでは休日割増の対象となります。労働日であれば始業時刻まで割増すればよいのですが、その考え方は使われません。

それでは、休日にまたがった労働については「いつの労働日の労働時間と考えるか」ということについてなのですが、これはやはりその労働を開始した始業時刻の属する前日の労働として考えます。0時で区切るというのはあくまで割増率が変わるということに過ぎず、労働日の考え方は翌日が労働日の場合と同じということになります。

確かに上記通達にも「翌日が休日の場合は除く」などの記載がありませんので、納得でした。まだまだ事例にあたらないと理解しているつもりでもあいまいなところがあります。社労士の仕事の面白いところです。

火曜日に社員日帰り研修に横須賀に行きました。今年は独立行政法人海洋開発研究機構に行き深海5000メートルへの科学探査を行う有人潜水調査船「しんかい6500や自律型の深海探査ロボット「深海巡航探査機うらしま」を見学し、その後よこすかバーガーのランチ、さらに軍港めぐりをしました。軍港めぐりはなかなか機会がないと思うのですが、海上自衛隊の潜水艦や護衛艦、原子力空母「ジョージワシントン」も停泊しており、その大きさもさることながら横須賀にたくさんの艦船が停泊していることに驚きました。その後記念艦「三笠」を見学して、あとは横須賀海軍カレーを食べて終わりというところ、残念ながら道に迷いカレーは食べられずじまいとなりましたが、とても充実した1日となりました。なかなか忙しい中でそういう日を作るのは勇気がいりますが、思い切ってよかったと思います。(写真は深海探索ロボットうらしまの説明を聞いているところです)

 


36協定 協定の当事者

2013-05-13 00:01:08 | 労働時間

36協定は何かと論点があるのですが、協定の当事者についても論点になりやすいところです。とにかく最近、過半数代表者の選出手続きは以前より格段にぎびしくなっており、投票、挙手の他に、労働者の話し合いや持ち回り決議などでも構いませんが、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な選出手続きがとられていることが必要とされています。ここ数年ユニオンなどは、36協定の適正な代表者の選出がなされていないというところを交渉のネタにしてくるようですので、各企業気を遣うところではあります。

この民主的な選出ということでは、会社の代表者が特定の労働者を指名するなど使用者の意向によって過半数代表者が選出された場合、その36協定は無効とされています。例えば、社員親睦会の幹事などを自動的に過半数代表者にした場合、その人は36協定を締結するために選出されたわけではありませんので、協定は無効です。この場合は、改めて36協定の締結当事者となることの信任を得ることになります。顧問先企業でも、社員会で36協定の過半数代表者を選ぶ仕組みを取り入れたいということで、以前規程を作ったことがあります。その時も、あくまで36協定の過半数代表者の選出については、規程の中で章立てを分けて、明確に選出手続きを定めて頂きました。

この36協定の労働者側の代表者になるのを拒む人が多くなかなか決まらないということもあるようですが、顧問先でそのようなことで悩まれてご質問があったことはありません。その場合の妙案というのは今のところないのですが、労働者の過半数で組織した労働組合があれば過半数代表者を選ぶのではなく、過半数組織労働組合と使用者で36協定を締結すればよいので、その点は労働組合があると気を遣うこともありません。

労働組合と使用者が書面で協定するものについては「労働協約」という名称になりますが、過半数組織労働組合であればその組合と締結した「労働協約」は、36協定としての「労使協定」の役割も果たすことになります。労働協約であればその労働組合の組合員のみに原則適用になるわけですが、労使協定は全社員に適用になります。従って労使協定の役割を果たす労働協約は全社員に適用になることになります。

ところでいわゆる「特別条項」を定めておけば、突発的・一時的な臨時の場合には時間外労働の限度基準を超える時間外労働が認められるということになりますが、その場合には「手続き」を踏む必要があります。その手続きが「協議」である場合には、協定の当事者と協議するということで定めることが多いのだと思います。そのように定めた場合は、その協定の当事者が過半数労働組合であれば、その協定で定められた通り過半数労働組合と協議しなければなりません。労働組合員だけは過半数労働組合と協議し、組合員以外は過半数代表者を選んで協議する、ということはできないことになります。

ちなみにOURSのモデル36協定では、「手続き」は「通知」にしています。「協議」であると特別条項を使う際になかなか協議できないことが多いこと、「通知」であればきちんと書面を残すことができるためです。

9日に行ったOURSセミナーにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。不覚にも風邪をひき声が後半に今にもでなくなりそうで、みなさんに要らぬ気疲れをさせてしまいました。何とか無事に終えることができましたのも、とても真剣に受講していただいたおかげと感謝いたします。講師時代もずいぶん受講生にご心配をおかけしたのですが、その時と同様皆さんから頂いたアンケートがやさしい言葉であふれていて泣けました。あれからまだあまり本調子とまではいかないですが、今日など本当に気持ちの良い季節になりましたね。なかなか思い切って衣替えができなかったのですが、やっと明日から切り替えられそうです。日中は窓を開けて風を入れて、気持ちの良い週末を過ごせましたのできっと元気にまた週明け仕事ができると思います。


専門型裁量労働制の場合の時間外労働

2012-07-22 16:44:15 | 労働時間

専門業務型裁量労働制を採用している場合、時間外労働は発生するのかということですが答えはもちろんイエスです。専門業務型裁量労働制は1日の労働時間を「〇時間労働したものとみなす」というみなし労働時間制であり、何時間労働したものとみなすかは労使協定により労使で定めることになっています。

例えばみなす時間を1日8時間と決めれば、たとえその日に2時間しか働かなくても6時間働いても8時間働いたことになります。その場合は当然1日についての時間外労働が発生することはないわけです。

また、みなす時間を1日9時間とみなすこともあるわけで、その場合は1日の法定労働時間の8時間を超える1時間の毎日時間外労働が発生するため、その分の割増賃金を支払わなければならないことになります。例えば所定労働日数が20日であれば1時間×20日=20時間の割増賃金を支払うことになります。

しかし8時間とみなし労働時間を定めた場合であっても時間外労働は発生することがあります。土曜日と日曜日が休みである週休2日制の場合、法定休日を日曜日と定めたときは土曜日は所定休日でしかなく、所定休日に労働した時間数は時間外労働の時間数に含まれます。要するに平日に毎日働き、土曜日に休日出勤をして日曜日に休んだ時は、平日だけで8時間×5=40時間となっていますので(たとえ実際は毎日5時間しか働いていなくても8時間とみなしますから必ず40時間になります)、その場合の土曜日の出勤時間は、週法定労働時間の40時間を超えて働いた分になり、その分が時間外労働になります。またその場合土曜日に2時間しか働かなくてもみなしの適用を受けて8時間労働したものとみなします。結局8時間の時間外労働がその週において発生することになります。

その状況があるのであれば、8時間のみなしの場合であっても36協定の中で適用対象者の人数を書くとき、専門業務型裁量労働制の対象者を除いて書いてしまってはいけないということになります。平成22年の労基法の改正以前は所定休日について休日労働に含めて考えている企業がほとんどでした。36協定もそのような書き方でもあまりうるさく言われていなかったと思います。割増率が休日の方が高かったのでそれほど大きな問題はなかったのですが、割増率が大企業は時間外労働が60時間を超えたら5割と改正されて、また長時間労働が非常に大きな問題になったためそのあたりを厳密にとらえる必要が出てきました。

現状で「8時間みなし」としていても「所定休日に出勤するような場合」には、36協定の時間外労働の対象者の人数に裁量労働時間制の人を含めていないと是正勧告になります。厳しいですね。

ところで所定休日に出勤した場合でもだいたいは2,3時間しか働かないというときは「みなし労働時間制の適用を月曜日から金曜日に限る」として、所定休日の出勤については通常の時間管理とすると就業規則等に規定することはできないわけではないようです(それはできないという通達等がないため)。その場合は所定休日に実際に働いた時間数に応じた割増賃金を支払うことになります。

ここ2、3日は涼しいですが先週は「夏!」になりました。暑さに負けず張り切っていきましょう。


災害等臨時の必要による時間外・休日労働について

2011-03-20 21:43:51 | 労働時間

東日本大震災の被災を受けた方たちの様子を見るにつけ、この非常に厳しい状況の中でも穏やかさを感じる程の精神的な強さに尊敬の念と同じ日本人として誇らしささえ覚えます。是非1日も早くこれまでの生活に戻れるように願ってやみません。

また連日原発の事故の状況に落ち着かない毎日です。ここでとにかく被爆者を出さず、何とか事態を収束できればと願いながらテレビをずっと見ている状態です。今回の地震による津波は、万里の長城と言われていた宮古市田老地区にあった高さ10メートル長さ500メートル超の堤防もすべて破壊する想定外のことが起こったとのこと。それでも原発にはコントロールする電気系統がすべて破壊されるという想定外は許されないのかもしれませんが、東京電力の技術力を信じながら祈るような気持ちで見守っています。現場をはじめ関係者の方々になんとか頑張って頂きたいと思います。

東京消防庁の方が昨日インタビューされて今回の覚悟の任務について語っておられましたが、今日はお家で家族と休んでおられるとのこと。それに引き換え東京電力のインタビューにはずっと同じ方が出てこられています。現場の方も寝ることもなく復旧に力を尽くしておられるのだと思いますが、非常に長時間労働になっているだろうと想像できます。また被災にあわれた方達も、一日も早い復興に寝る間も惜しんで働いておられるのだと思います。また避難された方を受け入れる側の方達も同じかもしれません。

このような際における労働時間は36協定の特別条項で定めた延長時間の限度などとはいっておられないのは当然です。そのような場合どう対応するかというと、労基法33条1項の「災害等臨時の必要がある場合の時間外・休日労働によるもの」によることになります。

時間外・休日労働は、36協定を締結することにより行うことが通常ですが、災害等による臨時の必要がある場合についても行うことができます。この場合は36協定による場合と異なり、労働時間延長の限度基準は適用されません。法36条2項の労働時間の延長の限度については、『36協定で定める労働時間の延長における限度を厚生労働大臣は定める』としていますので、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働については平成15年厚労告355号の限度基準(例えば1箇月45時間など)の適用はないことになります。

ただし、災害等臨時の必要がある場合の時間外・休日労働は、事前許可又は事態急迫のために行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受ける暇がない場合においては事後に遅滞なく届け出なければならないとされています。 またその場合時間外、休日労働、深夜労働についての割増賃金については、通常と同様に支払わなければならないことになっています。


1分単位の労働時間

2011-02-27 22:42:49 | 労働時間

最近未払い残業の関係で、労働時間のカウントについて少しヒステリックな状況にあるような気がしてなりません。S63.3.14基発第150号の通達では、次のような端数処理は労働基準法違反ではないとしています。

1箇月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数が生じた場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。

上記のポイントは「1箇月」と言っているところであり、1箇月単位の端数処理は認めるということ=1日単位での端数処理はしてはいけないということになるわけです。確かに1日単位で30分を切り上げるというのは合計した場合だいぶ誤差が出てくるとは思います。しかし最近のように1分の時間外を積み上げて何時間になるかと計算することについては、疑問を禁じえません(顧問先企業には1日単位の四捨五入はしないでくださいと言ってはいるものの・・・という感じです)。時間外の1分を議論するのであれば、労働時間中に1分も無駄はないのか?というところも問われてくるのではないでしょうか?

企業のコンプライアンスは大切だと思います。しかし、ものごとには「ほど」というものがあるのではないかとも思います。このままでは日本は総ヒステリーでなんだか変な方向に向かってしまいそうな気がして不安になります。

なんだか春めいてきましたね。もう寒い2月も終わりです(冬は寒いので苦手です)。今年は今のところ花粉症にもならず、今日などいよいよ春だなあと嬉しくなってきました。だんだん年齢とともにすべてに鈍くなって行くような気がするので、花粉症も感じなくなってきているのかなと思います。今日は満開の梅も見かけましたし、これからの季節が楽しみです。


時間単位年休 付与後の変更

2010-10-24 23:08:25 | 労働時間
 先日の金曜日はOURSセミナーを午後の部と夜の部の2部制で開催しました。内容は「労働時間・休憩・休日」ということで、労働時間として取り扱うか否かの具体例、管理監督者の判断基準は、年次有給休暇の基準日制など、これまで顧問先企業からご相談を受けた事例を織り込みながら、時間も比較的ゆったり取れたため、かなり深いところまで説明できたような気がします。
 総合本科という社労士試験の初学者向けのクラスを教えている時にじっくり1つ1つの説明していた時を思い出しました。ご参加頂き熱心に受講して頂いた皆様には感謝です。今回から講義をそのまま収録をしてみましたので、有料ではありますが本とレジュメに講義の収録CDをつけてお分けすることができます。レジュメの説明の際は指示の部分がはっきりしないため分かりにくい部分があるかもしれませんが、話の中に実際の事例等が多く入っていますので、書籍を読む時に少しはお役にたつかもしれません。
人研のHPでご確認ください(数日後にはアップされると思います)。

 労基法の改正は各企業対応を終えて4月以降すっかり静かになってしまいましたが、私の中では時間単位年休の繰越について十分説明できるまでに至っていないような気がして気になっていました。その部分をセミナーの最後の方に入れてみました。ただ時間単位年休はもう一つ、途中で所定労働日数が変更になった場合の扱いが気になっています。
 
 付与後年度の途中で所定労働日数が変更になっても、付与日数を増加させることはないという通達が以前からありました。所定労働日数の少ないパートの場合の年休の付与はその日数に応じて年休が付与され、労働日数が変更になっても増減させなくても良いということだったわけです。しかし時間単位年休の時間については、年度の途中に所定労働時間の変更があった場合、付与時間数も変更することになっています。

 これまで8時間の所定労働時間が4時間になった場合で、年次有給休暇が3日と3時間残っているなら、3日と3/8時間残っていることとして3日と2時間に変更になるというものです。なぜ「2時間」になるかというと、4時間×3/8=1.5時間を切り上げて2.0時間ということになるのです。要するに時間単位の部分を所定労働時間数に応じて按分した時間数にするということなのです(Q&Aより)。

 確かにパートタイマーの年休を計算する場合は、時給の変更があれば変更後の時給で計算するのでおかしくないとは言えなくはないのですが、一回付与してしまえば権利であるため変更はできないという付与日数の考え方から行くと何となく違和感を持ってしまうのです。

松子デラックスという人のことを先週事務所で聞いたのですが(かなり遅れているようでスミマセン)、今日美容院にいって初めて雑誌で見ることができました。そこで悩みの回答をしていたのですが、なかなかいいことを言う人だなあと感心してしまいました。仕事のことで書いてあったのは、「小さいことを丁寧に辛抱強くやれる人がそれが積み重なって仕事のできる人と言われるようになる」とあり、そうかもしれないなあと妙に感じ入ってしまいました。