事業場外労働のみなし労働時間制については、今後の方向性が気になるところです。というのも事業場外労働のみなし労働時間制の対象となる業務は「事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務」です。従って、昭和63年の通達では、「無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合」「事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合」はみなし労働時間制の適用はできないとされています。
ただコロナ禍に状況は変わったといえます。「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(厚生労働省)」では、テレワークの場合、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務であるためには、①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと、という2要件を満たしていれば事業場外労働のみなし労働時間制は認められるということになりました。それまでは始業・終業時刻を会社に報告することでも事業場外労働のみなし労働時間制は適用できないと考えていたものが、始業・終業時刻を報告したとしても、メールやチャットで常時指示を受け、常時通信可能な状態にしておくこととされていなければ、事業場外労働のみなし労働時間制適用できるとされました。
スマホを持ち歩き、常に会社からの指示を受けることが可能になった現状で、外出先であっても始業を・終業時刻を記録できるようになり、今後の事業場外労働のみなし労働時間制は縮小かと考えていたところに、テレワークガイドラインで従来の厳密な定義が外れたため今後事業場外労働はどこに行くのだろうかと考えていたうえに、令和6年4月に最高裁の判決が出て「日報による報告のみを重視して『算定しがたいとき』にはあたらないという判断がなされて事業場外労働についての今後の方向性が分からなくなりました。今後事業場外労働はむしろ拡大の方向になるのかもしれないと思っています。
ところで事業場外労働のみなし労働時間は、原則として事業場内で労働した労働時間も含めて所定労働時間労働したものとみなすことになりますが、通常所定労働時間を超えて労働することが必要として労使協定でみなし労働時間を定めた場合、その定められた時間はあくまで事業場外労働で従事した業務についての時間ということで、事業場内での労働時間をみなし労働時間に加える必要があるとされています(昭和63.3.14基発150号)。
オリンピックで寝不足の毎日ですが、勇気をもらってもいます。それにしても暑いですね。