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メキシコの100曲

2023-10-30 19:32:02 | 世界の音楽
メキシコという国は、地方地方によってかなりはっきりと異なった音楽を持っている。スペイン語で「北」をノルテと言うことからメキシコ北部の音楽をムシカ・ノルテーニャと呼び、この系統の音楽はメキシコ国内だけでなく、米国テキサス州などでも盛んに行われている。楽器でいえばアコーディオンとバホ・セスト、音楽でいえばコリード(英バラッドに当る物語歌)とポルカが特徴になっている。

メキシコの歌でよく知られているものに「ラ・クカラーチャ」「シェリート・リンド」「ラ・マラゲーニャ」「ラ・バンバ」などあるが、マラゲーニャもバンバもメキシコ湾岸、つまり東側で、マラゲーニャの方が北寄り、バンバが南寄り、それぞれ別の文化圏に属している。首都メキシコ・シティの北方、ウァステカ地方の民謡をソン・ウァステーコといい、ラ・マラゲーニャはその代表といえる。8分の6拍子のニュアンスに富んだリズムに乗せて時に裏声を使いながら歌う。ウァステカ地方の南に隣接するベラクルース州の音楽をソン・ハローチョと呼び、ラ・バンバが代表である。この曲のような2拍子も、8分の6に寄ったものも、弾むような躍動的なビートが魅力となっている。

太平洋側の、グァテマーラと国境を接するチアバス州、そしてメキシコの陸地が細くなっているテウアンテペック地峡のあたりは、楽器ではマリンバ、音楽的にはワルツが盛んだ。その北西、ハリスコ州のグァダラハラは歴史的な文化都市で、特に有名なのが独特の楽器の組合せによりユニークなサウンドを持つマリアッチである。トランペット+ヴァイオリン+ギターを中心とし、このトランペットを1960年代にアメリカ人がポピュラー音楽に取り入れてアメリアッチ・サウンドとして流行らせた。

こうした民俗音楽が豊かすぎたせいかは分らないが、メキシコでは独自の都市ポピュラー音楽の発達は意外に遅れた。1920年代後半、辺境の筈のユカタン半島からこの国の最初のポップスターと呼べそうなグティ・カルデナスが現れ、彼には作曲の才能もあり、代表曲Nuncaなどにはユカタン半島がキューバの影響を受けやすかったことが表れている。グティは26歳の若さで亡くなり、メキシコ音楽の主役はホルヘ・ネグレーテやペドロ・バルガスの世代に移る。キューバから伝わったボレーロがポピュラー音楽の王座を占め続けるが、ボレーロ中心にメロディックなバラード調を抑制されたソフトな声で歌うバルガスと対照的に、ネグレーテはマリアッチの伴奏で、艶のある声で堂々歌い上げるカンシォーン・ランチェーラの様式を確立した。

バルガスのレパートリーが都市ポップス中心だったのに対し、ネグレーテは民俗音楽に基づく郷土色の濃い歌を好み、カンシォーン・ランチェーラは日本の演歌とも共通する、地方出身の労働者を支持層として発展したとみることができよう。この傾向を受け継いだのがペドロ・インファンテ、ホァン・メンドーサ、ハビエール・ソリースらで、より都会的なボレーロについてはロス・トレス・ディアマンテスの洗練されたコーラスが成功して以来トリオで演奏されることが多い。60年代前半の日本では、今では想像がつかないほどそれらメキシコの音楽が数多く紹介され、ラテン音楽といえばメキシコの歌ものを指すような状況だった。 ─(中村とうよう『なんだかんだでルンバにマンボ(1992)』の記述を抜粋)



1) Alcalá: Dios nunca muere (1850s-60s)
2) Trío González / Cielito lindo (1919, composed 1882)
3) Ponce: Estrellita (1912)
4) Guty Cárdenas / Nunca (1927)
5) Pedro Vargas / Granada (1932)
6) Mariachi Vargas de Tecalitlán / El tren (1937)
7) Revueltas: Sensemayá (1938)
8) Pedro Vargas con la Orq. Havana-Riverside / Perfidia (1939)
9) Agustín Lara / Solamente una vez (1941)
10) Moncayo: Huapango (1941)
11) Jorge Negrete / Ay, Jalisco no te rajes (1941)
12) Agustín Lara / Piensa en mí (1943)
13) Pedro Infante / Las mañanitas (1950)
14) Trío Aguilillas / El cascabel: Sones of Veracruz (1950)
15) Lola Beltrán / Cucurrucucú paloma (1954)
これは女性ボーカルだが、元々は女に去られた男が夜も眠れず酒を飲んでばかりで憔悴して死んでしまい、その魂が一羽のハトに生まれ変ってククルーククーと啼きながら女の帰りを待つという悲歌。伝統的に男が捨てられて死んだりボロボロになる歌が好まれるという。

16) Pedro Infante / Cien años (1954)
17) Dean Martin / Sway (1954)
1953年に書かれた原曲¿Quién será?はペドロ・インファンテらにより歌われ中南米全域でヒットしたが、米作詞家ノーマン・ギンベルは憂鬱な男のスペイン語詞を「ダンスでSWAYさせて(揺さぶって)」という男性賛美の英詞に改作、ディーン・マーティンが歌って大ヒットさせた。

18) Tony Camargo / El año Viejo (1955)
19) Trío Los Panchos / Bésame mucho (1956)
ラテン音楽を代表する有名曲の一つ。日本ではトリオ・ロス・パンチョスで最も知られるが、作曲されたのは1941年のことで、43年にはアメリカでもヒット。日本語版は敗戦5年後の50年に黒木曜子が歌いヒット。ビートルズがデッカ(不合格)とEMIのオーディションで演奏したのも有名。

20) Miguel Aceves Mejía / La malagueña (1957)
21) Cri-Cri / El ratón vaquero (1957)
22) Los Tres Caballeros / La barca (1957)
23) Antonio Aguilar / Yoe l aventuero (1958)
24) Conjunto Tierra Blanca / Veracrúz (1958)
25) Amalia Mendoza / Échame a mí la culpa (1958)
26) Cuco Sánchez / La cama de piedra (1958)



27) Los Tres Diamantes / La gloria eres tú (1958)
ロス・パンチョスが米国でスタートし、米国の放送を通じて名を売ってきたのに対し、ディアマンテスは初めからメキシコ同胞がお客さんである。彼らはメキシコで人気を得、その後に人気が外国にも及んで行った。反対に、パンチョスに対するメキシコ人の人気は、外国で成功した同胞に対する賞賛であるに違いない。レパートリーについていえば、パンチョスは米国人にラテン的なものを紹介するのが商売だから当然米国やヨーロッパの曲は歌わない。ディアマンテスは、メキシコ人のためにこそ、メキシコ以外の国から来た曲を歌う。そのかわり、それらを完全に消化し、ディアマンテス風に作りかえ、歌詞も全部スペイン 語にして歌う。(中村とうよう)

28) Esquivel & His Orchestra / Boulevard of Broken Dreams (1959)
29) Trío Los Panchos / Siboney (1960)
30) Chavela Vargas / La llorona (1961)
31) Mariachi Vargas de Tecalitlán / La bikina (1964)
32) Toña la Negra / Cenizas (1964)
33) Javier Solís / Entrega total (1964)
34) Javier Solís / Sombras (1965)
35) Armando Manzanero / Adoro (1967)
36) José José / El triste (1970)
37) Los Solitarios / Mi amor es para ti (1970)
38) José Alfredo Jiménez / El rey (1971)
39) Angélica María / ¿A dónde va nuestro amor? (1971)
40) Guadalupe Trigo / Mi ciudad (1971)
41) Vicente Fernández / Volver volver (1972)
42) Dug Dug's / Smog (1973)
43) Amparo Ochoa / El barzón (1975)
44) La Revolución de Emiliano Zapata / Como te extraño (1976)
45) Gabino Palomares / La maldición de Malinche (1978)
スペイン語で征服者を意味するコンキスタドールという語、中南米では主に16世紀初めに南北アメリカを征服したスペイン人を指して用いる。その代表格がエルナーン・コルテスで、彼はまず1504年にイスパニオラ島へ、11年にディエゴ・ベラスケスと共にキューバ島征服作戦に参加。やがてメキシコ沿岸地域遠征隊の隊長となり、19年2月にスペイン人・先住民・アフリカ人からなる約600人の部下を率いてユカタン半島に向かい、タバスコ州の海岸でマヤ族と闘って勝利した。そのとき贈られた20人の女奴隷の1人がマリンチェで、彼女はアステカの言葉を話せたことからコルテスに重宝がられ、通訳として働くだけでなくコルテスの愛人となり子どもを残したことでも知られた女性である。ガビーノ・パロマレスはこの曲をコリード(物語歌)風に作り、侵略者に征服される前段に続き「そして今や時代は20世紀/いまだ金色の髪をもつ人間はやってくる/私たちは彼らを招き入れアミーゴと呼ぶ/それなのに山を越えてたどり着く歩き疲れたインディオには/知らぬ顔をして辱める/おおマリンチェの呪い/時代の病/いつになればこの土地から消えてくれるのだ/いつになればおまえはこの土地の人びとを解放してくれるのだ」と歌う。(竹村淳)

46) Chac Mool / Nadie en especial (1980)
47) José María Napoleón / Eres (1980)
48) Size / Tonight (1980)
49) Yuri / Maldita primavera (1982)
50) Rodrigo González / No tengo tiempo (de cambiar mi vida) (1984)



51) Daniela Romo / Yo no te pido la luna (1984)
52) El Tri / Triste canción (1984)
53) Pandora / Cómo te va mi amor (1985)
54) Los Bukis / Tu cárcel (1987)
55) Ana Gabriel / Simplemente amigos (1988)
56) Timbiriche / Tú y Yo Somos uno Mismo (1988)
57) Bronco / Que no quede huella (1989)
58) Caifanes / La célula que explota (1990)
私の最も好きなメキシコのグループ、カイファーニス。1987年にメキシコシティで結成された5人組で、プログレ、ポストパンク、ラテン・パーカッションなどのハイブリッドされた陰影と深みのある作風。エイドリアン・ブリューがプロデュースした92年のアルバムEL SILENCIOはRock en Español(スペイン語ロック)運動の最も影響力ある作品として中南米全域で成功するも95年に解散。

59) Los Amantes de Lola / Beber de tu sangre (1991)
60) Cuca / El son del dolor (1991)
61) Lucero / Electricidad (1991)
62) La Maldita Vecindad y los Hijos del Quinto Patio / Kumbala (1991)
63) Caifanes / Nubes (1992)
64) Maná / Vivir sin aire (1992)
65) Santa Sabina / Azul casi morado (1992)
66) Gloria Trevi / Con los ojos cerrados (1992)
67) Tijuana No! / Pobre de ti (1993)
68) Los Tigres del Norte / Golpes en el corazón (1995)
69) Los Ángeles Azules / Cómo te voy a olvidar (1996)
70) Fey / Azúcar amargo (1996)
71) Fobia / Hipnotízame (1996)
72) Kabah / La calle de las sirenas (1996)
73) Molotov / Gimme tha Power (1997)
74) Onda Vaselina / Te quiero tanto, tanto (1997)
75) Juan Gabriel / Así fue (en vivo) (1998)
76) Panteón Rococó / La dósis perfecta (1999)
77) Aleks Syntek / Sexo, pudor y lágrimas (1999)



78) Zurdok / Abre los ojos (1999)
79) Cabezas de Cera / Encantador de serpientes (2000)
80) OV7 / Shabadabada (2000)
81) Elefante / Así es la vida (2001)
82) Paquita la del Barrio / Rata de dos patas (2001)
83) Celso Piña / Aunque no sea contigo (With Quem, Café Tacvba) (2001)
84) Thalía / No me enseñaste (2002)
85) Café Tacvba / Eres (2003)
86) San Pascualito Rey / Nos tragamos (2003)
87) LU / Por besarte (2004)
88) Porter / Espiral (2004)
89) Belanova / Rosa pastel (2005)
90) Mœnia / Ni tú ni Nadie (2005)



91) Rodrigo y Gabriela / Tamacun (2006)
92) Paulina Rubio / Ni una sola palabra (2006)
93) Julieta Venegas / Me voy (2006)
94) Zoé / Nada (2008)
ゾーエは90年代末から現在まで大きな人気を誇る5人グループ。オルタナティブ/サイケデリックロックの系統ながらネオアコと見なせる重要曲もあり作風の幅が広い。フロントマンのレオン・ラレギはソロ活動も。

95) Helio Seahorse! / Bestia (2009)
96) Los Daniels / Quisiera saber (feat. Natalia Lafourcade) (2010)
add) Enjambre / Visita (2010)
97) Julión Álvarez y su Norteño Banda / Te hubieras ido antes (2014)
98) Natalia Lafourcade / Hasta la raíz (2015)
99) Carla Morrison / Un beso (2015)
100) Silvana Estrada / Sabré olvidar (2018)

※番外
民謡 La cucaracha
Jesús González Rubio: Jarabe tapatío (19c)
Ritchie Valens / La Bamba (1958)





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