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恍惚と不安と中二病

2018-09-27 20:55:48 | Bibliomania
私はいつもYouTubeで不法に聞いているのだが、6月にOAされた有吉弘行さんのラジオ番組で、芸人から占い師に転身した島田秀平という人がゲストに呼ばれ、オカルト嫌いの有吉さんからグウの音も出ないほどやり込められたのだが、島田氏は元々有吉さんを尊敬しているので、そのやり込められようにも味わいのあるたいへん面白い回であった。

オカルトに関し、この回に限らない有吉さんの言い分としては、霊障が~とかいうやつは空襲や原爆でたくさん人が死んだ街とか障りがあり過ぎて見え過ぎて歩けないだろwっていうのと、占星術が頼る「星の動き」なんて偉い天文学者でも分らないのにどうしてお前らみたいなもんが分るんだwっていうのがありますね。

同感である。先日ネットフリックスの『世界の"今"をダイジェスト』という報道シリーズに「地球外生命体」という回を見つけ、見てみたのだが、18分という短さなので、とおりいっぺんの、何ら得るところのないものであった。

NC = N*・⨍P・nHZ・⨍L・⨍I・⨍S

ウェブでは数学記号をうまく表記できないのでアレですが、そも私は高校の数学で落ちこぼれましたが、これはドレイクの方程式と呼ばれ、N*は銀河系にある恒星の数を表し、以下右へいくほど惑星を持つかとか、その惑星に水があるかとか条件が列挙され、右端は「知的生命体に進化しているか」。もっともらしい数式だが、これらは予測・推測に過ぎず、しかも右へいくほど不確かになる。地球にしても人類が文明を築いた期間はほんのわずかだ。途方もなく広く長時間の宇宙で、ほかの知的生命体と交信できる可能性は限りなくゼロに近い。

これまで電波やガスなど、ほかの惑星で生命が繁栄したり文明が築かれたという痕跡は一つも発見されていない。80年代にTVシリーズが作られたカール・セーガン博士の『COSMOS』も、時空の途方もない大きさから、未知との遭遇について悲観的な見方を示した。それだけでなくセーガンは占星術についても厳しく批判している。COSMOSから40年近く経っているのに、ネットフリックスの番組は「実はもう銀河系を支配していて、地球人は幼稚すぎて声をかけるに値しないと思われているのかも」などと根拠ゼロなことを科学者に言わせていて、ひどいなあと—




『意識はいつ生まれるのか』の本では、おびただしい差異と統合こそ意識の正体であるとし、「もし統合される情報に熱があったら、視床・皮質系の温度は、太陽の中心と同じくらいに上昇することだろう。統合情報が仮に光だったら、どんな星よりもまばゆい光を放ったことだろう」とする。いっぽう『世の中ががらりと変わって見える物理の本』では、素粒子レベルのミクロの世界で、相互的な関係性が変化してゆく(多くは熱の移動)ことが時間の正体ではないか、との見解をとる。いっさい変化がなくなれば時間は止まる。整理統合できなくなったとき意識は終る。われわれの脳内では日々、天文学的な営みが行われている。

科学でこれを再現することは不可能であろう。同じく、もし時間旅行だのワープ航法だの、数学的には可能だとなったとしても、状態を確定することさえ難しい素粒子レベルで工学的な厳密さを必要とするから、やはり実現は不可能でしょう。原子炉やアポロ計画とは次元が違う。夢を見るのは勝手だが、われわれは地球にへばりついて生きるしかない。

SF小説・映画で謳っているようなことは、実質的には占星術と大差ないことなのかも分らない。ということは、そうした夢を見せる側には、もっと良くない含みもあるのではないだろうか。たとえば上記の「銀河系を支配」などという言葉は、「地球外生命体」ではなく、人間の欲望を投影した手前味噌な「宇宙人」を作り上げてしまっているといえるだろう。

だいたいラムちゃんでもE.T.でもどうしてそんなに人間と似ていて人間と同じように考えるんだい。人間が地球の生きものの中で自分たちは特別だと思い上がって、自分に似せた偶像を作って崇めているみたいだ。ウルトラ怪獣やシンゴジラはなぜ、よりによって日本を、東京を狙うのか。明治維新以来の日本人の屈託の表れだ。太宰治の引用で有名になった「恍惚と不安」は、もともと19世紀の仏詩人ヴェルレーヌが獄中でカトリック改宗して「神に選ばれた」心の昂りを表しているとのことらしい。収められた詩集には「最後の審判」なる言葉も。有吉さんはヒッチハイク体験から、お腹が減るのは本当に苦しい、二度と嫌だと。大戦後期、餓死・戦病死へと追いやられたたくさんの日本兵にとって、「靖国神社で会える」ことは心の慰めになっただろうか—

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