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未必の兵器──731部隊おぼえ書き・エピローグ

2024-08-24 14:44:34 | Bibliomania
■山田朗(明治大学教授) / 日本の秘密戦と731部隊──その記憶を発掘し、継承する意味 (抄録)

戦争には目に見える部分と目に見えない部分という2つの側面がある。目に見えない部分を「秘密戦」という。731部隊は何のために編成され、何をやったのかを考える。狭義の秘密戦には防諜・諜報・謀略・ 宣伝(戦時プロパガンダ)などがある。もう少し広げて広義の秘密戦ということになると化学戦・生物戦なども考えられる。戦間期1925年ジュネーヴ議定書が制定され、化学兵器・生物兵器の先制使用が禁じられた。しかし生産・備蓄はOKであった。サンプルを持っていれば何が使われたか分るという名目。

戦場では給水と防疫が死活的に重要。衛生状態が悪く、悪い水によって感染症が発生しやすいことで、日清戦争では戦闘による戦死より病死者の数が上回り、有名な「征露丸」が日露戦争時に発明される。石井四郎は三等軍正(大佐級)として1928年から30年にかけヨーロッパに4たび出張、そこで細菌戦の有効性・秘匿性・経済性を察知し、「細菌戦は自然発生と区別がつかない、安上がりだ」と陸軍上層部に掛け合う。感染症を防ぐことが「防疫給水」の表の任務であるなら、裏の任務と呼べるのが生物兵器・化学兵器の開発であった。

東京新宿の陸軍科学研究所で毒ガスの開発が行われ、瀬戸内海の大久野島で実際の製造が行われた。労働者が毒ガスの被害に遭い、今はここに大久野島毒ガス資料館がある。731部隊は関東軍防疫給水部としてハルビン郊外の平房に施設を建造したが、満洲国の建国により、内地の日本人の目に触れない場所で研究開発を行うことが可能になったのである。これは同時に非合法な人体実験を行うにあたっても好都合であった。満洲国で「暫行懲治盗匪法」という法律が施行され、これは抗日分子をその場で処分してよいというもので、憲兵隊が「抗日」を捕えて死刑を宣言し、この「死刑囚」を731部隊の実験材料として供給することが可能になる。3000人ともいわれる「マルタ」と呼ばれた犠牲者。

細菌兵器を最初に実戦使用したのはノモンハン事件でソ連軍に対して。しかし詳細は分っていない。やがて牡丹江643部隊、ハイラル543部隊、林口162部隊、孫呉673部隊といった支部が設置され、ペスト・チフス・コレラ・流行性出血熱・炭疽菌を用いて研究開発が進められる。そして大量散布方式の実用化に至る。ペストに感染したネズミの血をノミに吸わせ、このペストノミを陶器爆弾に搭載して飛行機から投下する。陶器爆弾は投下するとそこで割れてノミが生きたまま拡散する。1940年には寧波・衢州で、41年には常徳で、42年には金華で実施するも、この金華での作戦は日本軍にも感染症が増え失敗に終る。

ソ連参戦後、彼らは証拠隠滅に走る。施設を爆破しマルタを殺害。部隊員は日本に逃げ帰り、ごく少数がソ連に抑留され、後に裁判にかけられる。戦後になってアメリカ軍が731部隊員の尋問を始める。1945年9月からサンダースが内藤艮一(後に日本ブラッドバンク⇒ミドリ十字を創業)に尋問、46年1月か らトンプソンが石井四郎に尋問。ところが46年末になってソ連が石井の身柄引き渡しを米軍に求め、翌47年4月に石井四郎は免責を条件に人体実験データを米軍に提供すると申し出る。これを受けて米軍が調査・作成したヒル報告が米本国に届き、生物戦データは戦犯訴追より重要であるとして米極東委員会の承認が下りる。アジアの民衆を下に見る風潮、人権軽視の研究開発、エリート層の保身・無責任、臭いものに蓋をしたまま経済大国となった日本はいまそのツケを失われた30年あるいはそれ以上──という形で味わっているのだろうか。



ことし正月、羽田空港で旅客機と海保機が衝突、間一髪旅客機の乗員乗客が避難した直後に炎上し無残な姿になる(海保機は機長を除く5人が死亡)事故があり、劇的ということで海外でも大きく報じられ、私もユーチューブでそれらの海外ニュースを見たのだがこれがいけなかった。それから「興味なし」「チャンネルをおすすめに表示しない」を連打しても手を変え品を変え航空関連の映像サムネイルが表示される。私はユーチューブに課金しているのだが少なくともグーグルのユーチューブ用AIは顧客ニーズに応えるつもりはなく、グーグルの利益を最大化するよう興味本位ですぐ飛びついてすぐ忘れるユーザー量産するのに最適化されているのだろう。

ツイッター(X)、あるいは他のさまざまなソーシャルメディアにせよ同じ利益追求至上の動機がはたらいていると思う。音楽依存が強い私にとって、2017年から利用し始めたRate Your Music(古今東西の音楽を採点、レビュー、テーマによるリスト化など)、さらには2015年から放置していたlast.fm(音楽の再生を逐一記録)を2022年3月に復活させ、過去の記録を編集したり将来の再生を自動訂正してアルバムをまとめたりできる有料会員になったことによって、ゲームを楽しむように音楽一辺倒に導かれる不健康な日々が続き、結局は当ブログの年内終了をはじめ考え方や生活全般まであらためて点検せざるを得ないこの夏に至ったのである。



近代人は伝統的権威から解放されて「個人」となったが、しかし同時に、かれは孤独な無力なものになり、自分自身や他人から引き離された、外在的な目的の道具となったということ、さらにこの状態は、かれの自我を根底から危うくし、かれを弱め、おびやかし、かれを新しい束縛へすすんで服従させるのである。 ─(エーリッヒ・フロム/自由からの逃走/原著1941)
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