無意識日記
宇多田光 word:i_
 



前回「『Simple And Clean (Re-Recording)』(以降、頭文字を取って"SACRé"と略します)の包容力や暖かさがLive2023に通じる」という話をした。では具体的にどこらへんでそれを強く感じるか。「全体的な印象としてそうなってる」というのが正解なのだろうけど、自分は特に2番出だしにある

『The daily things』
『That keep us all』

の部分の低音ヴォーカルのメロディラインを挙げたい。ここのヒカルの歌い方が、後ろから暖かく見守って包み込んでくれてる感がよく出てて何とも言えず感動的なのだ。

ここの部分は、『光(Re-Recording)』でいえば

『うるさい通りに入って運命の仮面をとれ』

にあたるので、少しばかり聴き比べてみるといい。この光の方もこちらはこちらでかなり素敵なんだけども!(どうなってんだ今回のSFセッションに於けるRe-Recordingの充実振りは!)

そうなのだ、後ろのハモりが、ただ三度下五度下をなぞるだけに留まらないのよね今回の再録バージョンの、特にSACRéのバックコーラス・パートに関しては。そこだけ取り出してもそれぞれが独自にメロディをなぞっていて、ひとつの声部を追うだけでも本当に涙が出てきかねない程に感動する。そりゃあそれらを全部併せたら…(T△T) ←こうなるわよねぇ。


今回のSACRéリリースにあたってのヒカルのコメントはこうだった。

『長年支持されてきた曲の再録という大きなチャレンジに、友人でコラボレーターであるA. G. Cookの力を貸してもらいました。「光」/”Simple and Clean”の新しいバージョンは、私が22年前に書いた曲ではあるけど、違う場所、違う視点から発せられています。黙想的で思慮深く、もっと優しい。人生に勝ち負けはなく、あるのは経験から得るもの。世界中の多くの人がキングダム ハーツを通して受け取ったものに思いを馳せつつ、ここからまた始まることを楽しみにしてます。』
https://www.utadahikaru.jp/news/msnhsxijl/

この、違う視点を以て「黙想的で思慮深く、もっと優しい」人が歌うのが、SACRéで左右に割り振られている低音部のメロディなんだと思う箇所が、結構多いのよね。だからかなり意図的にそう歌ってる気がしている私。それと対比して、オリジナルの『Simple And Clean』よりさらに増強されている最高音部のハーモニーは、若い頃になりたかった今頃の自分、理想の未来の自分を表現しているかのようでねぇ。

つまり、SACRéのコーラスハーモニーは、今のヒカルが昔の自分を眺めて見守り慈しんでるのと共に、昔の自分がなりたかった大人に今自分はなれてるのかな、そうだったらいいなという理想と願いをも共に描いた、そういう様々な(実際の、或いはあったかもしれない)時間、世界線の数々を悉く包括したものになっているのではなかろうか。なので、それが描くのは、まさにヒカルが言うところの、総ての時間で満ちている空間─「聖域」になるのかもしれない。だとしたら、『Simple And Clean 』の続編がその名もズバリ『Sancuary』なのも、素直に頷けるような気がする。…20年越しくらいでやっと素直になれるのも気が長い話だけど、ヒカルに言わせれば「宇宙の時間に比べたら大したことない」んかなやっぱな!


追伸:なぜ『Simple And Clean (Re-Recording)』の略称がそのままの“SACRe”なのではなく“SACRé”なのかというと、フランス語で"sacré"が「神聖な」という意味の形容詞だと知ったから、なのでした。こんなにこの曲にピッタリの意味になるとは驚いたですよ、えぇ! そんなわけでeをéに変えたのでしたとさ。まる。

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