リズム・ループとバラードの関係性という事で触れておきたいのが『Find Love』だ。前からこの話しようとしててしていなかったんだけども。
同曲は開始から軽快なリズムとアップテンポな曲調であり、先に公開されていた部分もパーカッシブなベースラインが耳を惹く躍動的な印象があって事前にはイケイケのダンサブル・チューンだと捉えられていた。勿論それは聞こえてきていたサウンドの通りで何も違っちゃいなかったのだが、全編を聴くとこの曲は後半に次第にリズムを抜いて非常にスロウでメロウな曲調に変わるという非常に独創的な展開を孕んでいた。
この4分半の流れの中に、ヒカルが普段バラード作りのときに採っている手法が生々しいドキュメントとして封じ込められている、と解釈するのは身勝手に過ぎるだろうか。普段はリズムを入れた状態のデモを作ってそれを何度も作り直していくなかで徐々に楽曲全体からリズムを抜いてバラードに仕立て上げていくというその流れを時間軸上で連続的に表現したのがこの『Find Love』なのだ、という事だわね。
特にベースの使い方を較べれば色々と妄想が捗る。前半では曲全体を引っ張っていくそれ自体がパーカッシブでリズミックなラインを構成していてこれはヒカルにしては非常に珍しいアレンジなのだが(あとは甘いワナとかForevermoreくらいしかない)、後半ではいつものようにリズムの核は(非常にゆったりではあるものの)ドラムに任せ、それを補助して淡々とルート音を鳴らす他の多くの曲達のようになっている。
歌詞を聴くと、特に『キレイな人(Find Love)』の方がわかりやすいかな、『12時の鐘に』を『じゅうぃじのかんねんにぃ』といちいち「ん」を挟みながら歌っていて、ここからは「先にリズムの起伏があって、メロディと歌詞はそれに合わせにいっている」事が推測される。つまり、曲作りの過程としてはまずリズムパターンを作って、そこに歌メロを載せたのだろうと推測できるのだ。
一方、後半の2分では、異なる歌詞を同じ歌メロで歌っているが、「ん」の挟み方は控えめとなっている。「だれんも」「されなくてんも」にその名残はあるが、リズムというより尺合わせというニュアンスだ。つまりここでは、前半に生まれたメロディに合わせて新しくゆったりしたリズムを後から加えたのだと思われる。
恐らく、このような過程で『First Love』も『FINAL DISTANCE』『Flavor Of Life (Ballad Version)』も生まれたのだろう。その制作過程を1曲の中に封じ込めた『Find Love』『キレイな人(Find Love)』が、そういった名だたる過去のバラードの名曲達と同様に「Fで始まってeで終わるタイトル」を持っているのは、偶然ではないだろうね。
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