無意識日記
宇多田光 word:i_
 



でこの前書いた通り、『SCIENCE FICTION』の各曲の旧バージョンを、同じ曲順にしたプレイリストで順番に聴いているのだけど、まぁアルバムにならないのよね。普段宇多田シャッフルしてる時とあんまり気分が変わらない。当然っちゃ当然か。

そして、曲順もあまり意味を為さないような。やはり、あのSFの曲順はリレコーディング曲とリミックス曲とリマスター曲が総て揃った後に決められたんだろうね。あの流れの良さは各々の新バージョンあってこそ、だわ。

そして何より、旧バージョンで聴いていくと、終盤に固まっている最近の曲の映え方が倍なんだわ。勿論あたしの好みの話でしかないのだけど、特に『Gold 〜また逢う日まで〜』『Electricity』『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー(Sci-Fi Edit)』辺りがぐわっと際立つ。これここに至って、旧曲に関して新バージョンを様々に作ったのは、最近のヒカルの曲の威力に少しでも近づけるような意図もあったのかなぁと思えたのだ。

通常のアーティストのベスト・アルバムであれば、それも四半世紀もの長きに渡って名曲を積み重ねてきた人ともなれば、その過去の楽曲群を積み重ねた挙句に加わる新曲なんて、オリジナル・アルバムを揃えてる人達に向けての撒き餌でしかなく、作品全体としては添え物みたいな扱いになってたりもする。たまに新曲を一曲目にしたベスト盤もリリースされているが、そういうのってどちらかというと苦節何年で最近やっとヒット曲が出てきたアーティストのベスト盤だったりで。少なくともデビュー・アルバムが日本史上最高記録を樹立したアーティストの話ではないだろう。

しかしヒカルは、最近の、特にアルバム『BADモード』以降の楽曲の威力が冗談では済まないので、なるほどそのまま旧曲を並べていけば、ひとつの作品としての、ひとつのアルバムとしての山場は完全に彼らに持って行かれてしまう(と私はSFとその旧版集プレイリストを聴き比べて感じた)ので、旧曲たちをパワーアップさせとかないといけなかったんだなと納得感が強まった。

更に、全体としてのマスタリングが上手く揃ってるのも美点だと再確認。旧版集プレイリストも、Apple Musicで聴いていたので2014年版リマスターなど発売当時と比較してもアップデートされたサウンドの集まりだったのだが、やはり2024年のサウンドに揃えた方が通して聴いた時の流れが良い。ますます、『SCIENCE FICTION』はただ昔の名曲を集めてあるだけ(なのでそこから一曲ずつピックアップして聴くだけ)のものではない、最初から最後までこの曲順で通して聴く為のディレクションの許で作られているのだなと確信を強めましたよ、えぇ。

具体的には、特に『Can You Keep A Secret?』のリミックスと、『光』のリレコーディング、そして勿論『traveling』のリレコーディングが、全体の流れの中では効いてたね。キャンシーの作るアクセント、光の生み出す新鮮な空気感、そしてトラベの再フルスロットルぶりと、26曲という長丁場を聴かせ切るのにそれぞれ欠かせない役割を果たしている。なのでここで断言してもいいや。この3曲は間違いなく『SCIENCE FICTION TOUR 2024』で演奏されるね。ん?そんなのわかりきってるでしょって? いやまーそーなんだけどさw わざわざ言いたくなったってことでね。


斯様に新旧の聴き比べは興味深い。勿論、単曲として聴いた場合、それこそ例えば『traveling 』のオリジナル・バージョンならではの魅力とかを再々(×数百回)確認できたし、その点もよかったのだが、やはりアルバムという作品単位でみたときの『SCIENCE FICTION』の魅力が大きく際立った。まったく、2024年に凄い一枚を作り上げたもんだよヒカルさんは。(…二枚組だけどもね!)

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「2024年度上半期全国FM/AMラジオ・エアプレイチャート」ってのが発表された。
https://www.musicman.co.jp/chart/621181

毎度ながらよくこんなのすぐ見つけてくるねぇありがたい。でヒカルの名前は総合チャートに次の2つ。

9位 宇多田ヒカル「何色でもない花」
18位 宇多田ヒカル「traveling」

再録版と合算ってことなんだろうかねトラベの方は。そして『何色でもない花』が第9位。この曲は聴いた時に真っ先に書いた「売れそうにない」という予想を悉く擦り潰しにきてくれるねぇ。ホントすいません侮ってました。(何度でも謝る)

実際、チャート自体が乱立する現代においては、何であれトップ10に名前があると現役感が出るのよね。普段ヒカルを聴いてない人も「あら宇多田は今年も元気にやってるんだな」と認識してくれる。なのでこの曲がここまで売れたのはキャリア的には数字以上にプラスだろうな。

アルバム『SCIENCE FICTION』を聴いていて『何色でもない花』が流れてくると、この26曲の中でいちばんの“異質感”を感じる。アルバム全体の雰囲気の中でかなり端っこというか異端というか。収録理由が「まだ今年リリースしたばかりの新曲だから」なのだろうからね。例えば前に触れた『ULTRA BLUE』の楽曲群が『SCIENCE FICTION』の傾向やムードから少し距離があるからあまり選曲されていない、という話とはまた事情が違う。

逆に言えば、『ULTRA BLUE』の楽曲がもっと収録されていたなら『何色でもない花』の異質感も薄れる筈だ。そこに親和性を見出す事も出来る。その上で『気分じゃないの(Not In The Mood)』も放り込めばバッチリ…嗚呼、それではSFが違う作品になってしまうわね。

『ULTRA BLUE』はセールス的には“底”の作品で、次作『HEART STATION』アルバムでV字回復していくのだが、ここだけ「ミリオンではない」というのがCD時代を生きてきた人間の認識である。ただ、いうほど印象が悪くないのは、その前の『Single Collection Vol. 1』で“一丁上がり感”を出してヒカルが一旦キャリアを総括したからでもあった。そのあと実験に走っても「まぁもう一時代を築いた人だから好きにすれば」と思われてた節がある。

その後の歴史をみても、『Single Collection Vol. 2』は人間活動に入る直前のリリースだったし、それなら今回の『SCIENCE FICTION』アルバムもキャリアの区切りになっていくのか?というのは少し気にかかる。が、アーティストの本能というか、ヒカルの現在の創造性の性質からすると、ここで立ち止まるのは少々考えづらい。寧ろ、リスナーの方がここでSCv1の時のように勝手に“一丁上がり感”を感じてしまうことの方が不安だわな。なので、こうやって旧曲より新曲の方が数字が上のチャートを見せられると安心するというのは、少しあるね。

しかし、これだけ人気だとやっぱりツアーでもこの『何色でもない花』は歌わざるを得ないか!? だったらラストの映像演出or照明演出で、効果音に合わせて花火を飛ばしてくれたら嬉しいんだけど、はてさてどうなるでしょうかね。あたしとしては当初のチャート予想がダメダメだっただけに、直にオーディエンスの反応が見てみたいってのも、ありますわ。

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