無意識日記
宇多田光 word:i_
 



順を追って訳詞を見ていく中で触れるつもりだったが、今後25周年イヤーに向けて新情報が連発されていくかもしれないのでそうならないうちに触れておきたいと思い立ち筆を執る。いや親指で画面擦ってるだけだけどw


LSAS2022の『About Me』、一箇所だけオリジナルと違う歌詞を歌っているんです。99%、単なる歌い間違いだ。

二番のサビ序盤、オリジナルなら

『I can be crazy, when I don't want to』
(U:意に反してクレイジーに
なっちゃう時もある)

と歌っている所をLSAS2022では

『I can be crazy, but I'll try not to』

と歌っている。後半が違うのだ。これはほぼ間違いなく一番のサビの同じ箇所、

『I can be lazy, but I'll try not to』
(U:怠けることもあるけど、そうならないようにがんばる)

に引っ張られて歌い間違えたに違いないのだ。まず間違いない。だって、もし意図的に歌詞を変えるつもりがあったのだとしたなら、対訳字幕もそのように変えていたであろうから。実際は、↑上記の通り、今回の新対訳もオリジナルの歌詞を訳したものになっている。だから99%、歌うヒカルがミスをしただけなのだ。

しかし、私はついつい残りの1%の可能性について考えてしまう。だって、この間違った方の歌詞、

『I can be crazy, but I'll try not to』

をUに沿って訳してみると、

「クレイジーになっちゃう時もあるけど、そうならないようにがんばる」

になるんだもんね。ちゃんと意味が通る。そして、この歌が、ヒカルと紀里谷さんの組み合わせではなく、圭子さんと照實さんの組み合わせを想定した歌詞を持っているという説を思い出して、この歌い間違いに何某かの必然性を見出してしまうのだ、私が勝手に。

照實さんのプロポーズの時にもし、圭子さんがこんなことを言っていたとしたら…。ヒカルが5歳の頃から症状は顕著になっていってたようだが、兆候はそれよりずっと前からあったのかもしれない。照實さんの口調にもその匂いがするし。『About Me』がそれについての歌だとしたら?

ヒカルは大丈夫なのだろう。こどもに辛く当たることもなさそうにみえる。いや勿論わからないが、疑う気にさせてくれそうもないくらい、例え声が出なくなったとしても、心を強く持てているようにみえている。だからこそこのLSAS2022の『About Me』のパフォーマンスにはグッとくるのだ。強さの中の弱さのようで。それがあるから、単なる歌い間違いにもストーリーを見出したくなってしまうのかもしれない。本当の理由はどうあれ、この歌い間違いによって、このライブ・バージョンはより特別なテイクになりましたわ。

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で話を戻すと。冷静に『First Love/初恋』関連のリリースを読み直すと、私がいちばん欲しがるであろうトラックの配信予定が見当たらないことに気づく。それは、

『初恋』アカペラの空間オーディオがない!

という事に尽きる。

だってそうでしょ。Appleが主導する空間オーディオの規格ドルビー・アトモス。その真骨頂は左右だけでなく前後上下からも音が降り注ぐサウンドにあるわけで。

『初恋』の壮大なバックコーラスに全身包まれてみたい!

と思うのは人情ってもんでしょう。寧ろ今回それをいちばんにやるべきだった。

コーラスというのは扱いが難しい。渾然一体となって新しい音が生まれるからこそ尊いという場合と、多くの異なる歌声がいちどきに聞こえてくるのが醍醐味だという場合と、どちらも有り得る。それは楽曲次第であってどちらが優れているかどうかよりは相性の問題だ。

ヒカルの『初恋』のバックコーラスは非常に分厚いが、御存知の通り宇多田ヒカルは他人の声を極力スタジオバージョンに持ち込まない。徹底的に自らの歌声を重ねに重ねて音を作る。そこが、例えば聖歌隊のようなコーラスとは全く異なる性質を形作る。

ドルビーアトモスで前後左右上下から歌声が届くとして、ヒカルのトラックの場合は総てがヒカルの歌声だ。ある意味、ヒカルが分身の術をつかって8人とか16人とか48人に増殖して歌ってくれることになる。それを楽園ととるか地獄絵図ととるかはそれぞれだろうが(笑)、特に同じ音程を同時に歌ったときに歌声がダブついてコーラスの甲斐が無くなってしまうおそれがあるのよね。ぷよぷよ方式っすね。同じモノが隣り合うと消し去り合っちゃう。

そこらへんをうまくクリアして作られた『初恋』のアカペラのドルビーアトモス版、表記すると

『初恋 - a cappella mix 2022 - (Dolby Atmos Version)』

という風になるだろうか。随分長いな!─このトラックが実現すれば、それはそれは凄まじいインパクトを残すことになるかと思われる。それだけにリリースの予定が無いのは残念でならない。

しかし、オリジナル・バージョンの『初恋』の方はきっちりリリースされるのだ。これに期待が出来ない訳がない。世界に自分とヒカルの二人だけ、っていうアカペラミックスみたいなのにはならないだろうとはいえ、こちらもミックスが決まればとんでもなく壮大荘厳壮麗な出来栄えとなるだろう。こちらは『First Love (2022 Mix)』と違って新しいミックスではなく、2トラック版とドルビーアトモス版のそれぞれの規格に合わせて新たにマスタリングを施したものだから音源(使われたテイク)自体は2018年のアルバム収録のと同じものになるのだが、それだけにドルビーアトモスの威力の程が伝わりやすいだろう。比較が容易だからね。

まぁでも、幾らミックスやマスタリングを工夫したって目の前でマイク1本ぶっ立てて生歌唱する宇多田ヒカルに敵うわけもないので(身も蓋もねーな相変わらず)、12月9日には新しいライブの情報が出てくれないかなと最高潮に贅沢な事を考えるのでした。まる。だって次は25周年、クォーターセンチュリー年間が控えてるからねぇ。いやまだデビュー24周年だけどね今年はね。

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突然だが、映画「ONE PIECE FILM RED」とその主題歌「新時代」by Adoが今物凄い。映画チャート音楽チャートどちらも8週連続第1位。このまま来週もとなると、いやならなくても今年の顔はこの作品とこの曲ということになりそうだ。

Adoちゃんの快進撃はまだまだ止まらず、次は椎名林檎に曲提供して貰って映画主題歌を歌うんだと。そもそもAdoちゃんによる椎名林檎曲のカバーは絶品至極で、その生真面目な性格が浮き彫りになる見事な後継者振りを示していたのだが、このコラボ発覚時の林檎姐のコメントも相俟って、いやもうこのまま禅譲でいいのではという空気すら漂った。つまり、椎名林檎は裏方に回ってAdoちゃんに曲書いていってあげたらいいのではと。

そこらへん、ファンは複雑な心境のようで。林檎姐には演者として常に前面に出て欲しいと願いつつ彼女が基本的には裏方志向なのは重々承知という板挟み。苦虫を噛み潰したような表情を採るのもまたむべなるかな。

しかし、林檎姐はまだまだ若いが、確かにいずれ声は衰えるものなので、自らの創作意欲を反映させるのを自前の喉のみに絞る謂れも余り無い。禅譲の機会を窺うのは元祖新宿系自作自演屋としても当然必然必定な発想なのかもしれない。

そんな折、ふと来週50周年記念ベストをリリースするという松任谷由実の名が目に留まりまして。それならと試しに最近作の歌声に耳を傾けてみた(ここらへんの気軽さがサブスクのええとこやね)。なるほど、作詞者作曲者としての腕は衰えていない。今でも切っ掛けさえあれば大ヒット曲を生み出すポテンシャルは兼ね備えているな。流石だ…とは思ったが、と同時に流石に歌声は老いている。そりゃ50周年だもんねぇ。デビューから半世紀ですよ。アレサ・フランクリンだって晩年は声が出なくなっていたんだから元々喉の強さで勝負してないユーミンがこうなるのも自然なことだわさ。

だが、本質的な問題は少しそこからズレた所にあるように思えた。声が老いたならそれなりの歌い方と詞と楽曲を用意すればよい。彼女の歌声に余分な老いを感じるのは、ひとえに、彼女が楽曲の中でイメージしている歌声と実際の歌声の間に乖離が生じている為ではないか。もっと踏み込んで言えば、ユーミンは自分の実際の歌声を聴いていない、その向こうにある理想に目が向いているのだと。

松任谷由実(と荒井由実)の作法に慣れたリスナーなら彼女の意図、理想を共有できるだろうが、初めてユーミンを聴く人にそれが届くかというと難しい。思うに、どこかの時点で松任谷由実は自分の曲と詞を理想的に歌ってくれる後継者を探すべきだったのかもしれない─そう私には思えたのだ。曲と詞を、「返事はいらない」「ひこうき雲」から50年経った今でも書ける人だからこそ、惜しい。

その姿を思えば、これからデビュー25周年イヤーを迎える、即ちユーミンからみればまだ半分にも満たないキャリアしか持たないひよっこも同然な椎名林檎が禅譲を考えているなどと知れば片腹痛める気がするが、だがそうそう理想的な後継者など現れるものではない。旬は一瞬にして通り過ぎる。今と思えば今なのだ。


前置きが長くなった(前置きだったんか)。同じく来年デビュー25周年イヤーを迎えるヒカルさんの方はといえば、裏方志向は林檎姐と相通ずるものがあるものの、自らマイクを置く気配は一切無い。それどころか、今がいちばん歌が上手くパワーも兼ね備えているといえる。歌唱面では絶頂期と言っていいだろう。だが、昨年から今年に掛けての『BADモード』&『Live Sessions from Air Studios 2022』に於いて露呈したのは、そこまでの喉を持っていてもいつ何時声が出なくなるかわかったものじゃない、という現実だった。今回は回復して無事スタジオライブも配信できたし、da capoも収録できた。コーチェラの舞台にも立てたし、南青山でも八景島で絶好調だった。だが、こういう時こそ、未来を見据えて、ヒカルの曲と詞を歌える人が出てきたら気に留めるようなことを…え?『未来に保証は無い方がいい』?『賭けてみるしかない』?─全くその通りですね。失礼致しました。ヒカルさんはきっと最後まで自ら作った歌を歌い切るでしょう。藤圭子の愛娘として、そして、藤圭子の最も正統的な後継者として、ね。

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前回は駆け足の上にごちゃごちゃしていて読みづらかったが(反省中)、要はドルビー・アトモスってのは空間オーディオ、即ち「立体音響」の一規格ってことですね。

ではそれを実際に体験するにはどうすればいいか。様々なケースが考えられるがいちばん最大多数向けにしてシンプルな方法は

「iPhoneかiPadに
 AirPodsを繋いで
 Apple Musicに加入する」

ことだろう。真っ新にこれ全部揃えようとすると今だとカンタンに六桁万円いっちゃいますが、現時点でiPhoneユーザーならなんとかね。

部屋に7.1chのスピーカーシステムを置ける人はかなりの少数派だろうしそれ買ってる時点で立体音響に理解があるだろうからその話は省略する。そこまでではないって人も、単独のスピーカーでも立体音響、つまり空間オーディオ対応を謳っている商品があるのでそれをチェックするのはアリだと思うがあたし自身がまだよくわかってないのでこちらも省略。


それ以外の人に向けて。前回書いたとおり、ドルビーアトモス版へのアクセスに関してはどのプラットフォームでどう配信されるかを見極めてからの方が何かといいだろう。もしかしたら、まだアナウンスされていないだけで後日しっかり360R版もリリースされるかもしれない。空間オーディオのSONY側の規格ですわね。「焦りは禁物」。これである。


で、細かいことを少々付言。


「(前略)そんな彼女にとってデビュー24周年となる記念日(12月9日)に

 ドルビーアトモス版「First Love(2022 Mix)」「初恋」の配信、

 ならびに「初恋(2022 Remastering)」の配信、

そして「First Love(2022 Mix)」と「初恋(2022 Remastering)」の2曲を収録した7インチアナログ盤「First Love/初恋」の限定発売

が決定した。(後略)」
https://www.utadahikaru.jp/news/detail.html?id=545422


前回引用した公式ニュースに改行を入れただけなのだが、おわかりだろうか。『First Love』の方は新しい“ミックス”、『初恋』の方は新しい“マスタリング”なのだ。なんとも、ややこしい違い。そして、「普通に配信」されるのは、『初恋』の新しいマスタリングのみなのである。『First Love』の新しいミックスは、そもそもが空間オーディオの為のものなのだ。

更に話をややこしくしているのが↓この部分。上記引用ニュースの続きにある。

「アナログ盤に収録される「First Love(2022 Mix)」はドルビーアトモスミックス同様にスティーブが新たに制作したステレオミックス。」

つまり、

『First Love (2022 Mix)」

と表記される音源は2つあって、

ドルビー・アトモス版(7.1ch対応)の配信音源『First Love (2022 Mix)』



ステレオ・ミックス版(2ch対応)のアナログ音源『First Love (2022 Mix)』

になる訳だ。媒体が異なるから購入時に混乱しないとは思うが、違うミックスに同じ名前をつけられるとか紛らわしい事この上ないよね。


以上のことなどを踏まえると

「アナログ盤は売り切れるから今から予約」

「配信版は売り切れないからシステム揃えるのは一旦待機」

の2点を今は押さえておけばいいかなと。繰り返しますが、「焦りは禁物」でございますよっと。

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話が前後してしまったが、そうなのだ、今回の『First Love/初恋』EPは7インチアナログ盤2枚組だけでなく、当然配信もあるですよ。


「 (前略)そんな彼女にとってデビュー24周年となる記念日(12月9日)にドルビーアトモス版「First Love(2022 Mix)」「初恋」の配信、ならびに「初恋(2022 Remastering)」の配信、そして「First Love(2022 Mix)」と「初恋(2022 Remastering)」の2曲を収録した7インチアナログ盤「First Love/初恋」の限定発売が決定した。(後略)」
https://www.utadahikaru.jp/news/detail.html?id=545422


とのことで、どうやら(ひとまずは)アカペラ・ミックスの配信は無いようだ。アナログ盤のみですね。『First Love』の新しいミックスと『初恋』のリマスタリングの2つの音源が配信されると。一方で、その普通の配信だけでなく、“ドルビー・アトモス版”でもその2曲が配信されると。

これを読んで私は「え?」となった。というのも、ドルビー・アトモスって、それが何のことだかは後述するとして、基本的に現在Apple Musicが推進している規格だからだ。

ヒカルは、御存知のように、配信ではSpotifyに重きを置いている。『Liner Voice +』も『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー-Live at Sea Paradise - 』もSpotifyの独占配信だ。何故こう偏るかといえば、所属レコード会社がSONYで、そのSONYがSpotifyと提携しているからなのでした。

で。その親会社(と言うのかどうかは知らんが)であるSONYが推進している空間オーディオの規格は、ドルビー・アトモスではなく「360R」(360 Reality Audio/サンロクマル・リアリティ・オーディオ)の方。昭和の人間であれば、ビデオテープの規格でベータとVHSがあったのを御存知ですよね。あんな感じに、Apple とSONYは「空間オーディオ」の規格で現在競合しているのです。

「空間オーディオ」の説明も少し。普通のオーディオは大抵「ステレオ」で、スピーカーが左右に2つあって、これを聴けば左右に音が拡がっている感じがする。一方「空間オーディオ」は、左右だけでなく前後上下からも音が聞こえてくるように作られた規格だ。その為本来なら7.1chという8つのスピーカーを使って四方八方から鳴らされる音源を体験することを指していたのだが、最近はイヤホンでもそういった空間的なサウンドが(擬似的にではあるが)体験できるようになってきている。

で、その新しい技術である「空間オーディオ」のやり方、規格として現在Appleの「ドルビー・アトモス」とSONYの「360R」が競い合ってる、とそういう話なのよね。

この状況下でSONY所属である宇多田ヒカルがAppleの「ドルビー・アトモス」でサブスク配信するとすれば「敵に塩を送る」行為と見做されかねない。いったいどういうことだろう?

その昔ヒカルは家電メーカー東芝を親会社として持つEMIに所属しながらライバルであるSONYの商品(MD)のCMに出演するというなかなかの離れ業を繰り出した事があったが、今回もそういうアクロバティックな事態になっているのだろうか?

或いは、「ドルビー・アトモス」の規格が、Apple以外で採用され、その第一弾アーティストとして宇多田ヒカルが選ばれたというセンも有り得る。ハイレゾ黎明期、アルバム『First Love』は挙って好事家に求められた。その再現となるのか。

とはいえ、そんなことを新たに仕掛けるサブスク配信プラットフォームってあるかなぁ? YouTube?Amazon? よもやSpotify? なかなかに、わからない。さてどうなんでしょうね?


ひとつ現時点で注意しておいて欲しいのは、仮に『First Love』と『初恋』のドルビー・アトモス版がApple Musicのみの配信だった場合、同サービスに有料で入らないと音源が一切聴けない、ということだ。YouTubeやSpotifyのような無料サービスが皆無なんだよApple Musicって。なので、12月9日にすぐ聴きたいという人は事前にApple Musicに入っておいた方が無難だろう(AirPodsとかも買ってね)。そこまで焦らないという人は、まず配信が始まってからどこのサービスが利用できるかを確認してから購入や加入をする流れになるかな。空間オーディオに対する興味と関心次第でそこらへんは変わるかなと思います。

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今日は『Fantôme』発売6周年記念日。6年と聞くともう完全に歴史の一部という感じだわね。最近だと「『Fantôme』の頃はまだファンじゃありませんでした」という人が幾らでも居て、なんだか久し振りに会った同級生にもう孫が出来てたみたいなそんな感覚に囚われてるわ。(?)

と同時に今日は『Be My Last』発売17周年記念日でもある訳で。6年ですら歴史の感覚なのに17年とか先史ですよね最早。記憶が化石。

『Be My Last』といえば、発売当時最も「音のいい」ヒカルの音源だった。その直前の『EXODUS』が音質二の次作品だった為余計にその差が際立っていた。理由は、非常にシンプルに、当時としては珍しく高いサンプリングレートで録音されていた為だ。今でいうハイレゾ音源でも最高品質といえる24bit&192kHzでね。まずそれがあって音がよかった。

もうひとつ、『Be My Last』という楽曲には演奏のトラック数が少ないという特徴もあった。要は演奏楽器がいつもより少なかった(ヒカルさんは放っといたら『Animato』のよつに4つも5つも楽器を重ねたがる)訳だ。それによってヴォーカルに振れる情報量が増大し結果まるで耳元で囁かれているようなリアルなサウンドが実現した。

楽器が少ないほどヴォーカルがリアルになるんだったら、楽器が全くなくなったらもんのすごくリアルなヴォーカルが聴けるんじゃね?と思うのが人情だ。果たして本当にそうなのだろうか…?という疑問に、まもなく7インチアナログ盤2枚組『First Love/初恋』が答えてくれるかもしれない。そう、2曲のアカペラ・ミックス、演奏なしヴォーカルのみの音源がリリースされるのでしたね。

これ、理屈では2トラックの占有する情報量を総てメイン・ヴォーカル(と必要なバックコーラス)が持っていく訳で、それだけでかなりの音質アップが期待出来るのだ。が、どこからミックスし直すかで結果は変わってくるだろう。御存知のように宇多田ヒカルのヴォーカル&コーラストラックは48を超える音源から構成されている。これを謂わば無理矢理僕らが普段聴いてる2トラックのステレオ音源に落とし込んでいる訳で、その作業過程では48トラックを24トラックに、24トラックを12トラックに…する過程がある訳でその都度情報量は失われていっている。この気の遠くなるようなミックスの作業のうちどこからやり直したかで今回のアカペラ・ミックスの音質とその評価が決まるだろう。これは聴いてみるまでわからないわね。

しかし、もし手間暇掛けてミックスし直してアカペラを作ったんだったら、それこそアナログ盤限定にせずに空間オーディオ対応のデジタル音源もリリースした方がよかったんとちゃうかな。いや勿論、こちらとしてもアナログ盤を再生するのは気を遣うので(だってあれ針で盤を“擦って削って”再生してるんだもんねぇ)、気楽に再生できるデジタル音源でアカペラ・ミックスを堪能したいというのも当然あるんだけど、単純に音質面だけとっても、今回宇多田ヒカル初の空間オーディオ進出なのだから(って非商用であればSONYの360Rが既にあるんだけどね)、アカペラ・ミックスでその凄味をダイレクトに伝えた方がよかったんじゃないのかな。

でもま、ここだけの話、小声で宜しくですが、生産限定のアナログ盤が大体売り切れたくらいのタイミングでアカペラミックスの空間オーディオ音源がデジタル・リリースされる算段になっているかもしれないですからね、ここらへんは色々様子見って感じでいいんじゃないですかね。私はどうせアナログ盤買うんですけどもっ!

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ちょっとここらへんで『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』周辺の状況を整理しておきたい。


ヒカルは9/23のツイートでこんな風に呟いている。


『ちなみに私が無理言ってこのめちゃ長い歌プッシュしてるんじゃなくてSpotifyさん側からこの歌でパフォーマンスビデオ撮ってって話が来たのよ😂』
https://twitter.com/utadahikaru/status/1573035444895465475


これはなかなかに興味深い新事実であった。つまり、ミュージック・ビデオを作るにあたって、レコード会社主導ではなくプラットフォーム(今回はSpotify)主導で話が進んだのか。23年やってきて初めてのケースじゃない? 近いのは『MTV UNPLUGGED』か。あれは放送局(この時はMTV)主導の企画だった。が、ミュージック・ビデオとなるとね。

つまり、最近Netflixのように配信会社が予算を出してアニメやドラマを制作して独占配信しているのと同じように、ミュージック・ビデオもプラットフォームが予算を出して独占配信するようになったと、こういう訳だったのね。そりゃ当然Spotify独占配信になるわな。今後もずっとそうなるのか。だとしたら、YouTubeで横長版をという希望は叶いそうにありませんな…。

っとと。今回のこの『- Live at Sea Paradise -』バージョンに関してはそれでいいとして。『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』には、“ミュージック・ビデオ”という括りには入らないかもしれないが、同曲をフィーチャーした映像作品がもうひとつあったよね。阿部千登勢とカルティエ(CARTIER)によるプロジェクト「TRINITY FOR CHITOSE ABE of sacai」のキャンペーン・ムービーだ。

こちらは、どうやら先に宇多田ヒカルとカルティエのコラボレーションが決まって、その選曲をヒカル側に委ねていたようだ。インタビューではこんな風に語っていた。


***** *****


「今回のムービーで『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』を選んだ理由をお聞かせ下さい。」

『「一つ」でもあり「三つ」でもあり、様々な表情を見せる古のなぞなぞのような魅力を持つ「トリニティ」に、新たに注入された「緊張」と「調和」が均衡する阿部千登勢さんのモダンな美学。そこに、有機物のように変化し続ける電子音とともに、近くて遠い場所に思いを馳せながら絶えず膨張する宇宙と一体化していくように展開するこの長編のクールさと切実さを添えたいと思い選びました。』


***** *****


回答が長くてわかりにくいかもしれないが、でもハッキリと「キャンペーン・ムービーに起用する楽曲として『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』を選んだ理由」についてヒカルが語っている。


この2つのケースとも非常に特異だ。片やプラットフォームからの提案で選曲も決まっていたケース、片やコラボレーション相手からの提案で選曲が決まっていなかったケース。この2つの異なるケースに『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』という同じ楽曲が起用された。物事の順序はわからないが、これは一応“ダブル・タイアップ”の一種になるのかもしれないね。SpotifyとCartierとの。

一つの楽曲に複数の映像作品が作られるのはこれが初めてではない。例えば『花束を君に』は、切り絵メインのタイアップドラマ向けのMVと、ヒカルをフィーチャーしたアーティストサイドのMVの2種類があった。なのでこういったケースが有り得てもおかしくはなかった。(なお無意識日記ではそのアーティストサイドの『花束を君に』MVについて殆ど語っていないが、あれ私の中で18禁指定作品になっているので自重しているのです、勝手にw ちょっとあれ語るのはあれやこれやで以下自粛)

だが、こうなってしまった場合、『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の正式なミュージック・ビデオってどれになるのだろう?という疑問は残る。単純に、utadahikaru.jpのアルバム『BADモード』のページで『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』のトラックにどの動画のリンクを載せるかということだ。

Cartierとの方は2分しかないし半分商品の宣伝だし、Spotifyの方は独占限定配信でリンクしづらいし…と悩ましくなったところで思い出したのだが、そういやヒカルさん、マルセイユ行ってませんでしたっけ?


『やっとマルセイユ辺りにまじで来れた
I finally made it to somewhere near Marseille.』
https://twitter.com/utadahikaru/status/1546874838391746560


ねぇ? これもしかしたら、第3の、レコード会社主導の、今度こそ王道のYouTubeでも観れる『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』のミュージック・ビデオを目下制作中だったりしないのかしら? 流石にくどいかなぁ? この投稿が7/13の事なので、現在編集中という可能性もあるわな。万が一そんなことになったら『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』は宇多田ヒカル史上過去最高に映像でフィーチャーされた作品になりますね。はてさて、真実や如何に!?

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そうなのよね、ティーザーからして『First Love』が大フィーチャーされてるから当然この大スタンダードナンバーの方に注目が集まるのだけど、制作側の手腕が問われるのは勿論『初恋』の取り扱い方の方でね。

そもそもドラマの「First Love 初恋」というタイトルが大胆過ぎる。これ曲名ベースだと言われなければ「なんで同じ意味の言葉を英語と日本語で!?」と思われても仕方ない。「スパイダーマン 蜘蛛男」みたいなもんじゃねーの? まぁあんまり使われない英単語なら効果的かもしれないけど、FirstもLoveも、昭和の人間ですら中学一年生で習う単語だからねぇ。

なのでこのタイトルに説得力を与えるためにも『初恋』をどうフィーチャーするかがドラマのポイントのひとつとなるだろう。

そこらへんを探るのにドラマの方から切り込む知識は当方持ち合わせていないので取り敢えずこちらの都合で見立ててみよう。再びトラックリストを並べてみる。


ディスク 1
Side A
01. First Love (2022 Mix)
Side B
02. First Love (A Cappella Mix)

ディスク 2
Side A
01. 初恋 (2022 Remastering)
Side B
02. 初恋 (A Cappella Mix)

https://twitter.com/fu9ma/status/1573208134520541184


目を引くのは当然『First Love』『初恋』ともに収録されているB面の(カップリングと言わなくていいのだ!)『A Cappella Mix』、アカペラ・ミックスだろう。いつもの(というのは昨今抵抗あるけれど)シングル盤ならインストゥルメンタルと称してカラオケ、即ちオリジナル・トラックからメインヴォーカルのみを削った音源が入っていたものだが、今回はその逆、メインヴォーカルのみを残して他の楽器などの音を削った音源を収録する事になっている。

ここで大事なのは「メインヴォーカル」がどこまでを指すのか、だ。『First Love』アルバムのTV Mix盤を聴けばわかるとおり、カラオケバージョンてのは歌声が全く全部削られるわけではなく、バックコーラスはそのまま残されてる事が多い。オクターブ上下のバックコーラスだともう殆どメインヴォーカルと変わらなかったりして「カラオケとは」と概念批判思考の領域に入り込んだりもする。

『初恋』はそのバックコーラスの分厚さが天下一品である。それを活かすために天下のクリス・デイヴによるドラム・トラックを総て削るという暴挙に出た程だ。ギャラを払うレーベルからしたら涙目案件まっしぐらなのだが、実際に聴いてみて何が楽曲を活かすか妥協せずに見極めた宇多田ヒカルプロデューサーの大英断だった。その判断の成果、成否は実際のトラックを聴いて貰えば瞭然だろう。

アカペラ・ミックスでは、そのバックコーラスのどこまでがフィーチャーされるかがポイントとなる。メインヴォーカルに焦点を当てたシンプルなトラックになっているのか、それともドラム・トラックが不要いやさ邪魔になるほどの分厚い分厚いバックコーラスをそのまま残すのか。『I need you』のパートは流石に残さないと格好がつかないと事前には思うが、思わぬミックスの方法もあるか・・もしれないからここらへんは予断を許しませんね。

そして、このアカペラ・ミックスの方向性如何によって、楽曲『初恋』がドラマ「First Love 初恋」の劇中歌として起用されるかどうか、起用されるとしたらどんな場面で流されるかが決まっていく訳だ。メインヴォーカルのみであれば静かなしっとりとした場面で、バックコーラスをそのまま残したトラックであるならば荘厳で感動的な場面で、それぞれ使用されることになるだろう。或いは逆に、こういう場面で使いたいからアカペラ・ミックスを用意して欲しいとドラマ制作側から依頼された可能性もあるかもね。いずれにせよ7インチアナログ盤最大の関心事のひとつといっていいだろうこのアカペラ・ミックスは、宇多田ヒカルのアナログ盤の評判はもとより、ドラマの方の評判をも左右するかもしれないのだ。心して接してみたいものである…って聴けるまでまだ10週間以上あるんだけどね! 

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でまぁ昨日までにそのヒカルのニューEP発売の切っ掛けを作ってくれたドラマ「First Love 初恋」のティーザー動画が公開になってる訳だけど、私の第一印象としては「もしかして映画並みの予算を掛けたの?」という感じで、結構ちゃちくない映像でなんだかほっとしたの巻なのでした。これならなんとか格好がつくかな。Netflixは予算が潤沢だという状況は2022年も継続中ということか。キョンキョン相変わらず可愛いねぇ。50代女子の魅力がわからない人とは話す気になりませんなっ!(何を力説してんだか)

で、だ。そのティーザー動画には、劇中に宇多田ヒカルのアルバム『初恋』のものそのものを宣伝する看板が映っていた。新宿駅地下とかだろうか?場所はわからないけど、つまりこの映画はやっぱり宇多田ヒカルが実在して『First Love』や『初恋』がヒットした世界線で繰り広げれるのだと。登場人物たちの青春のサウンドトラックが実際に『First Love』なのだろう、と。

となるとですよ、これ先に言ったらガッカリが増すことを承知の上で言いますとですね、劇中でヒカルさんがパフォームしてもいい訳なんですよ。ドラマの中でテレビ出演なんかしたりして。全く問題ないわけです世界観上。世界線的にも。

私が監督ならやりますね。ティーザー動画の予告編では『First Love』の音源がBGMとして流れているが、流石と言うべきか鳴った瞬間に映像の格が上がるのがわかる。魔法みたいだよね流れてくるだけで90年代トレンディードラマのあの空気感を思い出させるなんて。リアルタイムを知らない人でもその頃のイメージを喚起されそうだ。

だったら歌うしかないでしょ本人が。どうせなら『First Love』より『初恋』の方を歌って欲しいけど(劇中での“現代”は2018年以降なのだろうし)それは勿論どっちでもいい。毎回エンドロールで『初恋』が流れていた所を最終回だけヒカルのパフォーマンスにするとか、もうそんな直球の演出でこちらは大満足でございますので。それだけでNetflixから課金された甲斐があったと結論づけますので。どうかどうか宜しくお願い。

…という願望を持つ視聴者が居ないとも限らないので(現にここに一人居るしね)、それが実現しないならもう最初っから「宇多田ヒカルの出演はありません」としつこくクレジットや脚注や説明項目に書いておいて欲しい。………そうしておいて最終回だけそのクレジットをそっと外してサプライズを仕掛けてくれたら万々歳なんですが、ちょっと妄想が先走り過ぎてますかねワタクシ。ちょっと話がややこしいし。


でもねぇ、どうにも、想定されてる一般視聴者と私(たち)、との間に認識の齟齬が出来てる気がするのよね。『Laughter in the Dark Tour 2018』を実体験した人は、『初恋』が『First Love』の次に歌われたことで、如何にヒカルが今という時代にスケールバカでかく成長しているのかをよくよく体感してると思うのですよ。そのテンション感と、「宇多田ヒカルといえば『Automatic』と『First Love』で止まっている人たち」の温度感は、まるっきり違うものになってそう。Netflixがどちらに合わせてくるかは当然自明。私(たち)じゃない方ですね。

そこらへんの齟齬を埋めに掛かってくれるような構成、即ち、『First Love』で釣って『初恋』の凄味を伝えてくれるようなドラマ演出になっていたら、私(たち)としてはこのドラマを大傑作と讃えるのに吝かではないんですが、果たしてどうなっているのやらですね。

そして、今の私(たち)にとっては、それですら4年前なのです。今は『BADモード』という、そこから更に成長・進化した宇多田ヒカルと日々格闘しるのですよね。11月下旬から始まる連続ドラマの脇を更に進化したヒカルが通っていく可能性も大いにあって。どうなるんでしょうかね一体。楽しみ半分、不安半分といったところでしょうか。

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やれやれ、連休に入った途端に新情報連発とは恐れ入った。最近国際志向なのか(?)金曜日に情報解禁が続いてる? んなことないか。祝日に働くレーベルの皆様お疲れさまです<(_ _)>


という訳で今年のデビュー記念日リリースが発表になった。あれやれやの情報を捨象すると

『First Love/初恋』のシングル盤発売!

となるか。

その内訳がややこしい。まず目玉は7インチアナログ盤だ。コレクターの @Mikihhi によると、非公式盤も含めて宇多田ヒカルの7インチ盤のリリースはこれが初めてらしい。
https://twitter.com/Mikihhi/status/1573210647726526464

確かに、その手があったか!という感じである。ただ、その中身を見てみると


ディスク 1
Side A
01. First Love (2022 Mix)
Side B
02. First Love (A Cappella Mix)

ディスク 2
Side A
01. 初恋 (2022 Remastering)
Side B
02. 初恋 (A Cappella Mix)

https://twitter.com/fu9ma/status/1573208134520541184


ということで、2枚組なのだと。本来なら12インチ盤1枚で入る曲数を7インチ盤2枚に振り分けてきた。なかなかにコレクターソウルを震わす小憎たらしい設定といえるだろう。御覧の通りこれは

「『First Love』の7インチシングル盤」

「『初恋』の7インチシングル盤」

「2枚組ボックスセット」

だということだわな。勿論2枚組だと箱じゃなくて通常のスリーブジャケットだろうけど、気分としてはね。

細かいことを言えば、12インチ盤と7インチ盤では音質が違うので、回転数次第ではこれはかなりの音質重視なプロジェクトといえるだろう。ここで触れるとややこしくなるから触れないが、ドルビーアトモス配信も同じ流れの中にあるものだ。

宇多田ヒカルのアナログ盤の勢いは凄い。昨年も、そして恐らく今年も邦楽業界では総合でNo.1の売上を上げている。その中で更に攻めの姿勢というか、新しいフォーマットで勝負しようという気概は買いたいところだ。何より、上記トラックリストにあるように、ヒカルのヴォーカル単独のアカペラ・ミックスに配信がなくてアナログ盤限定音源となるとね!

仮に音質に全振りした7インチ盤だとすると、いやヒカル単独の歌声とかどんな響きになるのやら。出来ればSONYストアは勿論のこと、各地のレコードショップでも是非是非このアカペラ・ミックスを優先的に流して欲しい。店頭で流れてたら買ってくでしょこれ。私も聴くのが楽しみですよそりゃ、えぇ。

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気がついたら私、『BADモード』が「生涯で最も回数聴いたアルバム」になりつつある。恐ろしい。私1992年に買ったアルバムとか30年間毎年聴き続けていたりするのにその回数を上回る模様なのはもう何というか絶句する他ない。まだ発売から1年経ってないんですがね。おかしい。明らかにおかしい。

もう最近『BADモード』が鳴ってると安心するんだよね。つまり、鳴ってない時私は不安になっているのですよ、その分。完全に中毒、依存症である。どんなドラッグよりも始末が悪い。これ、私から音楽再生機器取り上げたら器物損壊罪とか傷害罪に問われるんじゃないの私が(暴れるってことね)。やばい。明らかにやばい。

このおかしさとやばさを癒すものは何かないかと探したらありました。『ぼくはくま』。結局宇多田ヒカルの歌なのかよと自分でも思うが、最早これは毒をもって毒を制すということなのかもしれない。………そうか?(笑)

いやでも、ある意味そこがアルバム『BADモード』の"弱点"なんだと思うのだ。全曲名曲で抜かりなし。最早どこにも“抜いた”箇所が無いのよね。ずっと高いテンションで54分なり73分なりが過ぎてゆく。故に名盤なのだが、ここからどこにも逃げられない。

『HEART STATION』アルバムはそこが違った。『Celebrate』『Prisoner Of Love』『テイク5』と緊張感マックスが続いた挙げ句の突き抜けた場所に『ぼくはくま』があった。ある意味、あのアルバムはあそこで“外に出た”のだ。アルバムのうちの1曲によってアルバム内からアルバム外に飛び出した。幾何学的イメージでは矛盾をきたすがクラインの壷でも想像してくれれば。(※普通の人間は視覚的に想像することが不可能な超立体の名前です)

『BADモード』にはそれがない。ボーナストラックである筈の『Beautiful World (Da Capo Version)』ですらこの世界の内に取り込まれている。それだけ「宇多田ヒカルの世界」の適用範囲が拡がって何もかも内側に取り込めている証なのだが、要するにそれだけヒカルが世界を手広く幅広く抱きしめられるお陰で何処にも「破綻が無い」のである。これが嘗て『かあさんどうしてそだてたものまでじぶんでこわさなきゃならないひがくるの』と歌った人の作品なのだろうか? 実際に自分がその「かあさん」になった今、息子にそんな風に言われるのは本意ではないかもしれない、という風に翻意でもしたというのだろうか?

うん、壊すのはまだなのかもしれない。『BADモード』で拡げた世界はまだ拡がるだろうからだ。このまま突き進む余地がまだまだある。『DEEP RIVER』アルバムを作った時のような「こんな作品作っちまってこのあとどうすんだ?」みたいな途方に暮れた感じはしない。最後の『気分じゃないの』の出来栄えからして、今の宇多田ヒカルは「まだまだこんなもんじゃない」のである。紛れもない最高傑作を作り上げたばかりだというのに! 私も言ってて恐ろしいが、そんな予感しかしないのである。毎日『BADモード』(かLSAS2022)を鳴らしている人間としての率直な感想だ。

なので、外側だとか破綻とか破壊とかは、もう少し先の話になるだろう。その前にどっかでツアーしないとね。そして宇多田ヒカルのこれから進む道は、人類未到の足跡となる。心して掛からねばなるまいて。なので、そう、『ぼくはくま』のような歌がいつ生まれるのか、それをよくよく注視していきましょうねということなのでした。それが未来への布石となるだろう。…『HEART STATION』アルバムがの時のリリース順を思い出すと、次のシングル曲あたりがそうなるのかなぁ?

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昨日は唐突に照實さんがツイート…というかスタッフといちファン(インスタライブでヒカルさんに読まれたのに続いてtikkiさんおめでとっ!)にリプライをしてこちらを驚かせてくれた。いやはや、お元気であれば何よりだ。

だが今の照實さんが使ってる@u3musicアカウントは鍵付きになっているので新しくフォローしようとした人は読めないのよね。u3musicは個人事務所とはいえ一応法人の公式アカウントなのだから鍵付きはマズいと思うんですが照實さんが気にしてない或いは気づいてない!?なら仕方がない。ただ、法人の公式なら広報用と他者が判断して差し支えないと思うので、ツイートに関して話題にするのはマナー違反には該当しないんじゃないかなとも思います。昔は村上チエちゃんも呟いてたしね。個人のアカウントではないのですよ、一応。

ということで、照實さんの名前を久々に見…っていやちょっと待て。Spotify限定の『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー -Live At Sea Paradise -』のエンディング・クレジットにお名前を見掛けた気がするぞ?(…チェック中)


Producer :
Teruzane Utada / Akira Miyake (u3music)


そう、今回のビデオの第1プロデューサー、照實さんなのね。てことで八景島にも足を運んではったのかな。

たまに現場の仕事をせずに名義だけプロデューサーになってる人も居たりするけどその場合は「Executive Producer/エグゼクティブ・プロデューサー」とか、少し違う表記になることが多い。照實さんは名前が1番目だし、これは実際のプロデューサーなのだとみた方がいいだろう。まだまだお元気にお仕事なさってるのねぇ…。ありがたや。

そして第二プロデューサとして名前が挙がってるのが三宅彰さんで、御存知宇多田ヒカルを邦楽業界に引っ張り込んだ張本人だ…って再びちょっと待て!? 「(u3music)」ってなんだ!? 三宅さん今u3music所属なの?? なわけないよねあそこ藤圭子と宇多田ヒカルしかアーティスト居ないもんね。何かの間違い…つまり照實さんのとこに書くべきなのを…?

いやぁ、考えづらい。クレジットというのはその名前の通り(「クレジット・カード」とかと一緒で)「支払い確約」の証の筈だ。あなたはこれこれの仕事をしてくれたのでギャランティを払います(或いは印税契約します)ということを公にしたもの。ここ間違えるって契約書のハンコ押し間違えるのと変わりないよ!?(ちと大袈裟) これ文句言われてもしゃあないやつやね。

或いは本当に三宅さんがu3music所属になったか、だ。有り得ない話ではない。複数の会社の顧問やってる人も居るし、肩書きがひとつやふたつ増えたところでというのもあるだろう。だが、もしそうだとするならTwitterの@u3musicのアカウントのパスワードを教えて貰って三宅さんが呟いてくれないかな。勿論、鍵は外した上でね~。

いやしかし、これホントどういうことなんだろうね。ガチの間違いだったら後日動画の差し替えになると思うんだけど…この動画観返す毎にここに注目するとするかな。まぁ、名前の順番間違えただけだと思いますけどねー。なんなんだろこれ。

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『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』の新録音動画が作られた事でアルバム『BADモード』の楽曲の扱いが過去にない密度となっている。映像作品が作られる、或いは先行曲として配信される、タイアップがつくといった「シングル曲扱い」をされていない曲が、アルバムの中であと1曲、『気分じゃないの(Not In The Mood)』だけになってしまったのだ。過去に『HEART STATION』で13曲中9曲が上記の意味でシングル曲扱いになった事があったが(『Fight The Blues』にも映像が作られタイアップがついた)、今回はそれと同等かそれ以上にシングル曲扱いが多い。その上LSAS2022までリリースされたお陰で、個々の楽曲に対する注目度は過去最高になっているのではないか。

ひとつ目安として、今日の時点でのYouTubeでの関連楽曲の再生回数を列挙してみよう。

『BADモード』645万回
『BADモード(live)』125万回
『君に夢中』2403万回
『One Last Kiss』6552万回
『PINK BLOOD』1141万回
『Time』540万回
『Time (short ver.)』402万回
『Find Love (live)』379万回
『Face My Fears (Japanese Short Version)』129万回
『Face My Fears (English Version)』2083万回
『Face My Fears (English Version) (live)』271万回
『Face My Fears (A.G.Cook Remix)』138万回

合計1億4808万回再生か。いやはや、御覧の通り、当然突出した楽曲はあるものの、どれも高い再生回数を誇っている。ここまでくると、『誰にも言わない』や『キレイな人』のMVがないのが残念でならないわね。勿論、今回の『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』はSpotify限定なので入っていない。何かタイアップがもうひとつついたタイミングで横長動画をYouTubeに投下してくれればかなりの回数再生されると思うのだが…12分あるから不利は不利かもだけどね。

もうここまで来たら『気分じゃないの(Not In The Mood)』にもタイアップがつけばいいのに…というか、あの歌ならそりゃ歌詞を題材にしたショートムービーになるかねぇ? ともあれ、宇多田ヒカル8枚目のフルアルバム『BADモード』は目下擦れる所総て擦り倒す勢い。これひょっとしてアルバム配信開始から一年間勢い止まらないんじゃない? 4ヶ月後くらいにまたYouTubeの再生回数をチェックしてみたいわね。(私のことだから忘れてると思うけど!(笑))

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既に周知かと思うが、これについてはやっぱり触れておかねばなるまい。


@bouquet4_u : LIVE at Sea Paradise ということは水族館でのライブを録音した音源が使われているということでしょうか?

@utadahikaru : @bouquet4_u @hikki_staff @SpotifyJP そうだよ〜🤓
posted at 2022/9/16 20:13:14
https://twitter.com/utadahikaru/status/1570732536644669443


クレジットから「そうかも」とは思っていたが、そうなのか! そう、この今回の『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー - Live At Sea Paradise - 』は、既存音源のミュージック・ビデオではなく、新録音音源をフィーチャーした動画だったのだ。ますます、Spotify限定なのが恨めしい。ダウンロードで買わせろよ。

いやはや、音を聴いてるだけでは多分全くわからなかったかと思うよ私は。南青山Wall&Wallでの音源も「喉からCD音源©中川翔子」だったのだが、今回はそれ以上だ。あんなスタジオでもステージでもない場所で踊りながら歌ってあれなの? マジで?? 理解不能である。なんという安定感か。

他のダンサーの皆さんが来る前に水族館の中で棒立ちして丁寧に歌った後にその音声をイヤーモニターで流しつつ踊って口パクして撮影、だったんならまだわかるんだが、もしそうならヒカルは『そうだよ~』だなんて言うだろうか? 言わない気がするなぁ。やっぱり踊りながら歌ったんだろうな。

これは恐ろしい。我々がいつかライブコンサートにて『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』を聴く時に、このレベルのパフォーマンスを期待していいということだ。歌って踊るヒカルさんをね。この歌の歌メロって、時にバカみたいに素直に響くから、ビブラートを工夫して歌わないとほんと間抜けに聞こえちゃうのよね。それを締まった感じで、しかし暗くなりすぎずに明るさを保ったまま歌うにはかなりの精度が必要だと思うのだが…ヒカルさんならお茶の子さいさいということか。

ただ、南青山の音源と違ってしっかりダブルでメイン・ヴォーカル響いてるよね? ダブルとは同じラインを2回録音することだが、これ、もう1個のラインはどうやってんだろうか。ステレオシステムを使えば1回のテイクでダブルになるんだろうけど、うーん、わからん。片方のラインは元のスタジオ音源なのかな? まぁそんな技術的な云々はいいか。兎に角、バックの演奏は置いておいて、またもやヒカルの新しい音源がリリースされそれが手許の音楽プレーヤーで聴けないパターンがもひとつ追加と相成った。『Laughter in the Dark Tour 2018』の『光』と『誓い』のVRライブ音源とかもそうだけど、前回の南青山Wall&Wallといい、今回の八景島Sea Paradiseといい、伝説に残るアーティストのライブ音源を恒久的にアクセス出来なさそうなカタチでリリースするのは、ほんとなんとかならないものか。それぞれの媒体の宣伝の為というのは重々理解できるので、例えば10年後とかでもいいから纏めてCDボックスとかDVD-ROMとかSDカードとかなんでもいいので、手許の個々の音楽プレーヤーで恒久的に再生できる手筈を整えて欲しいものなのです。そういうのが今後もずっと商売として成り立つよう、コアなファンの方でお金持ちな皆さんはボックス・セットの類は糸目をつけずに購入していきましょう。私も買うから。(あんたは誰に頼まれなくても買うでしょうに)。

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ニューヨークのタイムズスクエアで『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー Live At Sea Parasise 』が流されているらしく。
https://twitter.com/BistroTomokoNY/status/1571941750381445121
https://twitter.com/fu9ma/status/1571997214393929728

先週から渋谷でも流されていると。
https://twitter.com/hikki_staff/status/1571840123385581572

これですよこれ。縦長動画のメリット。単純に縦型スクリーンでのプロモーションが出来るというね。

『Laughter in the Dark Tour 2018』でもスクリーンはステージ左右の縦型だった訳で我々もそこまで疎遠なものではなかった訳だけど今回インスタストーリーやTikTok進出を経ていよいよ専用動画を用意してきたと。順調にステップを踏んでる感じがするね。

しかしNYでもとはね! そういや『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』って半分以上歌詞が英語だから英語圏でプロモーションしても全然違和感ないのよね。ラテン/スパニッシュ系がスペイン語とか入れてくるのもPopsではよくあることなんで、日本語が絡んできてもそれと似た印象になるんでないかな。これでブレイクしたら面白いわね。Floating PoinrsはNYもベースにしているというし、目聡い耳聡いNY市民の皆さんに響くものもあるかもしれないわ。

『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』は特に、アルバム『BADモード』リリース時に英語圏レビューで最も評価が高かった印象なので、レーベルもこの曲に関しては日本以外の国でのプロモーションに力を入れてくるかもしれない。暫くは海外発信のSNS情報も要注意だね。


それとは別に、国内では(に限らないけど)ちょっとした懸念も。Spotify限定っていう点ね。どうもそのせいか、ファン以外にリーチしていないような?? SONYがSpotifyと提携してるからアマプラやYouTubeやApple Musicよりも優先されるのはわかるんだが、そのせいでバズり方がみみっちくなるのは本末転倒なような。タイアップとの結び付きの強調も少ないし。

ただ、海外プロモーションではそこがプラスになっている可能性もあるわね。単なるUTADA HIKARUの名前だけだと取れなかった枠と予算が、「Spotify自体の宣伝」に組み込まれる形になれば取れるようになるということ。それに便乗して(?)UTADA HIKARUも宣伝して貰える。そこらへんも考えるとやっぱり今回は日本以外のプロモーションからスタートということか。

サブスクの限定物ってアニメ観てるとほんと残念な感じが多くって。「サマータイムレンダ」面白いのに、とかジョジョ第6部公式のプロモーションすんごい熱心なのに、とか、兎に角盛り上がるのが一部の視聴者に限定されている感じがしてすんごく勿体ない。時間差があってもいいから、のちのち他のサブスクでも解禁した方がいいよね。(ぼちぼちちらほらそういうケースも多くなってきたかな)

そういうのを横目で見てると、音楽でもスタートはSpotify限定でも、のちのち他のサブスク、YouTubeやら何やらに解禁していくのがいいのではないかと。その際にいよいよ横長の『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー Live At Sea Paradise』がリリースされて盛り上がるのであれば、この組み立ても素晴らしかったということになるかなと思います。この曲はここからですよここから。

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