「UTADA UNITED 2006」でのHikkiの歌唱の特徴と調子についての記述を、CDのヴァージョンと比較しつつ羅列してみました。激しくネタバレ(セットリスト全部開示)なので、閲覧の際にはご注意くださいませ。
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この企画の意図ですが。単純に、あなたの耳に届いた歌唱に芳しくない印象が残ったからといって、それがすぐさま「喉の不調」に原因を求めてよいのかどうか、という疑問がわいたからです。もしかしたらそれは意図された改変であって喉の不調とは関係ないかもしれないし、それどころか、ちゃんとあなたの望むとおりに歌っているのに会場の音響の不調でそれがあなたの耳にまでちゃんと届かなかっただけのかもしれません。筆者はこれまで3つの公演を観たので、それらについては違いを比較し、ある程度何が私の耳に届く歌の印象を左右していたのかを分析することができます。その妥当性や真偽に異論が出るだろうことはもちろんでしょうが、とにかく複数公演観ることでわかってくることもあったということです。とはいうものの、原因が何であっても、結局はあなたの耳に届いた音が総てです。その評価を変える必要はありません。ただ、その評価の原因に言及する段階に入った場合、そこに事実認識に関する誤謬が紛れ込む可能性がある、そこの部分を整理したい、という意図で、このエントリを書き上げました。その点踏まえて頂ければ幸いです。それでは、以下、どうぞ。
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予めお断りしておきます。ここで述べる内容は、あくまで「どこがどう違うか」及び「意図的か否か(つまり声の調子によるものかライヴアレンジなのか)」といった“事実”の解明にスポットを当てています。どちらのヴァージョンがよりよいか、という“評価”については、(できるだけ)脇においておくこととします。ご了承ください。
また、完全版ではありません。今回筆者が思い出した点についての羅列です。また後日補足することもあるだろうし、訂正することもあるかと思います。鵜呑みにせず「i_にはこうきこえたんだな~」くらいに気楽に捉えておいてくれると助かります。
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筆者が見た公演は静岡初日&2日目とさいたま初日、の合計3日。これをもとに分析します。
「Passion」: 前半が「~after the battle~」、後半が「~single version~」という(筆者にとって)夢のような構成。当然、前半はあのCDできけるゆったりとした歌唱、後半は激しさとリズム感を増した歌い方でした。3回とも、声が出てないところは特別ありまえせんでした。最後の「My Feel My Life My Fears, My Lies~♪」の前の高音の「Hu~~u~~~♪」の前に声の伸びが足りない、ということはありましたが。
「This Is Love」: 観た3度とも、2006年6月16日金曜日の「ミュージック・ステーション」でみせた歌唱と大体同レベルだったように思います。若干全体的にフラット気味でした。音程に厳しいひとは、ここで不満があったかもしれませんね。メロディ自体は、CDと、あるいはMステとほぼ同じでした。
「traveling」: この曲は、全体をとおしてよく歌えていたと思います。静岡初日は、声自体に元気がなかった、とはいえました。静岡2日目は問題なし、さいたま初日は、その中間くらいかな。歌唱のアレンジは、DVD「ヒカルの5」と似たようなものだったかと。観客席にマイクを向ける場面も見られたので、その部分をさして「歌っていない」と不満をもたれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
「Movin’On Without You on without you」: ヴァースの低音部が課題の楽曲ですが、「ヒカルの5」最終日を見たときより寧ろその点は改善されていたように感じました。えらい難易度の高い楽曲ですが、声の張り以外、特に音程面ではさほど乱れはなかったように思います。静岡1、さいたま1では「Nothing you can stop me Nothing's gonna stop me, only you can stop me~♪」の部分のミエの切り方が少々迫力不足に感じました。静岡2では問題なかったように感じました(CDと大体同等だと感じました)。
以上ここまで4曲は、スタジオヴァージョンとさほどメロディを変えることなく歌っていたように思いました。ただ、僕自身、CDヴァージョンにそんなに拘っていないので、結構聞き落としているかもしれないことはご注意をば。
むしろ、ここから先の楽曲が問題かと思います、不平不満が出るかどうかについては。引き続いて参りましょう。
「SAKURAドロップス」: 吐息の効果音をバックに、Hikkiが単独アカペラで歌いだす楽曲です。静岡1埼玉1では、半音以上下がっていました。楽器陣が挿入された瞬間ずっこけたのが思い出されます(T.T) 静岡2では若干フラット気味になりつつも、綺麗にまとめていましたので、この曲の出だしは、彼女のその日の調子をはかるバロメータになるのではないでしょうか。普通アカペラで始めるときは、周囲の楽器の人に最初の音を一音出してもらって確かめてから入るものですが、3公演とも私が見た限りなかったです。絶対音感のない彼女が吐息のSEのみではじめるのはリスキーだと思います。ただ、楽器が入ってからは高音部まで含めてしっかり歌えていたので(特に静岡2)、イアーモニターで最初の音をちゃんと指示する、とかすればすぐに改善できることではないかと。それとも、半音下げで始めようという意図があるのかなぁ・・・。
「FINAL DISTANCE」: まさかライヴで聴けるとは思ってませんでした。楽曲の性格上、非常にCDヴァージョンに忠実に歌っていましたが、ところどころ長音部では声の伸びが足りないように感じました。(静岡2ではかなりよかったですが) ただし、音程を変える場面は、見当たらなかったです。スキャット(をうをうをー、とかあそこらへん)は、埼玉1ではちょっと簡略化していたかもですが、記憶が定かではありません。歌詞のあるところで大きく変えてた場面はなかった、ということです。
「First Love」: 前曲と同じく、CDに忠実に歌う楽曲です。比較的容易な歌ですし、「だはーっ」も、僕が聞いた会場ではちゃんと歌えてましたですよ。ただ、忠実度では「ヒカルの5」のほうが上だったかな。
このバラード3連発で不満をもったひとが多いのかと思ったのですが、こうやって思い出してみると、結構ちゃんと歌えてたように思います。結局、最初の「SAKURAドロップス」の歌いだしのずっこけブリのインパクトが全体の印象を左右しちゃってる、ってだけかもしれません。続いてはUtaDAパートですね。
「Devil Inside」: 泣く子も黙る「ニューヨーク・ショウケース・ギグ・ヴァージョン」です。(略してNYCSCGVer.ね) 映像・演奏とも、ライヴでしか観れない・聴けないスペシャルなヴァージョンなので、UtaDAファンはライヴに行かない手はないですね。もしかしたら、ここでのヴァース部分の「They don't know how I burn~♪」のところ、音をはずしているようにカンチガイされた方もいらっしゃるかもしれませんが、NYCSCGの時点で、あそこで音を下げて歌うようになってました。すなわち、声の調子云々で変えたのではなく、元々こういうメロディなんです。お間違えなきよう。サビの最高音部で声がカスれることが何度かありましたが、それ以外は問題なかったです。あの最高音を期待した人には、物足りない歌唱だったかもしれません。(この曲で掛け合いやりたいんだけどなぁ。@余談)
「Kremlin Dusk」&「You Make Me Want To Be A Man」: この2曲については、突っ込みどころ満載すぎるので、省略します。(苦笑) というのも、今のHikkiの実力だと、たとえ絶好調時でも、この2曲をライヴで歌い切るのはムリだからです。特に「YMMWTBAM」のサビのシメのシャウトは、音程的には無理ではないものの、あのアグレッシヴなトーンのままで連発したら喉が完全にやられます。逆に、この2曲をライヴで完全再現できたなら「現役最高のメタル・シンガー」である、と認定してよいでしょう。それくらいに困難な楽曲です。ぶっちゃけ、単純に選曲ミスですね。(あくまで、「歌いこなすため」には、です。僕個人はUtaDAからこの3曲を選んでくれたことに関しては絶賛以外の言葉を彼女に贈る気はありません) ですので、この2曲でのパフォーマンスについて不満をもたれた方には「ごめんなさい」と平謝りするしかないです。ごめんなさいm(_ _)m
・・・とはいっても、UtaDAの楽曲なんて会場のうちの1割くらいしか反応してなかったので、そんなに不満が多いとは思えないんだけどなぁ・・・まぁいいや、次は生楽器セクションです。歌にアラがあった場合、最も突っ込まれる場面ですね。
「Be My Last」: これも「Devil Inside」同様、いやそれ以上に“ライヴでは大幅にCDと違うラインを歌う楽曲”です。その程度は全楽曲の中でも一番です。ここでの歌メロは、2005年10月28日フジTV系列で放送された「僕らの音楽2」のヴァージョン、および、2005年11月11日テレビ朝日系列で放送された「ミュージック・ステーション」での歌唱がベースになっています。(それぞれ、ttp://www.youtube.com/watch?v=VCsfp4V0A_4/ttp://www.youtube.com/watch?v=htRrB7fbMcM) 特にサビは別モノといえるくらい変わっています。ヴァースの部分はMステっぽく、サビの部分は僕らの音楽2っぽい、そういうメロディの組み合わせ方だったように思います。静岡2では、全く問題ありませんでした(CDやTV以上でした)。一方で埼玉1では、サビのメロディを下げており、「僕らの音楽2」できけるような飛翔感は損なわれていたかもしれません。ちょっとジャズっぽいフィーリングともいえたかな。僕が聴いた感じでは、この日(埼玉1)のサウンドチェックの時点で「のどに負担がかかるから、下のメロディに変えよう」と決めていたのでは、という感触と、歌いながら喉と相談してライヴの途中で「こっちにしよう」と咄嗟に決めたのでは、という感触と、半々でした。どっちだったかははかりかねます。いずれにせよ、上記二つのテレビ・ヴァージョン両方を聴いていないと、そのCDとのあまりの差に面食らってしまったことでしょうね。とにかく、繰り返しますが、静岡2日目のは、水準を越えた出来(CDやTV以上)だったと思います。
「誰かの願いが叶うころ」: BMLに字数を使いすぎたので(汗)、この曲は一点に絞っておきましょう。サビの「わがままが増えてゆくよ~♪」の部分です。3公演とも、同じ変え方をしていました。つまり、音をハズしたのではなく、わざとこう歌っている、ということなのでしょう。CDと比べて歌いやすいからなのか、あとから考えてこっちのメロディのほうが好きになったから変えたのか、変えた動機は定かではないですが、比較的声の出ていた静岡2でもこう歌っていたので、声の調子云々という理由ではなさそうです。純粋に、これがライヴ・ヴァージョンなのでしょうね。(なお、Mステで歌ったヤツはモニターがぶっこわれてたようなので、参考になりません。てことでリンクもなしw)
「COLORS」: 3回とも問題なかったと思います。ベースとなっているのは「20代はイケイケ!」のバージョンですが、更にそれ以上に抑揚とスケール感があり、声の伸びも申し分なしだったかと。もちろん、欲を言えばキリがありませんが、あんまりこの曲でのパフォーマンスに不満の声は出ていないですし、これくらいでいいでしょうか。
・・・ということで、あれ?一番文句が出そうなこの生楽器パートですが、突っ込むほどのところはなかったような・・・。私のきいた3日間が結構無難だった、ということなのかなぁ。どうも、聞き慣れない「BML」のヴォーカル・ラインに戸惑っただけのようにも思いますが、僕が聴いてない公演については、わかるはずもないのでなんともいえません。ここから先は盛り上がるパートですね。
「Can You Keep A Secret?」: 出だしのアカペラの部分で「おとなしくなれない Can You Keep A Secret?」のところで、「Secret~♪」の部分を下げて歌っていますが、これは3度ともそうでした。たぶん、声の調子に関係なく、「シックに」歌いたかったんじゃないのかな。この場面では、アカペラで始まりますが、ちゃんとコードがバックで鳴ってますので、音をはずすことも(3回では)ありませんでした。桜もちゃんとコード鳴らせばいいのに・・・と考えるのは素人の浅はかさなのかなぁ。
「Addicted To You」: 難易度抜群の楽曲ですが、3回ともほとんど問題なかったですね。なぜかこの曲はちゃんと歌いきってくれますw ボヘサマのときからですから、歌い慣れているのかなぁ。不思議だ。高音が出なくても、リズム感さえ失わなければ歌いきれる、ってとこなんかなぁ。
「Wait & See ~リスク~」: キーが高すぎるなら下げてもいいよ、と歌っているこの曲に野暮なことはいいづらいです。(笑) これも曲自体はちゃんと歌えてましたが、要所をしめるハイトーンは出てなかったので、それを期待していった向きには不満だったかもしれません。ほかは、ちゃんと歌えてましたよ~。歌詞は間違えていた気がしますがw
「Letters」: あれ? ごめんなさい、なぜかこの曲については3日間ともあんまり記憶にないです。後日何か思い出したら書きますね~。
「Keep Tryin’」: 「どんなときでも価値が 変わらないのはただあなた」の部分の「あなた~♪」の高音を出さなかった(次すぐ歌いださなきゃいけないからね)以外は、こんなに難しい曲なのに、ちゃんと歌えてた気がします・・・なぜだ。(笑)<そこは疑わなくてええやんw
続いてはアンコールです。
「Automatic」: まったく問題なし。以上!(笑)
「光」: うーむ、なぜなんでしょう、もっともハイトーンを連発する曲のひとつなんですが、ばっちり歌えていたように思います。もしかしたら、半音、もしくは1音下げていたかもしれませんが、僕には音感がないので(涙)、正確なところはわかりません。
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駆け足気味(特に後半は(汗))でしたが、こんな感じです。こうやってまとめてみると、実は案外歌唱がダメな箇所って少ない気がしました。むしろ、大きくはずした場面が印象に残りすぎたことと、MCで披露した元気のない掠れた声に驚いた、という面が大きいのではないかと思われます。あと、(さいたま2日目などで)不評だ、という楽曲ほど「メロディ自体がライヴ・リアレンジされている」のも特徴ですね。3日間見たので、「声の不調で変えたわけではない」パートがどこか僕にはよくわかるわけですが、一度しか見てない人の場合、ネガティヴに捉えても仕方がないかな。
どうも、「SAKURAドロップス」の出だしと「Be My Last」のサビメロ、という2点を無難にまとめるだけで、ずいぶんと全体の印象が変わるのではないかと思われます。両者とも、新しいパートのアタマの楽曲なので、その印象に引っ張られてしまうのではないかと。その2点を改善した上で観客のみんなからどういう不満があがってくるのか、それがちょっと興味ありますね。UtaDAの3曲についてはお客さんが曲を知らないので評価の対象外でしょう。知らない曲・英語の曲でも圧倒できるくらいになれれば別ですが、今はそこまで行っていません。尤も、新潟2日目や埼玉2日目は、そういう問題以前に声自体が出ていなかったようではありますが・・・。
後日何か追記するかもしれません。その場合は、BBS1或いはココのコメント欄で告知したいと思います~。以上!
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