無意識日記
宇多田光 word:i_
 



こちらは、何度も話しているように、EVAQにシンプルなカタルシスを求めていた。新曲ではなく、パクチーの歌でもなくBeautiful Worldのリミックスを予想・期待していたのは序破のわかりやすい路線のまま行って欲しかったからだ。そして、御覧のように見事期待を裏切られた。予想を裏切り期待に応えるのが宇多田ヒカルの真骨頂、と最初に言った人は誰だったか、よく言ったものだが、今回ばかりは期待をまるごと裏切られた。なのに桜流し。くわっ。今の今までこんなに期待を裏切られて嬉しい事はなかった。予想を裏切り期待も裏切り、それでもファンを熱狂させる宇多田ヒカル。もう無敵と言っていい。

お陰で私はEVAQを肯定的に捉える事が出来ている。桜流しを生んでくれたから…では身も蓋もないが、そもそも元々90年代EVAのテイストを楽しんでいた人間なので、Qに対しては「EVAらしいね」と一言言っておけば丸く収まる。簡単なものだ。なので私のQに対する評価は是及び賛であると思って貰って構わない。

しかし、本当にこれでよかったのか?? EVAに期待した「次世代アニメの牽引車」の役割を、Qは放棄しているようにも思える。初心者にこれを見せたいとは思わないからだ。もっとどんどん肥大化していって欲しかった…宇多田ヒカルは期待を裏切っても尚聴衆を、というか私を満足させたが、Qに作品としてだけではなく社会現象としても期待していた向きからすれば、作品の中身に対しては是且つ賛でも、外との関係においてはやはりまだ未練を感じる。ゴン中山の引退会見みたいな文章並べちゃったけど。

自分の本音がどこにあるかよくわからない。EVAとの付き合いは、ある意味宇多田ヒカルより長い訳でな。総時間だと全く話にならないが。それに対して、「桜流しを生む触媒になってくれてありがとう。おつかれさま!」と言い放ちたいのか何なのか。それで話を終わらせる事も出来る。以後はQの話は挿話的となり、桜流し主体に私の指先は推移するだろう。それでいいのか。何か違う気がする。

まず、人間活動中であるにもかかわらず新曲を書き下ろした光の気合いと思い入れに対しての同調が薄い。光がEVAを好きだから書いたのだ。主役はEVAである。私の方は、勝手に桜流しと宇多田ヒカルを主人公に据えてしまっている。それは、結局近影を晒さなかった光の態度にそぐわないのではないか。EVAを尊重する事が、この作曲の真髄に近付く為の道ではないか。そういう風にも考える。迷っている。果たして、EVAQを追求・追及する事が光への、桜流しへの良質なアプローチたり得るだろうか。まだまだ答は出そうにない。

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EVAQの作風は確信的なものであって、序破からの流れを逸脱するものではないだろう事は前回指摘した通り。シンプルに「序破急」の原則に則ったと言える。更に副題は"Quickening(胎動、蘇生、又は"急かす事")"なのだから、看板に偽りなしである。問題は、それでよかったのかという事だ。これは大きな賭けである。

EVAQの動員ロケットスタートは、即ちEVA破の評価そのものであった筈だ。この3年で、序破間の2年にも増してEVAの影響力は肥大化した。ロケットスタートがあまりにも"急"だった為、当初は年間興業収入1位も可能かという飛ばし記事まで出ていたが、勿論そんな事はなく二週目三週目と動員は急降下し、序々に、いや徐々に落ち着いてくるだろう。

懸念はつまり、次作:||の初動に影響しはしないかという点だ。幾ら次に傑作を成しても、観て貰えなければ仕方がない。次回予告すら目眩ましの為に用いる制作陣であるから、何か対策を考えているのかもしれないが、Qに対する賛否両論が定着してしまった後ではどうしようもないかもしれない。もっといえば、果たしてQを観た人間が"続きが気になる"と思ってくれているかどうか。余りに難解すぎてその気も失せるという事になっていやしないか。次の週に次回がある訳ではなく、少なくとも1年は後になるだろう。ひょっとしたら、元々一挙上映予定だったのだから、もっと早い段階で:||が登場する? それとも物語に合わせて3年後の2015年まで引っ張る? そういった戦略性なしでQを語る事は難しい。少なくとも、単体で評価するような体裁の作品ではない。

この作風に、桜流しがどれだけ"お付き合い"しているとみるべきか。前段から述べているように、聴き手に優しい/易しい曲ではない。かなり突き放しにかかっている曲だ。だからといってBe My Lastほどの荒々しさも感じない。ここらへんの言葉遣いは難しい。もう少し整理してから語る事にしよう。

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