無意識日記
宇多田光 word:i_
 



光の目撃情報ツイートがあった様で。東北でボランティアをしてる方、他人の空似なのか本人なのか知る由もないが、まぁだとしたららしいなと。

前も書いたように、ボランティアなんて光のワガママである。もし復興に貢献したいのならチケット料金が5万円位する復興支援コンサートを武道館でやれば一夜にして億単位の金が集まる。そういう社会的な力量を持った人間がひとつひとつ瓦礫の除去なんてしてるのは力の出し惜しみだし、自己満足だろう。

とまぁ予防線だけはっとくわ。勿論私がそんな"正論"になんか賛同する筈もなく。いや本当に復興支援コンサートやったらそりゃ5万円でも払って見に行かさせてもらいますけども。光はそんな風にはしないだろうからね。既に自腹で100万$寄付してんだし。親から譲り受けた資産でもない正真正銘自力で稼いだお金で。

何が言いたいかというと、みんなが書きにくい事は私が書くという事だ。家族も友人も住み慣れた街並みも総て流された人の傍を通りながらだと、ボランティアに参加できてささやかな幸せを感じているとしてもなかなか口に出し難いだろうし、そういう時間の使い方を"充実している"だなんて言うのは生活を取り戻そうと必死になっている人たちからみれば"気楽なもんだ、あんたにゃ帰れる家があるんだろう"みたいな感じかもしれない。彼らから感謝されよう、なんて思うのは難しいし、でもやっぱり遠くから手伝いにきてくれてる人が居たら嬉しいだろうし。結構感情的には複雑である。いや、ひとりひとりが一瞬々々に感じてる事はシンプルなんだけどね。感情のパースペクティヴがややこしいというか。私の文章も迷走している。

一言で言えば、私羨ましいんだろうなぁ。前に宇多田ヒカルってあんまり羨ましがられない、っていう話をした。「ババア、結婚してくれ!」と日本中の男性から(多分、女性からも)声を掛けられるが、「宇多田ヒカルみたいになりたい」と言うのは、歌手を目指すほんの少数の人間だけである。安室や浜崎みたいなカリスマではなかった。寧ろ、コアなファンがする事といえば光自身がくまちゃん好き過ぎてギガントに乗り込んでしまったように、ヒカルに対して同化したいという願望が強い。羨んで見上げるより、ひとつになりたい、一体化したいというような。その感情自体を抽象するのがくまちゃんで、っていう話は昔さんざしたな。

今の光は、東北かどうかはともかく泥だらけになって泥のように眠る日々を送っている。具体的な行動が何であるかは兎も角、それを聞いて私は「えらいなぁ」という感情より「いいなぁ」という感情の方が遥かに先に来た。羨望というより、もしかしたら嫉妬に近いかもしれない。多分、今の光は、自分からはそうは口に出して言わないだろうが、相当に幸せを感じていると思う。人間活動宣言は8月で、震災は翌年3月だったが、それの有無と関係なく、光は今充実した時を過ごしていた事だろう。羨みや妬みを浴びる生き方、それが人間活動の本質だとしたら、私は羨み妬みながらも光の幸せを感じて幸せになれる。やっぱり複雑な感情のパースペクティヴだなこりゃ。

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EXODUSの曲を聴いていると相変わらずいちばん肌に合う方向性のアルバムはこれだな~と再確認するとともに、"しあわせ"な時期にこれを作っていたらどうなっていただろう、と思う。

『今日はめっちゃ疲れてめっちゃ汚れたけどあったかいシャワーが浴びれて幸せ』という一言と『コートを脱いで中へ入ろう 始まりも終わりもない 今日という日を素直に生きたい』というテイク5の一節がシンクロする。『どんな自分が幸せです』、そう問われた時にこう答えるのだろうか。

21歳の時と今では感じる事も違うだろう。サウンドのスケール感も格段にアップした。それでも尚、光の作風の変遷は、トレイスのしようがない。前回のエントリーのテーマともかぶるのだが、こと作曲観においては、誰の背中も追ってないし、また誰も背中を追ってこない。ただひたすらこの宇宙が曲ごとに広がっていくだけだ。

曲作りとプロデュースにおいて、殆ど総て自らの力で何とかなると自信を深めたのがEXODUSだったと思っている。裏を返せば、この時期は極力誰の力も借りることなく独力で世界を作り込んでいたという事だ。本当にひとりだったのである。

今光の感じている"幸せ"に則れば、EXODUSのような作品は生まれないかもしれない。いや、音楽はいつも今を通り過ぎていくものであって、このようなたらればは野暮に過ぎるか。

EXODUSのもつ独特の肌触りは、また光が自力を証明したいと思った時に現れるだろう。それがまた、ひとりであることや"幸せ"からの距離を感じさせる事を強いるとすれば少しやるせなくはあるのだが。

今度はそういうサウンドを日本語でやってみても面白いかもね~。私と同じように感じる人がどれ位いらっさるか、それがわかるかもしれないからね。

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