山間の土地柄ながら、会津の食文化には海産物が豊富に取り入れられている。それは、阿賀野川の水運のおかげだ。北前船で北海道や東北、北陸や関西の食材や食文化が新潟に伝播し、それが阿賀野川を遡って会津に至る。当地の郷土の味には、どこか外地のテイストが漂うのは、そんな流通背景のおかげなのだろう。
同じ会津地方でも地域ごとに味付けに差があり、南会津地方の中心である会津田島では、郷土料理のこづゆが相当なあっさり味。いただいた「祇園会館」はその名の通り、田島の祭事である祇園祭りの山車を展示した施設である。案内人によると、祭りの名からして田島は京都と交易があったとか。京風の味付けもその所以らしく、ニンジンにサトイモ、わらづとで作ったという特産のつと豆腐に、海産物ダシのほのかな旨味がはかないほどだ。
つゆじのダシの貝柱も煮干しも、かつては新潟から阿賀野川の水運で運ばれていた。山椒漬けのニシンも同様、かつて北海道の江差や松前から北前船で運ばれたものだ。それが本郷焼きの鉢で、山椒と漬けられた出合いもの。半生で燻製香漂う身に、昼から「栄川」が欲しくなる会津の名アテである。
山間ながらローカル魚を多用した品々に、会津から全国各所への繋がりを感じる。