日本一の山・富士山は、高さもさることながら、そのフォルムも日本一の人気の源に思える。末広がりのなだらかな稜線に、てっぺん付近は雪の裾をギザギザに。幼稚園児でも、書けばそれと分かるシンプルなアイコンだから、老若男女を問わず愛される、ニッポンのシンボルなのだろう。
それだけに御当地に足を踏み入れると、みやげ物も軽食屋も食事処も、所狭しと富士山グッズやモチーフにした商品であふれ返っている。富士山駅の改札を出てすぐ右のみやげ屋で、富士山ラベルのカップ酒と、アテに富士山型のおこげせんべいを仕込み、すぐ向かいで富士山たい焼きをテイクアウト。まだ最寄り駅にして、すでに富士山どっぷりな気分に浸れてしまう。
そして早めの夕食も、地下のフードコートで富士山ゆかりのグルメといきたい。麺もの、洋食、スイーツの店それぞれで、オリジナル富士山メニューが用意され、山型ライスの富士山カレーのようなビジュアル系、ご当地野菜や銘柄豚の富士峰ポーク入り富士山ほうとうのような正当派など、どこも富士山のアレンジ方法に趣向を凝らしている様子だ。
多彩な中から選んだのは、ネーミングがピンときたラーメン「キングオブ富士山」。麺ショップの「天下GO麺」の人気メニューで、予想通り具材が山盛りのが登場。鋭角的な頂きは北斎の赤富士というか、二郎系のビジュアルを思わせる。マシマシなのはモヤシのみで、ゴマ油の香ばしさのおかげもあり、頂上から五合目までシャクシャク一気に「下山」。スープはシンプルな醤油スープ、細い縮れ麺も軽めなので、見た目の割にはサラッと食べられる。麺が少々硬めなのは、御当地吉田うどんの流儀か、モヤシとじっくり格闘しても伸びないための工夫なのだろうか。
にしても富士山のフォルム、考えてみたらおむすびとか大盛り丼にも、よく似ている気がする。聞けば明日訪れる五合目のレストハウスにも、多彩で個性的な富士山グルメが、登山者を待ち受けているとか。富士山グルメが当地の登山者に人気なのは、腹ペコのところで出会う食欲をそそるアイコンのおかげかも知れない。(130610)