ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

一献一品出合い酒@松本

2013年06月14日 | ◆一献一品出合い酒

馬肉料理の店「みよし」にて、御湖鶴超辛口×馬モツ煮込み。信州ならではの山の味を、出合いの妙で楽しむなら、湖国諏訪の地酒に食文化として根付いたローカルミートの、このコンビが似合う。

長い腸をたぐりながら洗うことから、「おたぐり」の名が付いた煮込みは、信州の白味噌仕立て。シャキシャキ、トロリとくせがないモツに、ほんのり甘い味噌仕立てが優しい。超辛口の鋭角な切れ味の酒をチビリとなめると、内臓系のやや重い後味を一刀両断。味覚が新たにさらに箸が伸びる。馬力がしっかりつくかつての労働食を、スキッとスバっと進める一期一会。

高タンパク低カロリーのヘルシーなアテに、胃も軽くグラスが進む。薬味の唐辛子味噌がさらに食欲をあおり、ヘルシーを免罪符に霜降り、ヅケ丼とさらなる滋養強壮に弾みがつくこと。一献一品の小さな酒宴、今宵も天下泰平なり。(130614)


ローカルミートでスタミナごはん…松本 『みよし』の、馬肉料理

2013年06月14日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん

レストランのメニューにある「ヘルシー」の文字に、女性は敏感だ。低カロリー低脂肪、コラーゲンや食物繊維が豊富などの能書き。それは健康への配慮に加え、遠慮なく食べても「『ヘルシー』だから」とのエクスキューズ、免罪符的な解釈もあるようだ。肉食女子にとって、そこを追求するなら馬肉がいちばん。不飽和脂肪酸の含有量が多く、カロリーは鶏肉並み。さらに鉄分やミネラル、グリコーゲンが豊富で貧血、便秘、冷え性にも効果が。「免罪符」のみならず体質改善にも役立つ、優れものの食肉といえる。

松本では古くから、馬肉は地元の人たち常食のローカルミートである。冬の寒さが厳しいため、体を温める効果が好まれたともいわれる。市街には専門店も多く、松本駅近くの「みよし」は入口すぐにある重厚な帳場が、歴史を物語る老舗だ。一品目の馬串は脂か澄んだスープのタテガミ、柔らかく肉汁たっぷりのカルビ、シャキシャキで臭みのないハツ、味がグッと濃いあばらと、各部位の個性がよく分かる。諏訪の酒「御湖鶴」は超辛口で、力強い肉の風味をスパッと切り替え、食欲が増す。

そして馬肉の真価を味わうならやはり、生肉とモツに限る。赤身ユッケは大振りに切った肉が柔らかく、あっさりと食べやすい。味噌とおろしリンゴをからめる、信州的味付けが地元テイストで、ニンニクチップをのせれば鼻息が荒くなる力強さか。長い腸をたぐりながら下処理することから、「おたぐり」と呼ばれる煮込みは、外はシャキシャキとやや弾力があり、内側はトロトロに柔らか。信州白味噌の甘さがよく染みており、こちらは荒ぶる気性が穏やかに落ち着く優しさである。

ちなみに松本の馬肉が全国区になったのは、昭和40年代の国鉄のキャンペーン「ディスカバージャパン」に端を発する観光ブームという。女性旅行者に馬刺しが注目され、女性誌の旅特集でも取り上げられるようになったとか。松本のヘルシーな馬肉料理に再び女性に注目してもらうには、かつての「アンノン族」的女子、今でいうなら「旅ガール」に期待したいところだ。(130614)