豆腐は究極の、和製ファーストフードだ。冷蔵庫から出してペリッと開け、小鉢によそえば準備完了。思い立ってから口に入るまで1分少々と、ビッグマックのキャンペーンに充分張り合える。忙しい時の簡単な食事、遅い時間の夜食にはありがたく、腹にたまるのにもたれずヘルシーなのは、市井のファーストフードにない優れものだ。
そんな感覚で食べるから、味付けは醤油などをかけ回すストレートがほとんど。ネギを刻んだり生姜をおろしたりしたら、1分の壁を超えて「料理」の範疇になるからだ。それだけに、かけ回す調味料へのこだわりが、豆腐の味わいを豊かにする楽しみだ。
豆腐を小鉢によそったら、冷蔵庫の扉ポケットから、ボトルキープした調味料をその時の気分でセレクトする。とんがった辛味で覚醒するなら、伊豆大島の青唐辛子醤油。刺激的な香気でスタミナつけるなら、岡山の黄ニラ醤油。マイルドで奥行きある辛味で和むなら、幻の石垣島ラー油。これらハイエンド調味料のおかげで、急場のファーストフードが、素敵なローカル豆腐に変身するのである。