暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

つめたい臓器

2011-06-06 | -2011
消しゴムがずいぶんと磨り減ってしまった
外から削れていくはずが
内側から内側から削れていった
まだ四肢は残っている、
まだ内臓も動いている、
なくなってしまったものはもう思い出せない

ずいぶんと磨り減ってしまった
神経が悲鳴をあげることもなくなった
痛いと感じるものはなんだったのか
肌に触れると指先からしか反応はなく
いびつな曲線を撫でると知らない場所がひくりと震える
なくなってしまったのだからもう思い出せない

許すたびに一つ失った
許可を得るたび
一つずつ欲しいものはなくなって
だけれど何をも許さなくなったとしたら
何もかも得られなくなることもわかっている
なくなることがないのなら思い出すこともない

一つずつ、消しゴムを使って
丹念に丹念に消していく
新たな線を書き足す前に
丹念に丹念に消していく
だから何も得られるわけもないのに
私は見返りを求めておのれを削る

書き足すための鉛筆を持たず
いいよと言えば文字を消し
肉体に皮膚が張っただけの肉人形へ変わりつつある
それでも私はまだ笑えるのだ
内側のどこかで反響が聞こえても
それでも私はまだ

内臓の稼動音を聞いている
つめたい臓器のうごめきを
消しゴムはずいぶんと磨り減ってしまった
五体満足のその先が見えず
私こそが許されたいと願っている
なくなったものさえ思い出せないのに

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