死んでいく雛鳥
羽毛もはえそろっていない
無垢な死の向こう側に
濡れそぼった死を見ている
あれはカラスという
さっきぼくが殴った
あれはすぐに死んでしまった
死んでいく暇も残さず
あれがありついていただろう
生きるための糧を得ようとしていたところに
ぼくが殴って殺してしまった
死んでいく雛
おまえはミミズを食べたろうか
ぼくはミミズを食べない
雛も食べないが重要なのは
ぼくがカラスを食べないということ
肌色の雛
こちらを見ているのか
見えているのか
何を思うのか
助けてほしいのか
ぼくはおまえを既に助けた
ぼくにそのつもりはなかった
それでも
ぼくはおまえを既に助けた
事実だ
おまえはぼくを助けなければならない
天秤はもう傾いている
ぼくのほうへ傾いている
頭の二分の一を黒い目で覆う雛
あまりにも小さい
カラスだってあまりにも小さい
ぼくからしたらどちらも同じ
雛の方が小さい
だからおまえは何もできないのか
雛は小さく鳴いた
「助けを求めているようだった」
そんなはずはない
たぶんぼくは敵だ
むきだしの肌を土に傷つけられ
苦痛にのたうち回ることも許されない
それを
ひと思いに踏み潰すのは
それとも
そっとすくいあげて家に連れ帰り
粟玉を食わせて飛び立つ日まで見守るのは
善行の天秤にかけるべき
皿がどんどんと増えていく
どれが当たりかわからないのなら
それらすべてに違いがない
もうぼくの善行は果たされた
カラス
足のねじれた死体
虫や鼠がやってくる
あれを食べてしまう
ぼくの代わりに
ぼくは見下ろす
すぐにでも死んでいきそうな雛
おまえもやがて骨だけになる
「なぜ助けたのかと言いたげな目で」
見ているはずはない
助けた理由
無垢な死は善
捕食者の死は悪
それらがほんとうなのか
どちらともに意味はない
意味はないとわかった
カラスの死は無駄だ
ぼくがいたずらに殺したせい
おまえの死は無駄だ
カラスに食べられはしなかった
不運な摂理がある
どれだけ無駄でも
ちいさなちいさな生き物たち
かれらの餌食になるという
無駄では ない
ただ善悪が無駄にする
ただなんでもないぼく
ぼくという人間
雛を見下ろす
ぼくによって
ぼくにとって無駄になった
おまえは何を考えているのか
わかるはずがない
何かをぼくにもたらせないなら、
そのまま死んでいきなさい
羽毛もはえそろっていない
無垢な死の向こう側に
濡れそぼった死を見ている
あれはカラスという
さっきぼくが殴った
あれはすぐに死んでしまった
死んでいく暇も残さず
あれがありついていただろう
生きるための糧を得ようとしていたところに
ぼくが殴って殺してしまった
死んでいく雛
おまえはミミズを食べたろうか
ぼくはミミズを食べない
雛も食べないが重要なのは
ぼくがカラスを食べないということ
肌色の雛
こちらを見ているのか
見えているのか
何を思うのか
助けてほしいのか
ぼくはおまえを既に助けた
ぼくにそのつもりはなかった
それでも
ぼくはおまえを既に助けた
事実だ
おまえはぼくを助けなければならない
天秤はもう傾いている
ぼくのほうへ傾いている
頭の二分の一を黒い目で覆う雛
あまりにも小さい
カラスだってあまりにも小さい
ぼくからしたらどちらも同じ
雛の方が小さい
だからおまえは何もできないのか
雛は小さく鳴いた
「助けを求めているようだった」
そんなはずはない
たぶんぼくは敵だ
むきだしの肌を土に傷つけられ
苦痛にのたうち回ることも許されない
それを
ひと思いに踏み潰すのは
それとも
そっとすくいあげて家に連れ帰り
粟玉を食わせて飛び立つ日まで見守るのは
善行の天秤にかけるべき
皿がどんどんと増えていく
どれが当たりかわからないのなら
それらすべてに違いがない
もうぼくの善行は果たされた
カラス
足のねじれた死体
虫や鼠がやってくる
あれを食べてしまう
ぼくの代わりに
ぼくは見下ろす
すぐにでも死んでいきそうな雛
おまえもやがて骨だけになる
「なぜ助けたのかと言いたげな目で」
見ているはずはない
助けた理由
無垢な死は善
捕食者の死は悪
それらがほんとうなのか
どちらともに意味はない
意味はないとわかった
カラスの死は無駄だ
ぼくがいたずらに殺したせい
おまえの死は無駄だ
カラスに食べられはしなかった
不運な摂理がある
どれだけ無駄でも
ちいさなちいさな生き物たち
かれらの餌食になるという
無駄では ない
ただ善悪が無駄にする
ただなんでもないぼく
ぼくという人間
雛を見下ろす
ぼくによって
ぼくにとって無駄になった
おまえは何を考えているのか
わかるはずがない
何かをぼくにもたらせないなら、
そのまま死んでいきなさい
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