生まれつき髪の毛が茶色の女子高生が、学校側から黒く染めるように強要されたことを不服として、提訴したそうですね。
女子高生は髪を黒く染めましたが、染めが不十分だとか、黒く染めるまで登校を認めない、とか言われ、不登校になったそうです。
嫌な話です。
これが例えば、白人とのハーフで顔立ちからして白人ぽく、なおかつ髪が茶色いとか、黒人とのハーフで縮れ毛とかだったら、どういう対応をしたのでしょうね。
身体的特徴を理由とした差別であると言わざるを得ません。
日本人と一口に言っても、まるで白人のように色が白く、髪の色が薄い人もいれば、ポリネシア人のような南方系の特徴を持った人もいます。
日本人は人種的には雑種とも言え、多くの人の髪が黒いからと言って、茶色いものを黒くしろなんて、よく言えたものです。
高校生に、白髪になったら染めろ、禿げたら植えろ、とでも言うのでしょうか。
だいたい、髪を染めるのだって、お金がかかります。
その費用を負担しろとでも言うのでしょうか。
もっと言えば、髪を金髪に染めようが、青や紫に染めようが、そんなことはどうでもよろしい。
それはその人の個性、あるいは目印です。
私が最も忌み嫌う、みんな一緒、という幻想の強要でしょうねぇ。
私はなにしろ、みんな、という言葉が嫌いです。
みんなって、誰と誰のことですか。
少なくとも私は、生まれてこの方、みんな、なんていう気色の悪いものに所属したことはありません。
就職してから26年、会議が長引いたとか、調書の締切当日とか、やむを得ざる残業を除き、定時で帰るようにしています。
しかし私が勤める職場、古臭いというか、つい10年ほど前まで、付き合い残業が蔓延していました。
上司が帰らないから残る、あるいは逆に、部下が残っているから残る、みたいな。
上司と部下が牽制しあっていたのでは、永遠に帰れません。
それならいっそ、24時間、毎日職場にいればよいものを。
付き合い残業をしなかった私は、陰に陽に、圧力を受けました。
「付き合い残業しろ」とは建て前上言えませんから、「周りを見ろ」とか、「仕事を増やす」とか言われましたね。
私はそういうことを言われると、根が天邪鬼なので、どんなに仕事を増やされようが、意地になって定時で帰るように努めました。
ていうか、そんなに増やせるわけがないのです。
そんなことをしたら、他の人が暇になります。
暇になっても付き合い残業するやつはするのですから、意味がありません。
幼稚園児じゃあるまいし。
〇〇ちゃんが帰らないなら僕も帰らない、みたいな。
ちょっとおかしな管理職がいて、定時で帰るなら毎日その上司の部屋に出向き、挨拶しろ、と言ってきました。
そこまで言えば、少なくともその管理職が帰るまでは待つだろう、と踏んだようです。
お生憎様、私は言いつけどおり、毎日、怒りの形相でその上司の部屋へ挨拶に行って、定時で帰りました。
それがすっかり時代は変わり、なるべく残業するな、ということになりました。
しかしそれでも、なんとなく、遅くまで頑張っている奴は偉い、みたいな風潮が残っています。
今の私の職場のような、わりと暇な機関で日常的に残業するというのは、よっぽど無能か、あるいは残業代が欲しいだけでしょう。
幸いにして、様々な過労死事件の影響で、職場の文化も変化してきました。
私は時代を先取りしていたのかもしれませんね。
昨夜、「入らずの森」というホラー小説を読みました。
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入らずの森 (祥伝社文庫) |
宇佐美 まこと | |
祥伝社 |
帯の、夜、一人で読んではいけない、という宣伝文句に興味を持ち、購入したものです。
愛媛の山中の過疎の村。
足を怪我してオリンピックへの出場を断念して中学教師になり、あえて田舎の学校を希望して赴任した青年の鬱屈。
サラリーマン生活に嫌気がさし、有機農業へ憧れを抱いてIターンでやってきた初老の夫婦の葛藤。
両親の離婚をきっかけに、東京から祖母の家に身を寄せた不良少女。
そしてなぜか、埼玉県の病院で死の床に着く老婆と介護する娘。
愛媛の寒村をめぐる様々な人々の物語が重層的に語られ、最後にはその関係性が判明する、という構成。
横溝正史を思わせるような因習的な田舎に、わが国らしい、湿った感じが雰囲気を盛り上げます。
森に住む邪悪な生き物。
平家の落人伝説。
この数十年、時折起こる残忍な事件。
和製ホラーらしい道具立てが整っていて、きれいにまとまった小説です。
ただし、決定的な欠陥があります。
怖くないのです。
ホラー小説としては完璧と言えるほどの道具立てと、かちっとまとまった物語が、かえって不気味さを損なわせています。
何が原因なのかなと考えて、たぶん、整いすぎているのだろうな、と思いました。
ホラーは、わけが分からなくてはもちろんダメですが、きれいにまとまっていると、余韻が残らなくて、浅く感じられますから。