ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

名月

2017年10月04日 | 文学

 今宵は中秋の名月。

 首都圏では、きれいなお月様が拝めそうです。
 ススキや団子を用意する暇はありませんが、自宅のベランダから、月見酒としゃれこみたいと思います。

 名月や 池をめぐりて 夜もすがら

 松尾芭蕉の句です。
 月を見ながら池のほとりを散策していたら、夜が明けてしまった、という意でしょうか。

 だとしたら、月の美しさをひたすら称揚する、耽美的かつ、昂揚感が感じられる句ですね。 

芭蕉全句集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
雲英 末雄,佐藤 勝明
KADOKAWA / 角川学芸出版



 一方、同じ松尾芭蕉に、

 俤(おもかげ)や 姥ひとり泣く 月の夜

 という句もあります。 

 一人月を眺めていたら、すぐ近くに、月を眺めながら泣いている老婆がいた、ということで、前の句とはだいぶ趣が異なります。

 月の美しさのみならず、月の儚さ、さらには人の生というものが持つ根源的な儚さを感じさせ、胸に迫ります。

 私が今宵、月を観てどんな感慨にふけるのかは分かりません。

 ただ、来し方を振り返ることはせず、今日のことと明日のことのみ考えたいと思います。

 今日と明日のことだけを考えて暮らす生活。
 それこそが、精神障害の完全な克服の道であるように思います。

 過ぎたことはどうしようもないし、明後日のことは遠すぎてどうなるか予測不能です。

 今日のこと、そしてせいぜい明日のことだけを考えて職業生活を送れるようになりたいと思っています。

 まぁ、月見の酒で仕事のことなど完全に忘れてしまうでしょうけれど。

 
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ふたりの季節

2017年10月04日 | 文学

 昨夜は小池真理子御大の「ふたりの季節」を読みました。
 文庫本で130頁ほどの中編。
 1時間もあれば読み終わる、気楽な作品です。

ふたりの季節 (幻冬舎文庫)
小池 真理子
幻冬舎

 読後感は、なんだかさっぱりしているなぁ、というもの。
 この作者には珍しいかもしれません。
 ドラマティックな展開のない、小品だからかもしれません。

 50代半ばの由香。
 忙しい毎日を送っていますが、短い夏休みをとって、カフェでくつろいでいるところ、偶然、35年ほど前に別れたかつての恋人、拓と再会します。
 物語は、カフェで2人が数時間語り合いながら、2人が青春時代を過ごした1970年代初頭を回顧するという短いものです。

 高校から大学のはじめにかけての2人の恋。
 結婚の約束までしながら、これといった理由もなく、2人は別れてしまいます。

 その後30数年。
 それぞれに結婚し、子供も成人しています。

 会話のなかで、由香は離婚し、拓は妻と死別していることが語られます。

 私は1969年生まれなので、1970年代はじめの風俗というか、時代感覚がよく分かりません。
 物語では当時流行った音楽や映画、小説のことが多く語られますが、私にはもう一つ理解できませんでした。

 カフェでの語り合いを終え、また会おうと、互いのメールアドレスを交換する2人。
 忘れ去られていたはずの過去の恋が、また動き出すのでは、という予感を感じさせて、物語は終わります。

 なんとなく、運命だとか縁だとかの不思議を感じさせる、佳品だったと思います。 

 
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