ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

入らずの森

2017年10月27日 | 文学

 昨夜、「入らずの森」というホラー小説を読みました。

入らずの森 (祥伝社文庫)
宇佐美 まこと
祥伝社

 帯の、夜、一人で読んではいけない、という宣伝文句に興味を持ち、購入したものです。

 愛媛の山中の過疎の村。

 足を怪我してオリンピックへの出場を断念して中学教師になり、あえて田舎の学校を希望して赴任した青年の鬱屈。
 サラリーマン生活に嫌気がさし、有機農業へ憧れを抱いてIターンでやってきた初老の夫婦の葛藤。
 両親の離婚をきっかけに、東京から祖母の家に身を寄せた不良少女。
 そしてなぜか、埼玉県の病院で死の床に着く老婆と介護する娘。

 愛媛の寒村をめぐる様々な人々の物語が重層的に語られ、最後にはその関係性が判明する、という構成。

 横溝正史を思わせるような因習的な田舎に、わが国らしい、湿った感じが雰囲気を盛り上げます。

 森に住む邪悪な生き物。
 平家の落人伝説。
 この数十年、時折起こる残忍な事件。

 和製ホラーらしい道具立てが整っていて、きれいにまとまった小説です。

 ただし、決定的な欠陥があります。

 怖くないのです。

 ホラー小説としては完璧と言えるほどの道具立てと、かちっとまとまった物語が、かえって不気味さを損なわせています。

 何が原因なのかなと考えて、たぶん、整いすぎているのだろうな、と思いました。

 ホラーは、わけが分からなくてはもちろんダメですが、きれいにまとまっていると、余韻が残らなくて、浅く感じられますから。



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