ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

エンド・マーク

2013年05月31日 | その他

 私が愛聴するバンドに、サンタラという気だるげでブルウジーな曲調を得意とする歌い手がいます。
 「バニラ」でスマッシュ・ヒットを飛ばしたとき、私が受けた衝撃は強烈で、きっとわが国を代表する歌い手になると思ったのですが、デビューから10年以上、根強いファンはいますが、なかなか大ヒットには恵まれないようです。



 醒めた曲調が好まれないのでしょうか。
 しかし、必要以上に暑苦しい歌を歌うよりも、現実を生きる多くの人々は醒めているわけですから、もう少し支持されても良さそうなものです。

 サンタラに、「サイモンの季節」という曲があります。
 残念ながら、動画サイトを探したのですが、この曲だけアップされたものは見つからず、ライブのダイジェスト動画に、わずかにみられるだけでした。

 

 その中に、ママが話した「The Strawberry Statement」、あたしたちは映画じゃないから、ラストシ-ンやエンドマークもあり得ないという歌詞があります。

 The Strawberry Statement」とは、わが国では「いちご白書」というタイトルで知られた往年の青春映画です。

Strawberry Statement (1970) [DVD]
クリエーター情報なし
メーカー情報なし

 世界中で学生運動の嵐が吹き荒れた狂乱の政治の季節を生きる米国人学生、サイモンが主人公です。

 団塊の世代の人々は、なぜか、あの狂気じみた時代を、郷愁とわずかな感傷を込めて語りますが、要するに若さのエネルギーを体制への不平不満にぶつけただけの話で、そこには高度な思想も、改革への意志もなく、ちょうど酒やマリファナでひと時の快楽に耽る若者となんら変わりありません。

 それは良いとして、あたし達は映画じゃないから、ラストシーンやエンドマークもあり得ないという歌詞、これは間違いです。

 人は必ず命を失います。

 これがエンド・マークでなくて何なのでしょう。

 仮に魂が不滅で、死後の世界が存在したとしても、現世での生にエンドマークを打たない人間は、100%存在しません。

 そしてまた、死の直前には、ラスト・シーンが必ず存在するはずです。

 私が26歳の時、祖母が亡くなりました。
 その時はなんとも思いませんでしたが、昨年の3月5日、父が亡くなったのは堪えました。

 3月4日に入院先にお見舞いに行った時は、わずかながら意識があり、最後の言葉を聞くことができました。
 私にとっては、これが父のラスト・シーン。

 そして翌日、父ははかなくなってしまいました。
 これがエンド・マーク。

 浅草寺病院の個室から見える、雪がちらつく浅草寺の五重塔があまりにも美しく、悲しみと強烈な痛みを伴って、今も鮮やかに思い起こされます。

 まさしく映画のラストシーンとエンドマークのようでした。

 その後に続いた一連の通夜や葬儀のことは、よく覚えていません。

 火葬場で、親戚どもが握り飯を頬ばっている姿を見て気持ち悪くなり、お茶を飲んだら戻してしまったことだけは、よく覚えています。

 父の死後一か月で体重が5キロ落ち、一年間で24キロ落ちたことは、このブログでもたびたび紹介してきたところです。

 誰もがいつかは死ぬと知っていながら、それが今日や明日のことだとは思わずに呑気に生きているように見えます。
 私自身もそうです。

 「古今和歌集」にみられる存原業平の辞世、

 ついに行く 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思わざりしを

 は、多くの人の実感に近いのではないでしょうか。

新版 古今和歌集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
高田 祐彦
角川学芸出版

 私もいずれラスト・シーンを迎え、ついにはエンド・マークを降ろさなければならない日がきます。
 それは必ずしも近い将来ではないかもしれません。
 しかし、それは必ず訪れます。

 できれば私は、両親や家族に祝福されて始まったファースト・シーンのようなにぎやかなものでなければ良い、と思います。

 死期を悟った象がいつともなく、どこにともなく去って行くように、誰に看取られることもなく、できれば遺体も発見されないまま、もしかしてあの人はどこかで生きているのではないか、という幻想を持たせたまま、どこまでも孤独に、静かに消え去っていけたら、と夢想するのです。

 でも現代社会では難しいでしょうねぇ。

 体中にチューブを通され、延命治療という名の地獄を通過しなければ消え去ることもできないのだとしたら、医学の進歩とは罪なものです。

High&Low
Harry Richman,砂田和俊,田村キョウコ,Peter De Rose,Jo Trent
Palm Beach

 

バニラ (CCCD)
サンタラ,田村キョウコ,砂田和俊,森俊之
エピックレコードジャパン

 にほんブログ村 本ブログ 純文学へ
にほんブログ村


芸術・人文 ブログランキングへ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

入店拒否

2013年05月31日 | 社会・政治

 「五体不満足」で有名な乙武氏が、某飲食店を予約していたところ、行ってみたら車いすに対応できないとかで入店を拒否されたことが、ネット上で問題になっているようです。

五体不満足
乙武 洋匡
講談社



五体不満足 完全版 (講談社文庫)
乙武 洋匡
講談社



 乙武氏がツイッターなどで店名を明らかにして抗議したことがその発端だとか。
 店側もツイッターで謝罪して和解となったようですが、店側は予約の時点で車いすだと教えてくれれば対応できた、と反論し、乙武氏もその点は非を認めているようです。

 ややこしいのは、当事者同士が和解した後、店を誹謗中傷するような書きこみや、逆に身体障害者である乙武氏が明確にその情報を伝えなかったことに非があり、有名人であることに甘えているのではないか、など、乙武氏に非があるとする書き込みが寄せられ、ついには国会でも問題になったとか。

 元々はちょっとした行き違いだったと思われますが、ネット上ではよくあることですが、問題が大きくなってしまったようです。

 近年改善されてきたとはいえ、わが国のバリアフリーはまだ道半ば。
 ちょっとした段差でも、車いすにとっては大きな障害になります。
 これは早急に改善されるべきですが、何事もそうですが、多額なお金を必要とするため、つい後手に回ってしまうというのはよくあることです。

 乙武氏が堂々とその姿をメディアにさらし、様々な発言を行っていることには尊敬の念を覚えます。

 なかなかできることではありません。

 身体障害にしても、精神障害にしても、知的障害にしても、あるいは民族差別や宗教差別にしても、差別される側が行動に出なければ、物事は解決しません。
 健常者やあるいは差別的意識を持った人々が、自ら反省して差別的態度を改めることはほとんど期待できず、社会常識の変化などにより、自覚を促したり、あるいは罰則を設けたりするほかないのが実情です。

 悲しいことですが。

 私は差別的意識は希薄だと思っていますが、それでも知らず知らずのうちに差別的言動を取っている可能性は否定できません。

 今回の一件が、身体障害者だけでなく、あらゆる差別的待遇に甘んじてきた人々の待遇改善につながることを期待します。

 
にほんブログ村


人気ブログランキングへ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

復活

2013年05月31日 | その他

 昨日は死ぬほどだるく、10時半に早退してしまいましたが、これが功を奏したようで、今日は朝から元気です。

 昨日は昼寝を4時間もしたうえ、夜も20時には床につきましたから。

 滋養のある物を食うより、栄養ドリンクを飲むより、薬を飲むより、何しろ睡眠をたっぷり取るのが疲労には有効なようです。

 嘘か真か、肉体的疲労は眠らなくても横になっているだけで大分回復するが、脳の疲労は眠らないと回復しないと聞いたことがあります。
 私のような、脳が疲労しやすい精神障害者にとって、たっぷりの睡眠は死活的に重要というわけです。

 それに今日は金曜日。
 明日明後日はのんびりできます。
 それを思うだけで、元気が出るというものです。

 ただ、明日は午前10時からマンションの理事会なんですよねぇ。
 通常の年であれば、30分もかからないのですが、今年度は8月から12月にかけて大規模修繕があるため、その契約書を交わすために、四苦八苦しています。
 請負業者の住友不動産が契約書の案を何度か提出しているのですが、その都度、条文に矛盾があったり、単純な誤字脱字が多かったり、一言一句チェックしなければならず、理事会は2時間以上かかります。

 もうちょっと住友不動産内部で詰めた物を持ってきて欲しいのですが。

 3日ほど前、契約書(案)がポストに入っており、明日の理事会までに目を通しておいてくれ、との依頼文がついていました。
 今夜か明日の朝、片手に赤鉛筆、片手に電卓を用意してチェックしなければなりません。
 契約に瑕疵があれば、住民から突き上げを喰らうのは住友不動産ではなく、我々理事会ですから。

 嫌な年に理事に当たってしまったものです。

 やれやれ。


にほんブログ村


人気ブログランキングへ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする