●鹿児島県に脱原発知事が誕生したのは衝撃だ 三反園新知事は川内原発を止められるか
東洋経済オンライン 2016年07月14日岡田 広行 :東洋経済 記者
鹿児島県知事選で脱原発を標榜する元テレビ朝日・政治担当キャスターの三反園訓氏が当選したことに、電力業界が大きな衝撃を受けている。鹿児島県内に川内原子力発電所を有する九州電力の株価終値は、知事選翌日の7月11日に前週末比7%安の919円まで下落した。
稼働中の原発では初めて、関西電力の高浜原発3号機が大津地裁の仮処分決定により3月に運転停止に追い込まれた。さらに今回、原発に厳しい姿勢で臨む知事が就任することにより、政府や電力会社の原発再稼働路線に新たなくさびが打ち込まれた。
政策合意文書で「廃炉」を明記
三反園氏は県知事選のマニフェスト(政権公約)で、「熊本地震の影響を考慮し、川内原発を停止して、施設の点検と避難計画の見直しを行う」と表明。立候補を見送った革新系の平良行雄氏との政策合意文書(6月17日付け)では、「両者は知事就任後、原発を廃炉にする方向で可能な限り早く原発に頼らない自然再生エネルギー社会の構築に取り組んでいくことで一致した」と明記するなど、脱原発路線を鮮明にしている。また、「原子力問題検討委員会を県庁内に恒久的に設置する」こともマニフェストに盛り込んでいる。新潟県の技術委員会のように原子力分野の専門家を組織できれば、電力会社へのチェック機能としても大きな影響力を持ちうる。
もっとも、県知事は運転中の原発の停止を命じる権限を持っておらず、あくまでも九電の判断に委ねられる。今後、三反園氏は九電に停止を求めると見られるが、九電が知事の意向を受け入れなければ稼働が続くことになる。
九州電力は「現在までに、三反園氏から川内原発を停止してほしいとの要請は受けていない。原子力発電の必要性についての理解促進や安全確保の取り組みに引き続き努めてまいりたい」(報道グループ)と説明している。
ただ、一定の時間軸で見た場合、原発立地県で脱原発を掲げる知事が登場した意味は大きい。
●鹿児島で脱原発派知事が誕生――川内原発を停止できるか
ブロゴス 週刊金曜日編集部 2016年07月27日(木野千尋・フリー記者、7月15日号)
参院選と同日に投開票された鹿児島県知事選で、脱原発派の無所属新人、三反園訓氏が初当選した。全国で唯一再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)について、選挙中に掲げた「停止して調査、再検証」を実行できるのか注目される。
三反園氏は、「ニュースステーション」政治担当キャスターも務めた元テレビ朝日コメンテーター。再稼働に同意した前現職、伊藤祐一郎氏を8万票以上の大差で制した。当選後、「熊本地震を受けて原発を停止し、活断層も調査すべき。安全性が確保されない原発は動かすべきではない」と述べ、避難計画も不備とし、自然再生エネルギー県の構築を掲げた。
地元の反原発団体幹部が立候補を表明したが、原発停止に加え、原発に関する諸問題を検討する委員会を恒久的に設置するとした政策合意が成立し、告示直前に候補一本化に成功。最大の争点に据えた県政刷新に加え、4月の熊本地震で現実味を帯びた原発事故への不安が追い風となったとみられる。
ただ、この当選を脱原発へのうねりと受け止めるのは早計だ。
選挙戦では、元県議会議長や元自民党県議などが陣営を固め、「保守系無所属」を強調。陣営は「反原発派の支援で勢いに乗った」と認めるが、三反園氏は保守派に配慮し、演説では脱原発政策にはほぼ触れず、当選後も九電への一時停止要請の時期を明言しなかった。ある自民党県連関係者は「地震を受けての調査は理解するが、廃炉とは別の話だ」とにべもない。
野党系県議は「『4選阻止』の反伊藤派が勝っただけ。原発推進派が圧倒する県議会や県職員を相手に、脱原発政策を実行できるのか」と懸念。反原発派の一人も「再稼働反対の泉田裕彦・新潟県知事のような信念を感じない。公約を破れば民意を敵に回すことになる」。川内原発が定期点検のため停止する今秋に最初の正念場を迎えそうだ。
|