昨年の春、福井県で、ジェンダー図書が県の生活学習館から撤去された「焚書坑儒」事件のその後のこと。
撤去本のリストを提出した当事者であるとされる近藤氏本人が、「県が作成した審議会の経過説明文書は嘘である、図書の撤去は自分が依頼した県議の介入によるもの」、とインターネット上で公表している。
近藤氏は「1月に提出したのは190冊のリスト。そのうちの153冊を選別して排除したのは県の意思、排除は自分の働きかけではなく保守系議員の力によって行われた」と主張している。
福井県が昨年来、「一県民の声に真摯に対応した」といってきたのはウソで、図書撤去に「議員が政治介入していた」なんて、見過ごすことはできない。
そこで、「ジェンダー図書排除」究明原告団から福井県知事に「公開質問状」が出された。
この関連では、これら排除問題などを議論した福井県の男女協働参画審議会の録音テープを情報公開請求したところ、福井県知事が「テープは情報公開の対象ではない」ということで「不存在=非公開」と決定してきた。
しかしそれは、情報公開条例に反しているからと、私たちは昨年11月21日に異議申し立てしている。
福井県男女共同参画。審議会の録音テープと電磁データ、職員が持っているのに「不存在」。異議申し立て 2006.11.26
これについて、「1月18日付けで『公文書公開審査会』に諮問した」と通知が来た。
異議申し立てを受けて知事が非開示決定を見直すかと思っていた。
しかし、審査会は長引くこともある。 さぁ、どうしようかな。
福井県公文書公開審査会の過去の答申結果の各・全文にリンクしたページ
福井県公文書公開審査会は、学識経験者で構成され、公文書非公開決定などに対して不服申立てが行われた場合に、その決定が妥当であったかどうか調査審議を行い、知事など実施機関に対して答申を行います。答申を受けた実施機関は、審査会の判断を尊重して不服申立てに対する決定を行います。
平成13年度以降の答申の内容については、以下の各号をクリックしてご覧下さい。(答申はPDF形式で作成しております。)
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● ジェンダー図書排除の経緯に関する公開質問状の全文。回答は月末までに
+下記資料(どの写真もクリックすると拡大。写真右下あたりのクリックでさらに拡大)
2007年1月17日
福井県知事 西川一誠様
福井「ジェンダー図書排除」究明原告団および有志
代表・上野千鶴子
ジェンダー図書排除の経緯に関する公開質問状
2006年11月2日、「福井県男女共同参画審議会」が開催され、わたしたちが提出した「男女共同参画にかかる県施策への申し出」と図書の排除を求めた近藤氏側が提出した「苦情申出」が議題となりました。その後、審議会での議論を受け、福井県知事からの回答が届きました。回答には、「一括して図書を移動し作業を行ったことについては誤解を与える結果となり、十分な配慮に欠けていたものと反省しているところ」とあり、わたしたちは11月21日、「『ジェンダー図書排除』苦情申出への福井県知事回答に対する声明」を公表しました。
またこの回答には、「近藤氏」の名前が明示されていたものの、事実経過については「その後も同様の申出が口頭で相当回数あったため、申出にかかる図書の内容を了知しておく作業が必要であると考え、一覧表に掲載されている図書を一時的に書架から移動したものであり・・・・」とあるだけで、説明責任が果たされていない、きわめて不十分なものです。
12月になって、わたしたちが情報公開請求していた「男女共同参画審議会」資料および図書選定基準に関する公文書が公開されました。そのなかの審議会資料2-3「生活学習館の図書の移動に関する経緯について」の説明には、「H18年1~2月。近藤氏より、不適切とする図書の一覧が提示される等、県に対し、数回の排除の申出がなされた。3月下旬。生活学習館では、近藤氏の申し入れに対し図書の内容を一切知らずに対応することができないことから、一覧表に記載されて約150冊の図書を情報ルームの書架から事務室に一時的に移動し図書の内容を知るための作業を行う・・・・」(資料1)とあります。
この経緯説明にも、近藤氏の申出を受けて、いつ、どこで、だれが意思決定をし、じっさいの作業を、いつ、だれが、どのようにしたのかについての記載は一切ありません。また、この審議会資料は、いままでのわたしたちへの説明や新聞報道等との矛盾点もたくさんあります。
さらに12月末、リストを提出した近藤氏が、審議会に提出された「生活学習館の図書の移動に関する経緯について」の文書は虚偽であると、あらたな事実をインターネット上で公表しています(資料2)。
リストを提出した本人である近藤氏が、県の事実経過の説明は事実とは違うと主張している以上、ジェンダー図書排除をめぐる県の経過説明文書には強い疑義が生じてきました。
わたしたちは、福井県知事に対し、以下の質問について、当時の関係職員の聴き取りにもとづく真相究明をおこなったうえで、具体的かつ納得できる説明を求めます。
なお、回答は1月31日(水)を期限として、文書によるものとします。
記
1)近藤氏から図書リストが提出されたのは、いつか。
それを受け取ったのは県のどの担当部局のだれか。
また、近藤氏からのリストの提出、および働きかけは何度にわたったのか。
2)近藤氏は190冊分の図書リストを提出したと主張するが、県から情報公開によって得られた図書リストは、その一部の153冊分しかない。
県が公開したリストは、近藤氏が提出したものと同一か。
もしそうでないとすれば、公開された153冊のリストを作成・提出したのはだれか。
そしてその選別は、どういう基準でおこなったのか。
3)近藤氏が提出したと主張する190冊の図書リストはどこにあるか。
なぜそのもともとのリストが情報公開請求にあたって公開されなかったのか。
4)近藤氏は、3月25日ごろ「議員」から図書が撤去されたことを聞き「数日後生活学習館に行って、本当に排除されたのかを、私のお渡しした書籍一覧表に沿って、一冊ずつ確認した」という。近藤氏の記述は、153冊のリストのうち3冊は見当たらず、実際に排除されたのは150冊である、と詳細なものであり、当初150冊を移動したとする県の説明とも合致する。
近藤氏は撤去された図書の現物を点検する機会を持ったのか。
そうだとすれば、それを許可したのはだれか。
5)近藤氏は、「保守系の議員さんに、1月18日、書籍一覧表(その1~その5)をお渡しし、県へ働きかけていただけるようお願いした」としている。8月21日の新聞報道(資料3)には、「前館長の政野さんは、異例の書籍撤去につながったのは複数方面からの『圧力』が原因とみる」とあり、「圧力」の存在を裏付ける。もしこれが事実だとするなら、今回の事件は、一市民単独の行為を越えた、行政機関に対する自治体議員の政治介入という、社会的にも政治的にも許されない、重大な事件であることになる。またそのような政治介入を許した行政職員の責任も重大である。
そのような、議員からの介入はあったのか。
その「保守系の議員」とはだれか。
6)近藤氏は、「今回の図書撤去は、私の申し出というよりは、議員さんの力によるものだったのです。・・・・議員さんが良識にもとづき依頼したことに対して、U課長(あるいはその上司かも知れません)が決済されたということです」としている。また、新聞報道(資料3)には、「撤去作業は政野さんが出張中の3月、本庁の直接指示で県職員が行ったという。事前・事後報告はなく、政野さんが知ったのは館長退任後の四月だった。撤去を指示したのは本庁の総務部男女参画・県民活動課の前課長(女性)」とされ、いずれも図書撤去に関して、当時の本庁の宇野課長の関与を示唆している。
図書撤去を決定し、現場の職員に指示したのはだれか。
じっさい図書を撤去したのはだれか。
とりわけその決定に、議員の介入があったかどうかについて、撤去当時の担当者である宇野前課長および関係職員への聴き取りを実施したうえでの回答を求める。
7)以上、近藤氏本人の主張と福井県の公式見解とのあいだには、矛盾がいちじるしく、いずれかが虚偽を主張していることになる。
県が責任ある回答をしてきたと主張するなら、近藤氏に反論できるだけの根拠にもとづく、具体的かつ詳細な事実関係の説明を求める。
以 上
《資料-1》 県の審議会資料2-3
「生活学習館の図書の移動に関する経緯について」
「H18年1~2月。近藤氏より、不適切とする図書の一覧が提示される等、県に対し、数回の排除の申出がなされた。3月下旬。生活学習館では、近藤氏の申し入れに対し図書の内容を一切知らずに対応することができないことから、一覧表に記載されて約150冊の図書を情報ルームの書架から事務室に一時的に移動し図書の内容を知るための作業を行う・・・・」。
《資料2》 インターネット上の近藤氏の主張
『健全な男女共同参画を考える』楽天ブログを引用した書面
《資料3》 福井・共同参画本撤去の背景(中日新聞2006.8.21)
・・・・・「知っていれば、絶対にさせなかった」。今年三月まで生活学習館館長を務めた政野澄子さんは悔しがる。牧野さんは元県連合婦人会長で「県庁外」からの登用。″外様″の政野さんの関与を避けようとしたかのように、撤去作業は政野さんが出張中の三月、本庁の直接指示で県職員が行ったという。事前・事後報告はなく、政野さんが知ったのは館長退任後の四月だった。 撤去を指示したのは本庁の総務部男女参画・県民活動課の前課長(女性)。上司にあたる杉本達治県総務部長は会見で「(推進員が)本の内容が問題だと何度も繰り返し訴えてきた、と聞いている」と釈明。「撤去ではなく(指摘された本の)内容確認だけだった」と苦しい弁明に終始した。
前館長の政野さんは、異例の書籍撤去につながったのは複数方面からの「圧力」が原因とみる。推進員が最初の撤去要請をする一カ月前の昨年十月、県議会で自民党の有力議員が生活学習館にある上野教授の著書を名指しで批判した。こうした圧力が重なり、今回の事件を引き起こしたとみられる。
事情を知る県職員は「推進員からの再三の撤去要求に担当課が音を上げ、影響を深く考えずに応じた。まずい対応だった」と明かす。・・・・・・(中日新聞2006.8.21)
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>生活学習館は県の施設でかってはよく利用しました。
⇒そうですか!
私は昨年の夏に初めてうかがいました。
>上野さんの本がたくさんあることは知っていました。しかし撤去のニュースには驚きました。何もそこまでしなくても、ほとんど読んでる人見かけなかったのに。
⇒どういう意味かなぁ(笑)
>どこでも思想選別はあるみたいですね。特色と名を借りた思想選別です。近くの県図書館も似たような事やってます。特定の著書がないのです。市立図書館には有るんですよ。
⇒そんなことやってるんですか?
しかも、「(福井)県」の方がその傾向にある!!??
>職員に聞くとこの手の著者はねーえ。と返事が返ってきます。
⇒どういう職員なんでしょうね。
>とにかく用意しろと、レファレンスすると、国会図書館から取り寄せてきます。館内で読まなくちゃいけないんですよね。国会の奴は。それでもないよりましで通って読みますがね。
⇒大したものですね。
>知識は読者の選択、行政は満遍なく提供するだけに徹してもらいたいですね。
⇒おっしゃるとおりです。
行政の役割をしっかり認識して欲しいですね。
>上野さんの件に関して、補足します。県学習館は、どちらかというと女性向けです。館内はやたらと女の人が多いです。多目的施設ですが、女性が多い。
⇒福井県の条例では、県の女性センターの位置づけですからそれは当然ですね。
>上野さんはマルクス系の女性を擁護する立場から著書を書いていると思います。それはそれでよいのですが、いかんせんマルクス、それはアカだと単純反応する輩が当地にはあいも変わらず少なからずいるということです。戦後農地解放で農地を取られた元地主に多いですね。当地は真宗の影響が大きく、稲作地帯も手伝い労働の平等化が進んでいます。一口で言えば稼ぎ手は男女問わず平等ということです。ここに来てマルクスなどという外来思想はいらないと考えている人がいるのでしょう。
⇒そのあたりのことになると、門外漢の私が意見を言うのは外れてきますね。本人からのコメントも期待できないだろうし・・・
>かと言って撤去は良くないですよ。もちろん。あくまで選択権はこちらにあるはずです。再コメントですがお許しのほどを。
⇒いえいえ、ご丁寧にありがとうございます。
HPと違って、ブログはやり取りが出来るから面白いですね。