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てらまち・ねっと



 先週は、「がんゲノム医療」のこと、関係する治療薬のことなどを見てきた。
 今日は、それら分野のまとめ確認や課題なども見ておく。

 ゲノムにつき、「生検や手術で癌細胞」をとって調べることとは別に、時代は「血液」などから調べる方向に移りつつある。
 このことは、2015年の国立がん研究センターの「血液でがんゲノム解析、すい臓がんで成果 個別化治療への道開く」(日経 2015.12.17)というような動きも経ながら、現在に来ている。

 保険診療でゲノム医療・リキッドバイオプシーの検査が受けられるようになったのは、まだ2年前の2019年。
 ほやほやで、今後、どのように進んでいくかとともに、そもそも、現状で、どの程度の人がその恩恵としての治療を受けられるか、それは重要なこと。

 そんことも視点にして、きょうは次にリンク・抜粋しておく。
 「臨床研究ではがんゲノム遺伝子検査から薬剤に到達する患者は13.3%」という論点もある。13%が低いか高いかというポイントについての評価につき、「そんな低い?」と感じる向きもあるかもしれないけれど、がん治療は当面は従来の方法が改善していく患者はそれはそれで当面は良しとして、私のように、何をやってもダメ、という患者にとっては、まったく新しい可能性のある治療の端緒とうつる。だから、13%は高い数字、と評価する。それと、実地と研究が進めば、もっと数字が上がるのは当然の分野。

 それと、明日からは、放射線治療のうちの「ゾーフィゴ」について何回か見た後、ゲノム医療の実際の治療のことを確認したいと今は思っている。あくまでも、当事者目線でのまとめ。
 ともかく、今日は次。

●血液でがんゲノム解析、すい臓がんで成果 個別化治療への道開く/日経デジタルヘルス 2015.12.17/国立がん研究センターは、生検や手術で生体組織を採取することなく、血液から網羅的なゲノム解析を高精度に行える手法を開発した。リキッドバイオプシー(Liquid biopsy)と呼ばれる検査技術における新手法で、進行膵臓がんの治療標的になり得る遺伝子異常を検出することに成功した。患者の負担が少なく、しかも効果の高い個別化治療につながる成果だ。/治療標的となり得る遺伝子変異を捕捉/分子標的薬による治療へ

●がんゲノム医療のさらなる発展 リキッドバイオプシーによるゲノム解析の有用性を証明へ/国立研究開発法人国立がん研究センター 2020年10月6日

●がんゲノム医療は早期治療につながる?リキッドバイオプシーで何ができる? よりよいゲノム医療の実現へ患者の視点を生かす/日経 がんナビ 2020/10/20/限られている治療薬、あっても使えない場合も
 新たに開発された治療は、国による承認というお墨付きを得てはじめて保険診療となる。検査と治療が揃っても、それがともに保険承認されるまでは、実臨床における使用はハードルが高い。保険診療と保険外診療とを一緒に行うことが禁止されているためだ(混合診療の禁止)。

●保険診療となって1年が過ぎたがんゲノム医療でわかってきたこと、わからないこと 現状を踏まえた今後の取り組み  臨床研究ではがんゲノム遺伝子検査から薬剤に到達する患者は13.3%/日経 がんナビ 2020/12/22 /2つのがん遺伝子パネル検査のどちらを選ぶ?/検査を行う最適な時期、薬剤に到達するまでの時間は?・・・(略)・・・現在、がん遺伝子パネル検査は、標準治療が終了した後に行う検査。そのため患者の状態が悪化することが懸念される。/最近では、ある共通する遺伝子変異がある複数のがん種で同じ薬剤を投与での成功が見られる/薬剤開発は今後グローバル化がますます進み、高速化していく

 なお、昨日3月15日の私のブログへのアクセスは「閲覧数2,752 訪問者数975」。

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●血液でがんゲノム解析、すい臓がんで成果 個別化治療への道開く
     日経デジタルヘルス 2015.12.17 大下 淳一
 <font style="background:#ffffcc">国立がん研究センターは、生検や手術で生体組織を採取することなく、血液から網羅的なゲノム解析を高精度に行える手法を開発した(プレスリリース)。

リキッドバイオプシー(Liquid biopsy)と呼ばれる検査技術における新手法である。この手法を使い、進行膵臓がんの治療標的になり得る遺伝子異常を検出することに成功した。患者の負担が少なく、しかも効果の高い個別化治療につながる成果だ。・・・(略)・・・
治療標的となり得る遺伝子変異を捕捉・・・(略)・・・

分子標的薬による治療へ・・・(以下、略)・・・


●がんゲノム医療のさらなる発展 リキッドバイオプシーによるゲノム解析の有用性を証明へ
   国立研究開発法人国立がん研究センター 2020年10月6日
・・・(略)・・・リキッドバイオプシーでは、がん組織を採取せずに、採血で繰り返し測定することが可能です。従来の腫瘍組織の採取は患者さんへの侵襲が大きく、治療決定の遅れにも繋がることがありましたが、今回、リキッドバイオプシーの有用性が証明されたことにより、身体に負担の少ない方法で、より多くの患者さんが最適な治療薬にたどり着くことに繋がることが期待されます。
・・・(略)・・・
 展望
本研究の成果により、リキッドバイオプシーがスクリーニング検査としてより多くの治験に活用されることで、より多くの患者さんに最善の医療を提供できることが期待されます。

また、新たなドライバー遺伝子異常の発見により、これまで着手されていなかったドライバー遺伝子異常に対する治療開発が活発化する可能性があります。なおGOZILA Studyでは、既にリキッドバイオプシーの結果に基づく医師主導治験が複数実施されています。

今後も国立がん研究センター東病院は、一人でも多くの患者さんが最善の治療を受けられるよう、リキッドバイオプシーによるがんゲノム医療の実現を目指してまいります。

●がんゲノム医療は早期治療につながる?リキッドバイオプシーで何ができる?
よりよいゲノム医療の実現へ患者の視点を生かす
 中西美荷=医学ライター
     日経 がんナビ 2020/10/20
・・・(略)・・・限られている治療薬、あっても使えない場合も
 検査における課題と並んで、「遺伝子の変異に対応する治療薬、そして有効と期待できる治療薬を使う手段が限られていること」(谷口氏)も、がんゲノム医療を実施する上で大きな課題である。

 たとえばHER2という遺伝子に変化があった場合、HER2に対する薬の有効性が期待され、すでに保険承認された薬剤もあるが、適応は胃がんと乳がんに限られている。大腸がんや膵臓がんなど、他のがんでHER2遺伝子の異常がみつかった場合には、この薬剤による保険診療は行えない。

 新たに開発された治療は、国による承認というお墨付きを得てはじめて保険診療となる。検査と治療が揃っても、それがともに保険承認されるまでは、実臨床における使用はハードルが高い。保険診療と保険外診療とを一緒に行うことが禁止されているためだ(混合診療の禁止)。

 ただし例外規定として、治験、先進医療、患者申出療養制度を使った場合には、混合診療が可能とされている。研究者らは、これらも利用しながら、保険診療に至っていない開発中の検査や治療を患者に届けるべく、臨床研究に取り組んでいる。谷口氏らが特に力を入れているのは、新たな治療が保険診療としての承認を得るための開発過程である治験だという。

リキッドバイオプシーって何?・・・(略)・・・
 一方、リキッドは日本語では“液体”を意味する。したがって“リキッドバイオプシー”は、直訳すれば“液体の生検”という意味になる。ただ中村氏によれば、がん診療の場面では、リキッドバイオプシーは “血液や体液を採取して得た腫瘍検体の解析”を意味するという。

 もっともイメージしやすいのが血液の解析だが、実は検体は血液に限らない。喀痰、尿、便、食道擦過液、脳脊髄液、子宮頸部細胞といったさまざまな体液を用いた解析も行われており、これらの腫瘍検体を用いた解析もリキッドバイオプシーである。

血中に放出される“がんの痕跡”を探す
 がん細胞が壊れると、血中に、さまざまながんの痕跡が放出される。また、組織から離れたがん細胞そのものが血中を流れていることもあり、これは血中循環腫瘍細胞、英語でCTC(Circulating tumor cell)と呼ばれる。
・・・(略)・・・

●第29回肺がん医療向上委員会より 保険診療となって1年が過ぎたがんゲノム医療でわかってきたこと、わからないこと 現状を踏まえた今後の取り組み
     日経 がんナビ 2020/12/22 森下紀代美=医学ライター
 2019年6月に2つのがん遺伝子パネル検査が保険収載され、がんゲノム医療が保険診療で受けられるようになった。がん遺伝子パネル検査で一度に多数の遺伝子を調べ、その結果をエキスパートパネル(関係する分野の専門家で構成される委員会)が検討し、推奨される薬剤や治験など、一人ひとりの患者に合う治療法が検討される。その結果は主治医から患者に説明される。

 全国どこにいても、がんゲノム医療を受けられる体制を構築するため、がんゲノム医療中核拠点病院12カ所、がんゲノム医療拠点病院33カ所、がんゲノム医療連携病院161カ所が指定されている(2020年4月時点、厚生労働省ホームページより)。エキスパートパネルは、がんゲノム医療中核拠点病院12カ所、がんゲノム医療拠点病院33カ所の病院で設けられている。

 第29回肺がん医療向上委員会のウエブセミナーでは、国立がん研究センター中央病院先端医療科の小山隆文氏が「がんゲノム医療の現場から」と題した講演を行い、がんゲノム医療の現状、その現状を踏まえた課題とそれに対するアプローチについて解説した.。

臨床研究ではがんゲノム遺伝子検査から薬剤に到達する患者は13.3%
 小山氏はまず、がんゲノム医療の現状を紹介した。
 現在、保険診療で利用可能ながん遺伝子パネル検査には、「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」(Foundation One CDx)と「OncoGuide NCCオンコパネル」(NCCオンコパネル)がある。これらの検査が受けられるのは、標準治療がない固形がんの人、局所進行または転移があり、標準治療が終了した(終了見込みを含む)固形がんの人とされている。

 2つのがん遺伝子パネル検査には違いもある。調べることができる遺伝子数は、FoundationOne CDx 324個、NCCオンコパネル114個で、小山氏は「全遺伝子は約2万と言われ、両遺伝子パネル検査ともに、臨床的に有望であろうというものをピックアップして見ている」と説明。また、FoundationOne CDxで調べるのは腫瘍組織だけであるのに対し、NCCオンコパネルでは腫瘍組織と末梢血を調べ、対照となる正常細胞も併せて見るものとなっている。

 NCCオンコパネルの基となった臨床研究が、国立がん研究センターのチームが行ったTOP-GEARプロジェクトである。研究の前半部分では、対象187人のうち、NCCオンコパネルで遺伝子変異が見つかり、何らかの薬剤に到達したのは25人(13.3%)となったことが報告されている(K. Sunami, et al. Cancer Sci.2019;110:1480-90)。

 その後、後半部分の解析も行われ、対象は計332人となり、何らかの薬剤に到達した患者は計57人(16.7%)となり、経過観察期間が長くなるのに伴い、薬剤への到達率は上昇した。57人に投与された薬剤をみると、最も多かったのは治験で、保険承認薬、適応外使用(すでに国内で承認されている薬を、承認された内容の範囲外で使うこと)が続いた。薬剤の作用機序でみると、分子標的薬のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が最も多かった。

実際の臨床で薬剤に到達できる割合は?
 がんゲノム遺伝子検査が保険診療で受けられるようになった今、多くの人が知りたいのは、臨床研究ではない実際の臨床の場、リアルワールドのデータだ。小山氏は、国立がん研究センター中央病院の臨床データを示した。

 がん遺伝子パネル検査が保険収載された後の2019年8月から2020年7月までに、同院でこの検査を行ったのは418人(男性214人、女性204人)、年齢中央値は57歳(範囲:3-86)で、40歳から75歳までの年齢層が多かった。検査をFoundationOne CDxで行ったのは151人、NCCオンコパネルで行ったのは267人となった。

 がんの種類で多かったのは、大腸がん(56人)、肉腫(45人)、肺がん(37人)、卵巣がん(33人)、膵がん(29人)などだった。臨床研究のTOP-GEARでは、肉腫などの希少がんが多かったが、保険診療に移行後は、大腸がんや肺がんなどの患者数が多いがんが増加し、他にもさまざまながんに行われており、満遍なく検査が行われていることがわかった。

 国立がん研究センター中央病院のエキスパートパネルで何らかの薬剤の提案があったのは、418人中188人(45.0%)だった。1人の患者に複数の提案がされたケースもあったが、勧められる治療法の中でエビデンスレベルが高いものでは、最も多かったのは治験(166人)、続いて保険承認薬(9人)、受け皿試験(治験の対象とならない患者の受け皿として、患者申出療法制度の中で治験薬や適応外使用で薬剤を投与する多施設共同研究)(8人)だった。

 エキスパートパネルで何らかの薬剤が提案され、実際に薬剤に到達した患者は418人中52人(12.4%)となった。TOP-GEARや米国のデータでは、薬剤への到達率は10%前半の値であり、実際の臨床の場でも、臨床研究と同程度に薬剤に到達することが示された。

 52人が到達した薬剤を作用機序でみると、分子標的薬が最も多く、次がニボルマブやペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬だった。実際に投与されたのは、治験が最も多く、保険承認薬、適応外使用、医師指導試験、受け皿試験が続いた。

 「がんの種類によって薬剤に到達する割合が違うのではないか?」という疑問も出てくる。418人の全てのがんでみると、何らかの薬剤に到達した患者は肺がんで最も多く、37人中11人、薬剤の提案が最も多かった大腸がんでは56人中5人だった。

2つのがん遺伝子パネル検査のどちらを選ぶ?
 保険診療で利用可能な2つのがん遺伝子パネル検査のうち、「どちらをその患者さんに選べばよいのか?」という課題も、現場の臨床医には重要である。検査に提出する際には、主治医がどちらかを選ぶ必要があるためだ。

 国立がん研究センター中央病院で検査が行われた418人のうち、NCCオンコパネルには267人、FoundationOne CDxには151人の検体が提出された。そのうち薬剤に到達したのは、NCCオンコパネルとFoundationOne CDxではほぼ差はなく、約12%であった。

・・・(略)・・・検査を行う最適な時期、薬剤に到達するまでの時間は?
・・・(略)・・・現在、がん遺伝子パネル検査は、標準治療が終了した後に行う検査となっている。そのため、検査を提出してからエキスパートパネルが終わるまでの間に、患者の状態が悪化することが懸念される。

・・・(略)・・・薬剤への到達率を改善するための次のステップ
 ・・・(略)・・・ 研究期間は2020年5月から2021年4月までの1年間で、予定登録数は患者が300人、家族が192人で、半年が経過し、登録数は半数を超えている。2021年の秋頃には何らかの形で報告ができる見通しであるという。
・・・(略)・・・さらに、がん遺伝子パネル検査を行った後の薬剤候補は治験薬となることが多いため、治験薬の候補をいかに増やしていくかが、薬剤への到達率を上げるための1つのポイントとなる。

 抗がん薬の開発は、肺がんや大腸がんなど、それぞれの臓器に焦点を当てて行われてきた。しかし、2000年代初頭から、遺伝子変異や表面抗原などのバイオマーカーを中心とした薬剤開発にシフトしてきている。こうしたバイオマーカーを使うものには、1種類のがんで遺伝子変異の種類により、それにマッチした薬剤を投与するアンブレラ試験や、ある共通する遺伝子変異がある複数のがん種で同じ薬剤を投与するバスケット試験があり、最近では後者の試験デザインでの成功が見られるようになってきている。

 分子標的薬が登場するまでは、第1相試験で薬剤の毒性を評価し、第2相試験で薬剤の有効性を評価し、第3相試験では対象を増やして薬剤の有効性と安全性を評価する方法が典型的だった。ただし、この方法では保険承認までに長い時間がかかる。10年かかることもある。遺伝子変異などのバイオマーカーをターゲットとした、分子標的薬が開発の中心になると、第1相と第2相を組み合わせるなど、薬剤の開発期間が短縮されるようになり、ペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬では、巨大な第1相試験で第2相、小さな第3相までも含むような試験デザインになっているものも見受けられる。

 薬剤開発は今後グローバル化がますます進み、また第1相、第2相、第3相試験がシームレス化し、高速化していくことが予想される。がんゲノム医療で薬剤に到達する機会を減らさないためにも、さらには今後登場する保険承認薬を減らさないためにも、日本はこうした薬剤開発の波に乗り遅れないようにする必要があると小山氏は指摘した。


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