ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

屠蘇がない正月ですが

2016-01-01 11:03:06 | 暮らし

 東京から移り住んで30年余、郷に入っては郷に従え、極力この地の風習にならうことにしてきた。今ではまずないが、お骨を納めるための墓掘り人足だって経験した。斎場に送り出す棺桶を担いだことも数知れない。なんせ、年寄りが多いから、葬式もひっきりなしだ。年齢的には長老に近づき、よそ者ながらも、葬儀の進め方を確認されたりもするほどになっている。

 東京生まれ。東京育ちの僕には、守らねばならぬしきたりなんてものはほとんどない。決まり事を毛嫌いするひねくれ根性の所為もあって、冠婚葬祭のしきたりも、できるものならスルーしたい。盆、正月も同じで、世間並みの行いとはとんと無縁だ。紅白も見なければ、元朝参りに出掛けることもない。家族揃って新玉のご挨拶なんて、恥ずかしくってとてもできない。それでも、おせちだけは食卓に並んでいて、それを囲んで、屠蘇の杯を若い順に口に運ぶくらいのことはする。

 で、問題はその屠蘇だ。ここ山形置賜では、屠蘇はどうも普通の清酒のようなのだ。正月に他家を訪ねた経験がないので、友人からの聞き取りに過ぎないが、どうも間違いない。東京のような屠蘇酸を浸した屠蘇を飲む習慣はないようだ。ネットで調べたみたら、同じような疑問を持つ人がいるようで、屠蘇酸入りの屠蘇をたしなむ地域について質問が載っていた。それによれば、関東を境に西の地域の習慣のようで、境界の関東では地域や家庭によって異なるとのことだ。この地に屠蘇(屠蘇酸を入れた)の習慣のないことは、酒屋に行っても、薬局に行っても屠蘇酸を売っていないことからも歴然だ。

 で、風習にこだわりを持たない僕が何故かこの屠蘇にだけは強い執着を持っている。初めの頃などは、屠蘇酸を求めて、高畠、米沢、川西の酒屋、薬屋を経巡ったぼとなのだ。あちらで断られ、こちらで不審な顔をされて、ついに探し当てたのが、米沢ヨーク駅前店の中で店を構える薬局だった。ここだけは、あの祝儀袋のような包装紙に大切に包まれた屠蘇酸を扱っていた。だから、年末の買い物と言えば、何はなくとも、屠蘇酸だけは買い求めに出掛けた。

 今年は、あっ、もう昨年か、27日、別の店で買い物があったのだが、屠蘇酸につられてヨーク米沢店を優先した。残念、まだ入荷していないとのこと、仕方ない、また後日、ということで、3日後の30日、他に買う物はまったくなかったが、わざわざ屠蘇酸のためだけに、片道20分、車を走らせた。

 が、なんと!今年から本社の方針で扱いを止めたと、店員のすまなそうな顔。入らないなら入らないって言ってよとぶつぶつぶつ。言っても詮ないことだが、ごにょごにょと不満をなすりつけて帰ってきた。あまりに口惜しかったので、買う予定のなかった干鱈を買って帰った。

 帰りの車の中で、そうか、地域で購入にこだわり過ぎたんだ、この地で売れないものなら、店に並べないのが当たり前、こういう時こそ、ネットじゃないか。アマゾンでも楽天でも、きっと扱っているはずだ。よし、希望の光が見えてきた。帰りついて、そそくさとPCを立ち上げ、アマゾンで屠蘇酸を検索、当然、ある!ただ、問題は、配達に1週間!それじゃ正月過ぎちゃうじゃないの。で、今度は楽天、おっ、あった!即日発送!よしっ、これなら大晦日届くかも。運送会社の人には年末ぎりぎりまて゜働かせて申し訳ないが、我が家のジャムでも上げて勘弁してもらおう、とさっそく注文した。

 無理かな?と思っていたのだが、ショップからのメール、本年中の配達は不可能とわかりましたので、キャンセルとさせていただきます。まあな、そうだよな。と、いうことで、今年のお屠蘇は、この地の習慣にならい、清酒、いただいた吟醸酒で独り新年を祝うことになった。まぁ、手作りしたおせちもあることだし、ゆったりと2016年の元朝を味わいつくそう。ほらほら、雪も降ってきたことだしね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする