ステージおきたま

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どっこい生きてる!井上ひさし:こまつ座公演『私はだれでしょう』

2017-03-31 09:15:12 | 劇評

 井上さんって、どうしてこうも新鮮なエピソード切り取ってくるんだろう!?今回の主題は、終戦直後の日本放送協会ラジオ放送、「尋ね人の時間」だ。日本人だけでも数百万が死んだあの太平洋・日中戦争、その最後は壮絶を通り越してグチャグチャな大混乱だったから、生き別れたり、行方知れずになった人たちはたくさんいた。そんな家族や知人の消息を訪ねる番組、それが「尋ね人の時間」だった。薄っすらと覚えている。生で聞いたのか、噂とかを耳にしたのか、1962年まで続いたそうだから、どちらの可能性もあるなぁ。うん、あのほとんど棒読みのアナウンスが耳の奥に蘇ってくるから、きっと直に聞いているのだろう。

 ウィキペディアによれば、放送された尋ね人探しは、19,515件、その約1/3にあたる6,797件が尋ね人を探し出せたんだって。これ、凄い達成率だよ。心当たりある人たちが毎日、この放送時ラジオにかじりついていた様子が浮かんでくる。ラジオを頼りに再会を果たした人たちに、どれほどの喜びだったことだろう。そう、それだけの人間ドラマ、芝居ではそれを奇跡と呼んでいたけど、がぎっしり詰まった題材だってことだ。これは芝居になる、いいもの作れる。埋もれていた宝物を探し出し、磨き上げた井上さん、やっぱりすこぶる付きの勉強家だし、敏感なアンテナの持ち主だったってことだ。

 舞台公演を見る時、なにがお目当てか、そりゃ人によって違うだろう。僕の場合は、やっぱり真新しさってことだな。知らなかった話題、初めて目にする光景、未知なる人物との出会い。あっ、それ知ってる!とか、どっかで見たぞ、聞いたぞ!てのは、そう感づいた時点でアウトだ。先月の二兎社公演『ザ・空気』はこの既視感で、もう一発で興味半減してしまった。中身はとっても濃かったし、ち密に組み立てられた凄い芝居だったんだけどね。

 井上芝居はこの点ほとんど裏切られたことがない。太宰や賢治、一葉、芙美子、なんか知れ渡った知名人を書いても、そこで扱われるのは、ほとんどお初のお話しだったり、切り口だったりする。この新鮮さがまず凄い。

 次に圧倒されたのが、そのシチュエーションから繰り出される空想力の雨あられだ。主人公のアナウンサーの弟は、特攻命令を拒否して自死しているし、原稿制作係は脚本賞を狙っている。原稿校正係はもともと築地小劇場の文芸部出身で内職に文章添削のアルバイトをしている。番組の監督役の米軍将校は、日系二世で育った神奈川県丹沢の僻村の村再生に心を砕き、なんと村人から村長に推されている。タイトル『私はだれでしょう』の元になる記憶喪失の青年は、偽親の引き取りであやうく小指を詰められそうになったり、信州の山奥で畑仕事にこき使われたりする。まだまだエピソードは限りない。もう、話題の速射砲と言ってもいいくらい、次から次と投げつけられ、引き据えられ、食らわされる。この空想力の絶え間なき破裂!これがこの作品を飽きさせぬものにしている。

 でも、突拍子もないエピソードの連続攻撃だけで、惹きつけられるわけじゃあない。記憶を失った青年が、ちょっとずつ記憶を呼び戻して行くミステリアスな構成、これも興味津々、観客の関心をグイグイと引っ張って行く。実に巧みな構造だ。サイパンの捕虜収容所で意識を取り戻した青年は英語が得意、頭脳明晰、身ごなし軽く、柔道、剣道、空手は達人の域。さらに歌も上手けりゃタップダンスもお手の物?!こ、こ、こんな風に育てたってどういう家庭なの?どいうう境遇なの?うーん、井上さんの挑戦受けて、舞台見ながらずっと考えていたけど、降参!なんと、あっと驚く結着の着け方だった。恐れ入りました、井上さん。

 ここまでだったら、お上手なストーリーテラー、楽しいエンタメ舞台で終わるところ、ところが、どっこい井上さん、こんなとてつもない笑いふんだんの設定を操りつつ、しっかり観客の胸に突き刺さるシーンや言葉もたくさん仕込んでいた。賑やかな歌と元気な踊りの合間合間、報道するものの責任とか、権力と戦う姿勢とか、死者から託された使命とかがぐさりと客席を抉る。ラストの歌の歌詞、負けて、負けて、負け続けて 石になる。そのたくさんの石が積み上げられて、戦いは続く、て内容だったかな?これ、井上さんの生きる姿勢の表明であると同時に、見る者に対する投げかけでもあるって厳粛な気持ちになって聞いた。

 公演は観客の少なさを除けば、大成功。盛大な2度のカーテンコールの後も、点灯した客電にも去りがたく拍手が続いていた。ほんと、熱い拍手だった。井上さん、聞いたでしょ、この拍手。まだまだ生き続けますね、まだこれからもご一緒ですね。

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乗り捨ての車を取りに、駅まで走った、8.5km!

2017-03-30 09:14:20 | ランニング

 さて、弱った。神さんが介護に戻る日、これがちょうど公演日。こっちはまるまる1日劇場詰めだ。いつものように駅まで送っていけない。うーん、タクシーで行ってもらうか?高いし馬鹿々々しいしぃぃぃ。じゃ、歩く?2時間はちょっときついよなぁ。

 そうか!車、乗り捨てすればいいんだ。高畠駅、駐車はお気に召すまま、なんだ。農家だからね、当然、軽トラ含めて車は2台ある。軽トラで駅まで行って、そこでそのまま車を置いて、新幹線に乗ってしまえばいいんだよ。で、置き去りにされた軽トラどうする?

 公演翌日に走って取りに行けばいいじゃないか!おおーっ、これぞ名案!まさしく発想の転換!神さんは歩かずに済む、こっちはトレーニングになる、一石二鳥、そのものだ。えっ?キーはどうするか?って。そりゃ運転席のとある場所に隠しておけばいいのさ。いや、ダッシュボードの一隅にすぎんけどね。いいのいいの、こんな20年もののおんぼろトラック盗む人間なんていないから。大丈夫。

 翌日は、もううんざりの雪もよい。一日延ばして翌々日、天気予報は晴れ時々曇り、よしっ、行くぞ!駅で車拾った後は、ジムに直行するので、そう、お楽しみのZUMBAのレッスンあるからね、以前マラソン大会で参加賞にもらったランニングリュックに靴やら着替えやらギューギューに詰め込んで、いざ、スタート。

 走り出した途端に雪と西風!おいおい、なんなんだよ、天気予報は!?またもやテンツ予報か?たちまち指が凍えて来る。しまったなぁ、手袋してくりゃ良かった、なんて後の祭り。かじかむ手を、交互に首筋からウェアの中に突っ込んで温めつつ走る。やれやれ、もう一日待ちゃよかったか?駅までは8.5km、6分/kmのペースだと1時間弱、この拷問にたえにゃならんのか。

 おっ、雪、止んできたぞ。さすが、ウェザーリポート!ってすぐ変わるな!半分ほど走って平場に下りてきたら、雪も風もいつか止んでいた。あと3キロ、あと2キロ、残り1キロ。ここを左折、で駅が、見えた。さて、駐車場のどこに止めてあるのかなぁ。車のナンバー忘れたけど、ボロのスズキ軽トラ、迷うことなく見つかった。もちろん、鍵は打ち合わせの場所に。ほっと一息、記念撮影。

 盗まれるなんてありえないとは思っていても、一抹の不安てやつはあったわけよ。よしっ、エンジン始動、ジムに向けてゴー!すべては予定のタイムとおり、ZUMBAレッスンの始まる5分前にジムに到着。びっしり踊って45分間、物足りなねえなぁ、ランニングマシーンで坂道ラン1.5km 。

 ちょっぴり非日常のランニング体験だった。前回の街中ランとか、トレーニングも手を変え品を変えしないとね。

 

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シニア演劇学校5期生公演アルバム

2017-03-29 10:43:31 | テレビ

シニア演劇学校5期生公演アルバム

前日ゲネプロの画像です。衣装など本番と異なる部分多々あります。本番は直しを入れて、グッと見栄えのよいものになりました。超満員のお客様にも支えていただき、修了生みな熱演でした。

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まずはコントを振り返る!シニア5期生修了公演

2017-03-28 08:37:00 | シニア演劇

 シニア5期生最後の舞台は、コント2本と各自の持ち芸披露だ。前半でコントを演じ、休憩を挟んで得意芸大会。まずは、コントの出来栄え客受けを反省だ。

 2本のコント、最初の『神頼み』、これは心配だった。台本は悪くないと思っていたが、なんせ、セリフが入らない。記憶に自信がないから、どうしたって動きの方は二の次三の次。ついつい棒立ちのまま、必死でセリフを思い出すってことになる。だから、稽古じゃこっちのチームを集中的にしごいた。

 その甲斐あって、というより、最初のギャグで一気に笑い、それで役者たち、気が楽になった。賽銭の額をめぐる矢継ぎ早のギャグも好評、ここを乗り切れば、お調子者の神様もノリノリで登場、歌に踊りに縦横無尽の大活躍。客席を大いに沸かし、極めつけは不貞腐れ巫女の登場。ここは客席に陣取る応援団が大爆笑。こうなりゃ、セリフの一つ一つ、ギャグの一つ一つで笑いを誘い、最後のオチ、巫女が”とんでも美人”になって現れてしっかり話を落としてまとめてくれた。真ん前にゃお客さん、その笑いと手拍子に乗せられて、これまで見せたことのない動きや表情なんかも飛び出して、役者たち、やりたい放題の15分間、大いに楽しんだ。

 2本目の『バトル in ケアハウス』。こっちは早くからセリフも入り、役者たちも演出の意図を早々と理解してくれていたので、安心して本番へ。ところが、あれれれれ?いまいち笑いが起きない。お客さん、まったくの白けっぱなしってわけじゃなく、そこそこに楽しんでくれたようなのだが、ひっきりなしの爆笑とはいかなかった。役者たちは名演、熱演で、稽古以上の仕上がりだったので、これは大いに残念。いつも見に来てくれる町長、終演後開口一番、コント受けなかったね、ってそれが最初にかける言葉か!でも、まっ、その通りなんだが。

 理由は、観客とのミスマッチってことだな。高齢者主体の客層に、老人ホームでの虐待ネタじゃ、身につまされて笑いどころじゃなかったってことかな。そう、菜の花座やシニア団の公演でも感じていたことだが、お歳より、特におば様方は、残酷な笑いにゃ拒否感が強いんだ。女性のやさしさってことかもしれない。下品なくすぐりも、過激な笑いもNGだね。品のある、穏やかな笑いがお好みだ。ジイサン乗せた車椅子をぶん回すとか、ひっくり返す、なんて、とても残酷で、いやだわぁぁぁ!って嫌悪感が先に立つのだろう。

 でもねぇ、笑いって、残酷なところがあるんだよ。心温まるユーモアとかもある反面、人を切り刻んで楽しむサドの笑いも大切なものなんだ。例えば、たけしや松本人志、のデビュー当時の毒舌。あっ、今じゃすっかり常識の権化になっちまってるけどね松本。古くは藤山寛美のアホ丁稚だって、大いにアホ加減を笑い倒したじゃないか。いじめなんてのも、この残酷な笑いが衝動になっている。

 いじめは悪い、うんそりゃそうなんだが、あんまりそればっか言い過ぎると、人間薄っぺらなカスカスになっちまう気がする。笑わせていじめの矛先をかわすとか、けっこう逞しく生き抜いた子どもらいたんだよなぁ。いじめをなくす、それも大切、いじめを生き抜く術を鍛えるてのも同時にやっていい。世の中、あんまり道徳的に固まり過ぎると、きっと大きなしっぺ返しを食うと思うぞ。個人発表で朗読された金子みすずじゃないけど、悪るもいて、ゲスもいて、クズもいて、アホもいて、みんな違って、みんないい、これでなくっちゃ。

 てことだから、今回受けなくたって、気にするこたぁない。また、いつか別の機会に勝負だよ、って軽くいなしてやり過ごす、これも長年の経験で身に着けた貴重な処世術ってことさ。

 

 

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席が足らない!シニア5期生修了公演

2017-03-27 09:26:19 | シニア演劇

 シニア演劇学校5期生公演、終わった。超満員!!!

 舞台上に客席も作る公演スタイル、お客さんと役者、顔突き合わせるほど近くって、濃密な芝居小屋空間が作れといいんだけど、座席数、あまり増やせないんだよなぁ、そこが問題。当たり前だけど、舞台の上って狭いからね、奥にぎりぎりいっぱい舞台作って、その前に客席設置するわけだが、平台で段差を作っても5列が精一杯、横だってどこまでも広げられるってもんでもんじゃない、1列20席、合計で100席、これが目いっぱいのキャパだ。

 これまでのシニア修了公演だと、置農演劇部員も含めて観客90名くらい、てことは、一般客が75程度、ちょい空席ありってとこだった。今回は、置農生来られないことわかってたし、まっ、入ったとしても90くらい、100席あれば十分!って見込んでいたんだ。

 それがなんと、開演10分前にほぼ満席!慌てて補助椅子を並べる始末。どうにか立ち見は逃れることができたが、両端の席の人たちには、ずいぶん見ずらい思いをさせてしまった。やっぱりねぇ、去年11月の本公演で400以上を動員した人たちだけのことはある。友達、知り合い、今回もたくさんの人たちが見守ってくれたんだ。

 椅子出したり、空席に案内したりのてんてこ舞い、記念すべき満席状態をカメラに収めるのを忘れてしまったので、証拠写真は、客出しの際の列をなすお客さんたち。いかにも実証性不足、残念!

 この後ろにも、握手を求める人たちがずらーっと繋がってるんだ、嘘じゃない。

 予想をはるかに超えて詰め掛けたお客さん、出演者繫がりが多いとは言え、シニア演劇学校ファンって人たちも少しずつ増えてきているってことだろう。シニアの頑張りは、この小さな町、地域に新しい楽しみの場を生み出しつつあるってことだ。地方の文化は女が守る、年寄りが支える!

 肝心の舞台の方は?そりゃ、見事、大成功!その内容は、次回報告するとして、今回の観客の中には、6期生に応募しようかどうか、迷っている人も何人かいたようなので、この温かくも熱気あふれる修了生たちの演技に接して、きっと決断してくれるに違いない。一時は、5期にて終了か?って諦めかけたシニア演劇学校、どうやらこの先も続いて行きそうだよ。

 ちょっぴりくたびれちゃいるが、夢を託して集まってくる人たちがいるんなら、気合いを入れ直してお付き合いさんなねなぁ。新しい出会いっていうご褒美もあることだしな。

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