ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

己を知れ!

2008-01-29 22:34:38 | 演劇

 己を知るって難しい!特に演劇では。スポーツとは違うからね、点数とかタイムとかで否応なく結果を突きつけられるってことがないもの。芝居は勝ち負けないから。演技に点数付けられないから。じゃあ、大会ってなんだ。あれは、あれさ。まあ、仕方ないから、上下付けてみたってところだ。いくら、回りから評価されなくたって、ふん、わからん奴め!で、乗り切れるから、楽って言えば楽、恐ろしいって言えば恐ろしい。それ、お前のいつものパターンだろって、まあ、そういうことだよ。

 例えば、自分の声。自分が知ってる自分の声って、他人に聞こえてる声とまるで違う。さらに、自分の横顔、これも普段から見ている人って少ない。さらにさらに、歩く姿勢とか、後ろ姿となると、まあ、普通の人はほとんど意識しちゃいない。それと同じことなんじゃないか。演じてる自分って、他人の目にはまるで違って映像化されてるってこと。自分が感じてる私と他人が見ている私との落差ってことだ。素人は特にこれが大きい。だから、へんに自信満々になってみたり、不必要に自身喪失してみたりする。プロはここが違うので、見えにくい自分もしっかり認識しているか、あるいは、本能的直感的に演じつつ、回りに説得的な演技をするってわけだ。

 概して人は、自分と向き合うのが怖いものだ。それは、日頃慣れ親しんでいる自分が、根底的に覆されそうだって感じるからなんだ。見慣れたもの、感じ慣れたものは安心なんだ。これってある意味消極的ナルシスってことかも知れない。いや、積極的ナルシストにしたところで、自分の中に自分がみたいものだけ見ているわけなので、自分と向き合うのを避けていることでは同じことなのだ。

 で、演劇もとこんとん自己満足で済ませていられるうちはそれでいい。だれがなんと言おうと、私はヒロイン、私はスターっでお幸せ。ところが、ここに演出なんて、とんでもない奴がしゃしゃり出てくるから困る。演出ってのは、他人の目なんだよ。役者には見えない、感じられないお前さんを見抜き直感し、しかも、余計なお世話にそれを指摘するんだ。ダメだしするんただ。ダメだし!なんともごさい(可哀相な)言葉じゃないか。人の触れて欲しくないことをずばずば言うんだから。もう、断罪人だね。首切り役人みたいなもんだ。

 僕なんかサディストの気があるのか、もう、ぐさぐさやるからね。ぐさぐさ!昨日だって、お前は心が躍って無いんだよ、って息の根止めてやったし、今日は今日で、なんだってそうワンパターンなんだとか、お前、ほんと身体固いよね、鉄骨入ってんじゃないのって、これ女の子に対してなんだから、本当に困ったものだ。

 でも、わかってほしい。それが演出ってものなんだから。役者の狙いがどうあろうと、どう見えているかを冷徹に伝えること、それが演出の務めなんだよ。そのためのダメだしなんだから。そして、何度も何度もだめ出しを浴びていると、そのうちにだんだんと外から見た自分ってものが見えるようになってくる。つまり、自分が見えてくる。これが大切なんだよ。そこからが勝負なんだ。

 自分と対峙するのは、恥ずかしい。自分と面と向かい合うのは辛い。自分が見切れてしまうのは幻滅だ。でも、そこからなんだと思う。周囲から見えるものも含めて、自分って奴をちょっとでも理解したとき、一気に自分の可能性が広がるんだと思う。広く深い世界が目の前に開けてくるんだと思う。役者としても人間としても。

 だから、僕はあえて厳しくダメを出し続ける。己を知れ!と。

 

 

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たとえ観客が一人であったとしても!

2008-01-27 22:33:27 | 演劇

 この間終わった校内公演、暖かく総括してみたけれど、実はがっくりきていた部分もあった。

 部員たちのことじゃない。芝居の出来の問題でもない。観客なんだ。

 少ない!圧倒的に少ない。引退した演劇部の3年生10を除くと、わずかに13人!どう?この数。このうち先生と外部からのお客さまで4人。生徒はお互い交流の深い吹奏楽部6名をのぞけば、・・・・いくら三年生は試験中だからって、これはないだろう!

 これが置農の現実だ。演劇なんて、だれも関心を持っちゃいない。たとえ、友達がやってるにしてもだ。これ書こうかどうしようか、迷った。だって、ずっごく寂しいじゃないか。文化的後進性と世界の狭さ。自分たちの仲間が必死で頑張って作った舞台なんだぜ。それぞれ部活が忙しいのはわかる。でもねえ、2本のうちどっちか1本でも、見てやろうか、応援してやろうか、って気持ちにならないんだろうか。帰宅部の連中なんかさっさと帰っていくしね。お前ら友達か?って胸ぐら掴みたい気にもなる。

 先生もそうだ。3人はないだろう。自分が教えてる生徒が演じてたら、ちょっとくらい見るだろ、普通は。義理ってもんがあんだろ。好奇心ってものどこ行ったの?10分でいいから覗いてくれよ、それくらい、教師の仕事じゃないか?職員室の様子見ても、どうにも忙しくてって感じじゃないもの。これが全国大会出場する演劇部を囲む現実なんだ。

 愚痴は止めよう!12月の東北大会記念公演では、たしかにみんな頑張ってくれた。チケット販売、パンフレット制作、公演の裏方、余計な雑務を不平を言わず精を出してくれた。本当に有りがたかった。それだけだって感謝しなくちゃいけない。

 そして、今回だって、3人も来てくれた。そう、3人も見てくれたんだ、そう考えなくちゃ。この先生方は常連だ。いつでも必ず来てくれる。そして、毎回暖かい感想を寄せてくれる。ありがたい。さらに、今回は、川西町芸術文化協会事務局長の金子先生がわざわざ来てくださった。2本ともじっくりと見て、終演後、川西町民が自信を持って見ることのできるものが、今この置農演劇部として生まれた、なんて、最大級のお褒めの言葉をくださった。

 そう、だから、演じた部員たちは、満足している。たとえごく少数であっても、真剣に暖かく見守ってくれた観客がいたから、納得している。適切な批評と心温まる激励があったから、やり遂げた充足感にひたることができた。悪天候の中、放課後の貴重な時間を費やして観劇してくれた皆さん、本当にありがとう。

 これからも舞台を作っていく上で、このことを絶対忘れないようにしよう。たとえ一人の観客であったとしても、その熱い眼差しは舞台を、そして、役者を生かすのだ、ということを。

 とは言うものの、やっはり、もうちょっと多くの人に見て欲しかったよな、本心は。

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役者は舞台で作られる

2008-01-25 22:40:27 | 演劇

 置農演劇部校内公演が終わった。たったの1ヶ月、わずか14人で2本の芝居を仕上げた。まずは、その頑張りに、ごくろう!よくやった!!出来の方は?まあ、こんなもんでしょ、と、冷たくいなしておく。1年生が主体だったわりには、どうにか見られるまでに仕上がったってとこか。

 それにしても、やっぱり、舞台だね、役者を育てるのは。日常の稽古なんかじゃない。先に公演ぶら下がってて、役もらって、だめ出しめためた言われて、頭抱えて、悩みにぶちのめされて、めっちゃやたらと悪あがきした果てにたどり着いた本番、これが効くんだよ、役者の成長に。

 逃げられないってことだろうな。逃げたら、もう、部にいられないから。仲間に顔向けできないから。絶体絶命の生命線で稽古する、これなんだよ、これが自分を高める秘密なんだよ。

 それと、やるべきことがはっきりしてるってことも大きい。エチュードなんかで、あれやったりこれやったり、じゃない。役は一つ。とことん徹底できる。1ヶ月とか、2ヶ月とか、長期にわたって一つ役ととっくみあいできるからね。

 今回は、それに全国大会効果が効いてたようだ。だれが3年生の抜けた穴を埋めるのか?大きいよ、主役クラス全取っ替えだからね。主体は2年生で行くとしても、幾つかの役は1年生が大抜擢になる。密かに狙ってんだよ、それ、奴ら。オーディションを兼ねるからって常々言ってるしね。そりゃ大きいよ、全国大会の舞台で準主役やれるっていうのは。

 だから、この競争、しばらく続けてもらおうと思う。ぶら下がったニンジンが美味いほど、馬車馬もひた走るってものだ。明日から、一週間でコント&ダンスの舞台を仕上げる。次はすぐに子どもミュージカルの稽古が待っている。それが終われば、定期公演だ。『どんがら山奇譚』はそれから先。山を幾つも幾つも越えてもらおうじゃないの。公演て山をね。しかも、どんどん高くなる山をね。

 校内公演を見た3年生のへんな激励、これから全国に向けていっぱいしごかれてください。そう、それしかないよ、上達するには。

 

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演出って、楽しいわ!

2008-01-22 22:07:29 | 演劇

 久しぶりに稽古場に顔を出した。そして、口を出した。ダメを出した。いやあ、楽しいね、やっぱ演出は。

 校内公演は、生徒が全部仕切るってことで、新学期始まって以降、極力顔を出さないようにしてきた。こっちは、コント&ダンスと子どもミュージカル2008の台本書きがあったしね。土日もすべて顧問Nに任せて、ひたすら本書きに専念してた。

 で、ようやく、台本が一段落した昨日、稽古に出てみた。生徒任せととは言っても、最後のアドバイスくらいはしてあげないといけないから。演出のトオルは、まずまず全体をしっかりとまとめ上げていた。自身出演しながらだから、きっと大変だったことだろう。

 う~ん、でも、ちょっと、物足りない。なんか、はじけるものがない。きりりと刺さってくるものがない。ここらが、生徒演出の限界なんだろうな。本に書いてある通り、それをさらりとなぞっているだけなんだ。実は、ここから舞台の演出って仕事が始まる。セリフとト書きから、ひっぱだすものを見つけ出して、それをくっきりとした表現で描いていく。思い切ってデフォルメし、極端にセリフを研ぎすます。くすくす笑いは爆笑にあおり立て、感傷は感動へとひっぱあげる。

 こんな作業を3時間ほどかけてやった。稽古場は大爆笑!笑いの発作で、稽古はしばしば中断。役者たちは、手を打って喜んだ。しんみりとしたシーン、緊迫感ある対決シーンは、真剣に取っ組み合ってくれた。演出の一言、演出の一仕草が、ぐいぐいと、芝居を変えていく。役者もその変わり方に驚きの目を見張る。役者はさらに触発されて、新しい動きが作り出される。和やかな中に緊張の糸がピンと張った心地よい時間だった。

 芝居が立ち現れてくる瞬間。役が見え始める瞬間。これを導くのが、まさに演出の仕事なのだと思う。自分の演技が変わったことに満足を感じる部員たち。その誇らかな表情、上気した顔、高ぶる言葉、そんなハイテンションに囲まれて、よし!いい仕事ができた、と納得する、それが演出の喜びってことなんだと思う。

 やっぱり、僕は演出が好きだなあ。

 

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部員と走る!

2008-01-20 20:39:00 | 教育

 こんなこと、きっと、どうってことないんだ。やってる人はやってるし、やってないからってそれがうまくないってことでもないんだ、きっと。

 なにって、それは、部活動で生徒と一緒に走るってことだ。ねっ、どうってことないよね。別に自慢できる事柄じゃない。でも、僕には、なんか、結構大事なことのようにも感じられるんだ。と、言うより、一緒に走ってる自分が、ちょっと誇らしいっていうところかな。馬鹿馬鹿しい、ほんと、つまらない自惚れだ。

 顧問が部員と同じ活動をしたからって、その部活動が強くなるってものじゃない。当然!実力上位の運動部だったら、顧問や監督なんて、とてもとても、同じトレーニングなんてできっこない。監督には監督の任務がある。一緒に走って体力誇示して何の意味がある。それより指導力だ。その通り。

 でも、僕はずーっと走ってきた。ストレッチも筋トレもできるだけ同じメニューでこなしてきた。日頃の練習でも、本番の当日でも、できるだけ一緒に身体を動かしてきた。大したことじゃない。一日の体力トレーニングは、校舎内5周のランニングとストレッチと筋トレ、腹筋・背筋各100回それと腕立て35回、たかだかそれだけのものだ。演劇部だからこんなもん。ばりばりの運動部だったらとてもついて行けない。

 演劇部が何故走るか、なんて、質問する人、わかってないよ。演劇は体力勝負だから。長時間にわたる稽古、リハーサル。そして、極度の緊張感と闘う本番。どれも体力なけりゃ、務まらない。装置の立て込みだってそうだ。平台や装置持ってふらついてたら、邪魔だ!どいてろ!って怒鳴られるものね。僕もこの間怒鳴った。

 でも、顧問が何故走る?まず、部員に気合いを見せるってとこかな。それから、負けられないって目標を示せる。だって、60歳のおっさんだよ。それが、すいすい走ってたり、さっさか腕立てしてたら、やばいぞ!これは、負けてらんねって気になるものね。それと、親近感かな。上下の関係でなく、仲間って感じが生まれる。これって結構大切だ。負かしてやることも大事だし、負けてやって鼻高くさせてやることも重要なんだ。あと、大会の時なんかは、顧問も走るとテンション上がるしね、他の学校にプレッシャーも与えられる。うわーっ、あの学校、顧問まで走ってるよ!なにやってくるかわかんねえ!!ってね。

 なんてことを漠然と感じながら、ずーっと走ってきた。筋トレやってきた。その結果が、全国大会までつながったかな、なんて言ったら、そりゃ考えすぎだろ、って笑われるね。でも、僕自身の効用は間違いない。トレーニングのお陰で、今でも部員達と30分は楽々踊っていられる。大きな病気にも縁がない。50肩なんてものとも縁なく過ぎた。さらに、6年ぶりにスキーに行って、目一杯すべって、筋肉痛ほとんどなし!なあに、これが言いたかったのさ。

 さっ、明日も一緒に走ろう!と思ったら、明日からは校内公演一週間前で、基礎トレ無しだった。残念!何のための部活だ?誰のための演劇部だ?

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