ついにシーズン4だぜぇ。すでに30話以上見てるってこった、なのに、まだ飽きない。一晩2話見たとして2週間以上、ぶっ通しだ。毎晩ネトフリタイムになるのを待ちかねて、PCモニター画面に向き合っているのさ。『オーファン・ブラック~暴走遺伝子』、この桁違いの吸引力、どこから来るんだよ?
題材だよ、クローンという題材の選び方が大成功だ。たった一人の遺伝情報から作られた何人もの人間、姿かたちはまったく同じ。どのような事情からか、様々な地域で、異なる環境に育てられた彼女たちに不気味な影が迫って来る。クローン存在の抹殺を目指す集団、技術を奪取し特許取得を企てる企業、クローンから採取した卵に人工授精させ選ばれた集団を築こうという奇怪な教団、軍事目的への応用を狙う軍秘密組織、人間の可能性をクローンにかける科学者たち。クローンをめぐる思惑が複雑に行き交う。
技術としては、もはや夢物語じゃないからね、すでに中国の若い科学者がヒトクローンを生み出すことに成功してる。ただし、その研究は激しいバッシングを受けて、研究者も学会から抹殺?状態にあるくらい、人間存在の暗部に関わる問題だ。秘密裡にクローンが作られて、社会の中に紛れ込んでいる、って設定の不気味さは存分に説得力がある。
そんなテーマそのものの殺傷力は別にして、同じ顔かたちの人間が複数存在するって設定は、劇作的にもとても美味しい。随所で入れ替わりの妙味が演出できるからだ。危険にひるまぬパンク母ちゃんサラが生化学の先端研究者コシマになりすまし、コシマが平凡な主婦アリソンの学校理事選挙で代役を演じ、野生の殺し屋ヘレナもアリソンとして診療を受ける。もう、目まぐるしくすり替え、入れ替わりのシーンが組み込まれ、緊迫感で物語に引き込む。話しの発端は、DV野郎から逃げてきたサラが地下鉄で飛び込み自殺した自分そっくりの女性刑事になりすまし、その夫とも関係を持つってスリリングな展開なんだから。
このすり替わりの設定てのは、映画やお芝居じゃ定番と言っていいものなんだ。例えば、貧乏役者が伝説の殺し屋に成りすます『鍵泥棒のメソッド』(伊坂幸太郎著)とか三谷幸喜の『THE 有頂天ホテル』なんかもこのすり替わりで笑いに引き込んでいた。多数のクローンの存在で、いろんな形、様々なシーンでこのすり替わりのスリルが作れるんだもの、こりゃ強いよ。最強だぜ。
しかも、このクローンたちの人物設定が実にユニークで惹きつけられる。娘命のパンク母ちゃん、マニアックなレズビアンの研究者、ちょっと自己中の主婦、殺しのプロとして育てられた野生児、対立する立場にも反社会的企業のトップ、これらが、中心的なクローン。ってことはそれぞれに面白い話が引き出せる。五つの物語がパズルのようにオートレースのように入り代わり立ち代わりして進んで行く。どのエピソードも無理なく無駄なくグイグイ引きずり込んでくれる。こりゃ、話も長くなるってもんさ。
いや、実を言うと、じっくり考えると強引なところも多々あるし、途中省略でずるい展開も少なくない。専門的知識にかまけて誤魔化したり、内容が伝わりにくい、なんて欠点もないわけじゃない。
でも、ここは批判的高みから見物なんてしない方がいい。とてつもなく速いテンポと思いがけな展開と惹きつけるシーンの魅力に身を委ねたほうが、楽しいと思う。とかく、面白い、飽きない、惹きつけられる。映画の魅力がぎっちり詰まった強烈弾だ。
あっ、これは言っておかなきゃならんけど、この幾人ものクローン、当然だけど、一人の役者が演じてる。この演じ分けも、見事だ。エミー賞だか取ったてのも納得だぜ。それと映像技術で、クローンが一緒に登場するシーンも随所にあって、こんなこと、映画でなくちゃできないし、よく、根気よく作ったもんだよなって感心する。
サラの、ゲイの弟とか、なんかかつてのゲリラ闘志のような育ての母親とか、気のいいアリソンの夫とか、クローン姉妹を応援するはぐれ刑事とか、サラのモニターの男とか、じゃぁぁぁん!ついに出た男性クローンとか、脇を固める役もどれも魅力的だってことも書いておかなくっちゃならないんだぜぇぇぇ。