先週見学に来た人から、いつもやっている太極拳と速度が違うと言われた。競技太極拳でなければ、決められた速度はないから、自分のやりやすい速度でやればいい。教室で型をするときには、私と同じ速度でなくても構わないからと言っている。歩いたり、話す速さは、人によって違うのだから、太極拳も違って然りである。足の幅やつま先の開く角度、腕の高さなども、骨格やその他の身体状況に合わせて、変えたらいい。競技用のように細かい規定をしていたら、のびのびとすることができなくなる。
太極拳が健康法であるならば、もっと自由でいい。型を自由に変える遊び心があってもいい(それを太極拳とは呼べないかも知れないが)。重心の位置を、前後左右を変えてやるのもいいし、腕を付けずにやるのも、胴体をきちんと使う練習になる。
太極拳には「からだに良い」というイメージがあり、実際にも大腿四頭筋や前脛骨筋を鍛えることができるらしい。私は太極拳だけでなく動功(動作のある気功)も教えているが、気持ち良さ(リラックス感)を比較すれば、動功が良いという人の方が多い。気功は動作があっても簡単なので、緊張することなくリラックスしてできるからだろう。それは結果的に大脳を休ませることになる。私は、健康面だけを見れば気功に分があると思っている。
太極拳を学ばれる方は、まず自分が何を求めているのかをはっきりとさせなければならない。武術(実践)的太極拳なのか、競技太極拳なのか、健康太極拳なのか。指導者も、健康をその目的としているのであれば、健康の根拠は何処にあるのかを教えなければならないだろう。
太極拳の優位性は知名度と、動作の美しさにある。そこに魅力を感じているならば習えば良いし、もし特に太極拳にこだわりがなく、目的が健康のためということであれば、何も難しい型を何年もかかって覚えるよりも、その日からできる気功や野口整体の方が、良いのではないかと思うのである。