T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1199話 [ 「鬼火」を読み終えて 3/? ] 5/26・木曜(曇・雨)

2016-05-24 16:24:04 | 読書

[危急の夜]

  同じ権兵衛酒屋から出発した長谷川平蔵と密偵の五郎蔵が、

  別の場所で襲われる。

1章

 頷きあった浪人4人が刀を構え、平蔵が乗っている駕籠へ襲いかかろうとした。

 そのとき、「人がいるぞ。斬り合いだ!!」と、武家屋敷の土塀の潜戸から出て来た男2人が、大声で叫んで逃げた。

 浪人どもが、中間たちの声に気をとられたのは当然だ。

 平蔵は、この一瞬を見逃さず、座ったままの自分の躰を駕籠から投げ出すように転げ出て、大刀を抜きはらった。 たちまちに浪人どもに傷を負わせた。

 刺客3人は傷を追いながら逃げて、1人は傷が深くしばらくして死んだ。

 平蔵は、辻番の手を借りて、死んだ刺客を役宅に運び、人相を描くように指示した。

2章

 曲者どもは、かの権兵衛酒屋の亭主夫婦を襲い、盗賊改方の長官〔かしら〕の一命を奪おうとした。これは何を意味するのか? 

 与力・佐嶋は、この際、お浜を厳しく糾明いたさねばと、帰宅した平蔵へ進言すると、平蔵は、もう少し傷が治るまで待てと言う。

―中略―

 翌朝、平蔵が洗面を済ませて居間へ入ったところへ、密偵の五郎蔵が、笠屋の勘造が殺害されたことを急報した。

 朝早く、同心・木村と五郎蔵が、同心・沢田小平次密偵・仁三郎の組と権兵衛酒屋の留守番の交替をして、外へ出た。 数歩も歩かないところで、木村と五郎蔵の耳に勘造殺害の情報が入ったので、木村が勘造が住む裏長屋に走り、五郎蔵が役宅へ駆けた。

 おのれ、酷いことをと、平蔵は怒りを抑えきれなかったし、勘造を呼び寄せたことを曲者が嗅ぎつけたので、(わしが、密かに吉祥寺門前まで出向くべきであった)と、それが悔やまれてならなかった。

 勘造を殺したということは、相手が、権兵衛酒屋の女房の前歴を盗賊改方に(知られたくなかった)からだと看てよい。 女房のお浜のみか、お浜の前の亭主だった小千住の笠屋・友次郎のことも知られたくなかったのではあるまいか。すると、いまは亡き友次郎という男は、もしやして、(盗賊の一味でもあったのか)と、平蔵の推理は飛躍した。

 それにしても、権兵衛酒屋の亭主が女房の打ち捨てて逃げたというのは、(盗賊改め方と名乗ったわしを怖れてのこと)だとすれば、亭主もまた、盗みの世界に関係があることになる。

 平蔵は、ともあれ、勘造が住んでいた裏長屋へ行ってみようと思った。

 与力・佐嶋へ駕籠の用意を言いつけたとき、昨夜から平蔵の指示で、佐嶋が差し向けていた与力・玉井広之進密偵・鹿像が小千住の友次郎の探索から戻ってきた。

<権兵衛酒屋の亭主夫婦と勘蔵を襲い、平蔵の一命を奪おうとしたのは同じ一味か

3章

 与力・玉井の報告によると、友次郎が住んでいた小千住の家は古着屋になっていて、この古着屋は友次郎と何ら関係のないことが分かった。 また、近辺の店などで聞き込みをしても、友次郎は、よく家を留守にしていたことぐらいだし、お浜のことについても、役立ちそうな話は得られなかったとのことだ。

 平蔵は、小千住には鹿像だけ残して、玉井ら3人は役宅に引き揚げさせた。

4章

 翌日の朝。 同心・木村と五郎蔵夫婦は、権兵衛酒屋に詰めていた同心・沢田と仁三郎の組と交替した。

 夕暮れが迫ってきたころ、紋付の羽織・袴をつけた人品の良い老人の侍が、店の主は居らぬかと入ってきたので、五郎蔵が、「夫婦して他行中です」と返事した。

 いずれ、出直して参るとしようと、老人が立ち去ったので、五郎蔵は、「このことを長谷川さまへ……」言い、「行き先を突き止めてまいります」と、老人の後を尾けた。

5章

 五郎蔵は、権兵衛酒屋を出て来た自分を尾けていないかと、二度、三度と、背後に気を配って、老人を尾行した。

 老人は、六百石の旗本・清水源兵衛の屋敷の門へ消えた。

 五郎蔵は、本人か用心か確かめようと思ったが、ともかく、長谷川さまのお耳へと身を返した。

 武家屋敷が立ち並ぶ道を急ぐ五郎蔵の背後から、突然、ひたひたと迫る足音が起こった。その足音は次第に速度を加え、一定の間隔を置いて追尾してきた。

6章

 上野山下の提灯店と呼ばれる岡場所の「みよし屋」に2人の客が入り、一人は亡き密偵・伊三次のいい仲だったおよねの客になった。

 時間が過ぎて、およねが、階下に降りているときに、およねの客の浪人の部屋へ、連れの浪人が来ていて、

「おい、高橋。評判の鬼の平蔵を叩っ斬ってみぬか。50両もらえるぞ」

 と言っているのを、階下から戻った廊下で、およねが耳にした。

7章

 およねの話を聞いて、みよし屋の主の卯兵衛は、同心・沢田と深い関係がある近所の御家人の石塚屋敷に駆けた。

 石塚才一郎自身が役宅へ知らせに、石塚家の小者の浅吉に浪人の尾行をさせることにした。

 卯兵衛は、石塚に、およねが、「わたしの客になった高橋浪人は、また来ると言っていた」ということも告げた。

 尾行者はおよそ三間の距離を保ち、執拗に五郎蔵から離れぬ。

 人通りのない寺の土塀が続く道に来たとき、追い迫った尾行者の一刀が、五郎蔵を襲った。

 相手は一人でなく、もう一人が前に回ろうとしたので、五郎蔵は、弾みをつけて土塀を飛び越えた。

 尾行者も少し遅れて土塀を越えた。

 五郎蔵は、墓地の中を走った。

 <五郎蔵を襲った曲者は何者か>

                                                 

                        次の節「旧友」に続く

 

 

 

 

 

 

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1198話 [ 「鬼火」を読み終えて 2/? ] 5/25・水曜(曇・雨)

2016-05-24 10:05:20 | 読書

「あらすじ」

    ※ 登場人物の相関関係から捕物をひも解く様子を中心に記述した。

    ※ 不審に思った事柄を黄色で、ネタバレのところを青色で彩色した。

    ※ 伏線、ポイントと思われたところをオレンジ色で彩色した。

    ※ 登場人物が初登場したところを灰色で、主要人物には下線を施した。

    ※ 節のタイトルの下に、その節の概要を短文で添えた。

[権兵衛酒屋]

  権兵衛酒屋の亭主と女房、それと女房の昔を知るか笠屋の権蔵爺が曲者に襲われる。

1章

 長谷川平蔵は、春めいてきた二月に、巣鴨村にある実母の実家で、平蔵の従兄に当たる三沢仙右衛門宅を訪ね、一泊した。

 翌日、役宅へ帰る途中、仙右衛門から紹介された駒込の居酒屋「権兵衛酒屋」に寄ってみたくなって、その表に立った。

 美味しい酒を出すとの評判から、酒好きの仙右衛門が去年の秋に、この酒屋に入って飲んでいた。 そのとき、羽織、袴で正装した老人の侍の先客が、立ち上がり勘定を払って、元武士らしき亭主に、

「丹波守様が亡くなられたぞ。 知っているか?」

 と低い声で問うたのが、仙右衛門の耳へ入ったということであった。

 仙右衛門の、この話に、平蔵は甚〔いた〕く興味をそそられていた。

 権兵衛酒屋の戸障子に手をかけた平蔵の視線の先に、彼方の竹藪の中へ、さっと隠れた人影が見えた。

2章

 酒を亭主が運んできた。 女房のほうは武家の出ではないようだが、この老亭主は、

(まさに、昔は両刀を帯していた……)

 ことに間違いないと平蔵は思った。

 やがて、勘定を払い、外へ出ようと、平蔵が戸障子を引き開けたとき、道の向こう側に蹲っていた黒い影が一つ、背後の木立へ走り込むのが見えた。

 とにかく提灯だと思い、往還へ出た平蔵は、釘抜き屋で提灯を買って外へ出たとき、怪しい者の気配は感じなかった。

(わしを尾けていたのではないらしい。 あの男は権兵衛酒屋を見張っていた……)

 と思い、「見捨てても置けまい」と呟き、権兵衛酒屋の裏手に出て、竹藪の中に佇み、来たるべきものを待っていた。

 しばらくすると、酒屋の裏口へ忍び寄った二つの影を平蔵は見た。

 二人の曲者は浪人風で、ゆっくりと大刀を抜きはらって、戸を開けようとしたが開かなかったので、体当たりを食らわして、中へ飛び込んだ。

 平蔵も、二人の後を追って飛び込んだ。 店の行灯がまだ消えてなかったので、全てを捉えることができた。

 曲者の襲撃は裏手のみでなく、表からも押し込み、いきなり、女房へ一太刀浴びせて傷を負わせていた。

 しかし、平蔵の剣の凄まじさと、「神妙にせよ。 盗賊改方・長谷川平蔵である」との叱咤に恐れをなして、三人は逃げ、顔を切られた一人は逃げ遅れ、平蔵の当て身をくらって失神した。

 威嚇して流血を避けようと思い、とっさに名乗ったわけだが、これがいけなかったわけか、亭主は、いつの間にか、女房を置き去りにして逃げていた。

<酒屋の亭主が何故、複数の浪人に襲われたのか。しかも、なぜ女房を捨てて逃げたのか>

3章

 傷を負った女房は、自分の名だけをお浜と名乗ったが、亭主の名はあくまで権兵衛だというだけだった。 また、顔を斬られた浪人も、与力と同心の訊問に応えようとしない。

 平蔵は、今後の訊問に応えられるように、お浜と浪人の刀傷の手当てを火盗改方の外科医に任せて、権兵衛夫婦の前身をものがたる品物や書き物を探索するために、権兵衛酒屋へ同心・酒井祐助を出張らせた。

 そして、従兄の仙右衛門が見かけた老武士が再度、権兵衛酒屋を訪ねるかもしれないので、もし店に来たときは、他行中といって帰ってもらい、その後で、尾行して行き先を突き止めるために、同心と密偵を酒屋に詰めさせた。

 しかし、どちらも成果は出なかった。

―中略―

 それとは別に、平蔵は、丹波守と名乗る人物で、近頃、死去した者はいないか調べてみると、半年ほど前に、赤坂の溜池に屋敷を構える渡辺丹波守直義という大身七千石旗本が61歳で病死していたことが分かった。

 七千石の幕臣・渡辺丹波守の名が浮かび、襲われた酒屋の亭主が大身旗本の元家臣であれば捨てておけぬと、若年寄・京極備前守へ届けることにした。

 備前守からは、いま少し内密にして、おぬしが探ってみてもらいたいと指示された。

<お浜は、亭主を助けようとして、なぜ自白しないのか>

4章

 事件の後、五日が過ぎた。

 権兵衛酒屋を襲って捕えられた傷負いの無頼浪人が、取り調べられる前に、「浦田又八」と名乗っただけで、心の臓の発作が襲ったらしく、牢番に、

「よ、し、の」と言って息絶えた。

 平蔵は、同心に、葬る前に、絵師・石田竹仙を呼んで人相を写しておけと命じた。

5章

 平蔵は、浪人姿で権兵衛酒屋へ向かった。

 今日、権兵衛酒屋へ詰めていたのは、同心・木村忠伍密偵の大滝の五郎蔵・おまさ夫婦である。

 その日、周辺を探索していたおまさから、平蔵に、

「吉祥寺門前で茶店を出している与吉から、同じ吉祥寺門前で笠屋をしている勘造という老爺が、権兵衛酒屋のお浜の素性を知っているそうだ」

 との情報を知らせた。

 平蔵は、同心・木村に、「笠屋の勘造を此処へ連れてまいれ」と命じた。

6章

 お浜が、口を割らないので、知っていることを話してくれと、平蔵が、笠屋の勘造に問うと、

「30年ほど前に、しばらくぶりに、小千住で同じ笠屋をしていた友達の友次郎のところへ行くと、お浜さんを指差して、今度の女房だと引き合わされた。それから、20年ほどして友次郎が亡くなったので、すぐに小千住に駆けつけると、お浜さんは、店をたたんで何処かへ消えていました。その後、3年ほど前に、この酒屋の前を通りかかり、お浜さんを見つけて、名前を呼ぶと、かぶりを振って違うと言われ、それっきりでした」

 と正直に答えた。

 平蔵は、おまさに、役宅へ行き、与力・佐嶋忠介に、今の話をして、「小千住の友次郎・お浜夫婦について知れる限りを探るよう」に伝えろ、わしは、別の探索のため、此処から真っ直ぐに三沢家へ行って泊ると言う。

7章

 平蔵は、三沢仙右衛門から権兵衛酒屋の亭主を尋ねて来た老武士の人相や姿かたちを聞きとりたいと思って権兵衛酒屋から外へ出た。

 表通りへ出たとき、板橋への帰り駕籠だと声をかけてきたので、平蔵は疲れていたこともあり、その駕籠に乗ることにした。

 それより少し前のことだが……。

 吉祥寺門前の笠屋の勘造が店を閉めて、晩酌の準備をしていると、ものも言わずに、三人の男が押し込んで来て、短刀を勘造の腹に突き付けた。

「盗賊改方に何を喋ってきやがった。それを言え」と脅かす男は、先日、平蔵が権兵衛酒屋へ初めて入ったとき、外で見張っていた怪しい男なのだ。

「さ、早く言え」と言われて、勘造の細い小さな老体が、瘧〔おこり〕のように震えている。

 同じころ、平蔵を乗せた駕籠は、前田、藤堂の両屋敷の練塀に挟まれた道を進んでいた。

 他に誰も通っていない暗い道に、駕籠がさしかかっていた時、前後を4人の浪人風の男に囲まれて、2人の駕籠かきは一太刀で斬殺された。駕籠の中の平蔵は、抜刀した浪人に取り囲まれ、動く気配はない。

<駕籠の平蔵を待ち伏せていた浪人は、何者なのだ

 ちょうどそのころ、笠屋の勘造の店の裏手に、近くの古着屋の女房が惣菜を持ってきた。 そのとき、勘造の家の台所から3人の男が出て行くのが見えたので立ち止まった。

 古着屋の女房が、男たちが遠ざかるのを待って、中に入ると勘造が死んでいた。

 <盗賊改方に権兵衛酒屋の女房の何を喋ったとして、何者に権造は殺されたのか>

                                                        

                     次の節「危急の夜」に続く 

 

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