「 概 要 」
鬼平犯科帳15巻に掲載された「鬼平犯科帳」シリーズでの初めての特別長編の作品。
二夜続けて腕利きの同心が殺害された。 その手練は、半年まえ平蔵を襲った兇刃に似ている。 明らかに何者かの火盗改方への挑戦だ。 あの大鴉のような男が向けてきた刃の凄さを思い返した平蔵は、湧き上がってくる闘志を押さえかねて思わず身震いした―ー恐るべき敵に立ち向かう平蔵の縦横の活躍を描く。 初登場!長編ならではの興趣満々。(裏表紙より)
堀本父子の二組の盗賊一味の動きが、江戸市中を中心に関東の東西に広がっている。 長谷川平蔵は、徐々に焦点を絞り、少ない持ち駒の盗賊改方を有効に使い、盗賊を捕縛していく。 その捕物の物語の中に、盗賊改方の与力・同心、密偵に対する平蔵の十分な気配りと、長谷川平蔵と辰蔵親子、盗賊・堀本伯道と虎太郎親子の情愛を織り込んでおり、長編ながら、途中で飽きることなく、むしろ、読み続けたくなるほどで、最後まで面白く読ませてくれた。 それは、池上正太郎独特の、文中に登場人物の心の中を( )で記述する方法によることも一因しているだろう思う。
なお、この作品は、ネタバレの殆どを7節「秋天清々」の最終節に持って来ているが、それでも、文章のリズムにより、最後まで続けて読ませてもらった。
「あらすじ」に続く。