蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

あるじは家康

2018年01月06日 | 本の感想
あるじは家康(岩井三四二 PHP)

「あるじは~」シリーズ第3弾。
家康の部下といえば、本多正信・平八郎、最近だと井伊直政などが思い浮かぶが、あまり有名とはいえない人を取り上げているところがこのシリーズの特徴で、本作でも同様(石川数正、大久保忠隣が主人公の編もあるが)。

特によかった2編は奥平貞昌を主人公にした「裏切者」と茶屋四郎次郎を主人公にした「有徳者」。

「裏切者」は長篠合戦の前哨戦で長篠城に籠城して持久する話。貞昌は武田方から寝返ったばかりで、その微妙な心理状態と籠城戦の細部の描写が印象的。
長篠合戦の頃にはすでに武田方は衰え織田方は余裕の勝利を得た、というというのが私のイメージだったのだが、本作を読むとそれが間違いだったことがよくわかった。
当時は、三方ヶ原から数年後に過ぎず、武田軍は徳川・織田にとって重大な脅威だったし、長篠合戦で一歩間違えば(例えば長篠城が早々に降伏していれば)家康の運命も全く違うものになっていたかもしれなかったようだ。

「有徳者」は家康の伊賀越えの話で、徳川家出入りの四郎次郎はその道案内をする。四郎次郎は、実は武士になりたかった、という設定に趣きがあり面白かった。また、家康方が本能寺の変の発生に気づくプロセスにリアリティがあって、きっとこんな感じだったろうな、と思えた。
コメント
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