蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

インテリジェンス 武器なき戦争

2007年01月08日 | 本の感想
インテリジェンス 武器なき戦争(手嶋龍一 佐藤優)

昔、会社の研修で名指しされ「CIAは何の略ですか?」と尋ねられたことがあった。まるでヤラセのように講師の罠にまんまとはまり、「中央情報局」を直訳(?)して「セントラル・インフォメーション・エージェンシー」と答えたが、「Iはインフォメーションではなくてインテリジェンスだ」と指摘され、それから延々とインテリジェンスの定義について説明を受けたことがある。

本書ではインテリジェンスを「外交に係る情報戦に不可欠な武器であり、政治指導者が舵を定めるための羅針盤である」と定義しているが、まあ、有体にいうとスパイ活動のこと。スパイといっても007みたいな肉体派・アクション系ではなくて、スマイリーのような頭脳派・安楽椅子系のイメージに近い活動だろう。

この本で強調されるスパイの資質は、特に目新しいものではなくて、以下の2点である。
①対象国の公開情報に精通している。
②対象国に広汎な人的ネットワークを持っている。
本書では、①、②とも日本人が得意そう(②は苦手なのでは?と思われる向きもあるかもしれないが、日本人は仕事となると外国人とうまくつきあえていると思う。そうでなければこれだけ輸出や現地生産がうまくいくわけない。著者(佐藤さん)自身が、内向的な性格にもかかわらず、外務省の仕事となればソ連政権内にネットワークを築くことができた、と述べている)なのに、国としてのインテリジェンス能力が低いのはリクルートや養成機関が貧困であることが原因であるとしている。

また、本書での主張自体とはあまり関係ないが、この本の終わり近くで紹介されている「杉原サバイバル」(杉原千畝に救われたユダヤ系の人)のシカゴ商取の元会長と鈴木宗男さんのエピソードが印象的だった。
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ブロークバック・マウンテン

2007年01月03日 | 映画の感想
イニスとジャックは、二人だけで山奥へ数ヶ月間籠もって羊の群れの世話をする仕事を請け負う。ジャックは男色の気があり、二人は(同性ながら)愛し合う仲になるが、請負仕事が終わって別れる。数年後、結婚したイニスのもとをジャックが訪れる。二人は旧交を温めるが、イニスの妻は二人の仲に気づいてしまう(このシーンがとても痛々しい)。それもあって、やがてイニスの家庭は破綻し離婚する。二人の仲はその後も続くが、頻繁に会うことを求めるジャックに、イニスはついていけないものを感じる。

二人が逢瀬を重ねる山奥の風景が非常に美しく描かれ、そこが二人にとっては天国であることが表現される一方、反対に家庭内の問題に患わせられる日常生活は地獄として描写される。このコントラストがビビットで印象的だった。

1950~60年代のアメリカ中西部では同性愛は強烈な禁忌であったようで、「許されない愛」の許されなさ(?)のレベルがとても高いことで、せつなさ、やりきれなさが一段と盛り上がる。
濡れ場(?)の場面はあまり見苦しいものではなく「同性愛」というテーマではあっても、あまり退いてしまうような内容ではない。
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