蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

指揮官の決断

2005年07月04日 | 本の感想
三野正洋さんの書いた「指揮官の決断」(新潮社OH文庫)を読み終わりました。

えー著者には申し訳ありませんが、この本はブックオフで105円で買いました。
いわゆる新古書店ができてから、よほど読みたい本以外、普通の本屋で買うのにためらいを感じるようになってしまいました(結局は普通の本屋で買うことが多いのですが)。
また刊行の古い本だと図書館にないかなあ、ということも頭をかすめます。
本を読む方にとってはありがたい限りですが、印税を糧としている方にはまことに暮らしにくい世の中になったものです。ちょっと前に読んだ喜国雅彦さんの本棚探偵シリーズでも、新古書店に対するうらみつらみ(?)がそこかしこに展開されてました。もっとも「本を捨てるときは表紙を破って捨てよう」という提案は、いくら何でもいきすぎで、印税生活者のエゴに近いものも感じました。
しかし、ケチな私でも本棚探偵シリーズは2冊とも箱いりのかなりお高めの本を普通の本屋で買いました。著者検印とか、月報とか、ハコとかのギミックも良いのですが、著者の心意気みたいなものを買いたい気も少しあったりして(前記と矛盾してますが)。

話がそれました。「指揮官の決断」は第2次世界大戦中の戦闘を紹介する中で、指揮官の判断や資質について著者が評価したものです。
今では手にはいりにくいとは思いますが、もしごらんになる機会があれば「キスカという小島と二人の日本軍人」というエピソードはぜひ読んでいただきたいと思います。戦争中という異常な空間にあっても、人間らしい、なおかつ、実務的にも秀でた指揮や判断ができた日本軍人も確かに存在したのです。
私もキスカの撤退戦が成功したということは知っていましたが、ここまで水際だった素晴らしい成果であったことはこの本で初めて知りました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

希望―行動する人々

2005年07月04日 | 本の感想
スタッズ・ターケルさんの書いた「希望―行動する人々」(文春文庫)を読み終わりました。
9.11後(ばかりではありませんが)のアメリカでの市民運動家(市民ばかりじゃなくて議員とかも対象にしていますが)のインタビュー集です。

市民運動とか、労働運動とかをやっている人って、それが職業化している面もあるとは思いますが、まあ、外目で見てるとかなり熱心だなあとは感じます。運動に注いでいるのと同じパワーを投入すれば、普通の仕事でかなりの成果が残せそうです。
誰か(確か森博嗣さん?)が書いていましたが、「何とかできたら(曲芸のようなことが多い)100万円」というテレビ番組があるけど、「何とか」をマスターするのに要した時間を普通に労働に投入すれば軽く100万円は超えそう、というのにちょっと似ているような・・・(似てないな)。

偶然、この本を読む前に「華氏911」のDVDを見ました。あまりにも一方的にブッシュ大統領を攻撃しすぎていてかえって「そこまでいわなくても」とか「誰でも欠点くらいあらあな」とか思ってしまいました。
しかし、アメリカが自由主義とかの理想のために何かをしようとしているという幻想とか錯覚すら抱かせてくれないような、生々しさやえげつなさが、最近の同国の行動には目立つ気がします。(もう少しうまくカムフラージュとかしてほしいものです)
もちろん、この本の登場人物のように理想とか希望とかを捨てていない人もいるのでしょうが、こういった本が出版されること自体、そういう人が「稀少種」になりつつあることの証明かもしれません。(悲観しすぎか)
ところで、左一辺倒という感じのこの本の版元が文春というのも、違和感があります(そう感じる私のほうが時代遅れ?)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする