蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

死神の浮力

2013年08月10日 | 競艇
死神の浮力(伊坂幸太郎 文芸春秋)

伊坂さんの作品の中で2番目に好きな「死神の精度」の続編が出たので、珍しくハードカバーの新刊を買った。

作家である主人公は、サイコパスらしい男に娘を殺されるが、この男は裁判で無罪になってしまう。主人公と妻は復讐計画を練り、拘留から解放された男を追う。主人公の傍には死神:千葉が現れるが、男にもまた別の死神がついていた・・・という話。

千葉と登場人物のかみ合わない会話は、相変わらず軽妙で楽しめし、死神の音楽へのこだわりもユーモラスなんだけど、「死神の精度」に比べると、(こちらは長編ということもあってか)主筋のストーリーが重たい感じだった。

サイコパスの男の狡猾さや残忍さが、読んでいても腹立たしいほど強調されるので、最後の(例によって“死神ルール”?を逆手にとったような)オチは意外性があり、かつ、カタルシスもあってよかったが、「死神の精度」を上回ってはいないなあ。まあ、期待度が高すぎたせいかもしれませんが。

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