冬薔薇
渡口義一(小林薫)は砂利運搬船を運航する会社を経営している。船は老朽化し乗組員もベテランばかり。息子の淳(伊藤健太郎)は後を継ぐ気配がないどころか、学校にもロクに通わずフーテン生活をおくっていて義一は扱いに悩んでいた・・・という話。
淳をめぐるストーリーは予定調和をことごとく裏切っていく。「この手の映画だとこうなるだろうな」という予想は全く当たらない。
例えば、淳の属していた不良グループのリーダーは自己中心的なひどい奴なので、「きっとこいつは最後にひどい目にあうな」と思っていたら、そんなことは全然なくて、むしろラストでは意外な行動にでる。
淳の従兄弟は真面目そうな風体で塾の講師をしていて、淳の反面教師的な役割を演じるのかと思いきや、実は・・・などなど。
なので、ラストシーンはどう解釈すべきなのか、オリジナル脚本を書いた監督が見せたかった主題は何なのか、理解できずじまいだった。
一方、義一の妻(余貴美子。海運会社の実質的経営者)や船員(石橋蓮司、伊武雅刀ら)を巡るストーリーは典型的人情話風で安心して?楽しめた。
年老いたベテランで、身寄りがなくて船で暮らしている船員役の石橋蓮司もとても良かった(特に義一と酒を酌み交わすシーンがいい)が、圧巻なのは余貴美子で、もう、実際にいる人のドキュメンタリーを見ているようで、その存在感はすごかった。