goo blog サービス終了のお知らせ 

蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

金融庁戦記

2022年12月09日 | 本の感想
金融庁戦記(大鹿靖明 講談社)

1983年東大を卒業して大蔵省に入り、証券取引等監視委員会で長く検査に携わった佐々木清隆の活躍を描く。

金融庁は、その名の通り、銀行、保険会社等を含む金融業界全体を管轄しているのだけど、本書で取り上げられるのはほとんどが証券業界。なので「証券監視委戦記」が実態。でもそれでは地味すぎるので「金融庁戦記」になったのだろう。
バブル後の損失補填、とばし、粉飾、ライブドア事件等々が取り上げられているが、証券業界ばかりが悪いことをしているようなムードが醸し出されてる。他の業界だって・・・(以下略)

佐々木さんがものすごい辣腕というわけでもなくて重要な事件の捜査に携わっていたのは主に検察からの出向者だったようだ。
むしろIFIARの招致成功こそ、彼の業績として讃えられるべきものだと思うが、それでは盛り上がらないので、無理矢理あまり関係がなかった事件をとりあげたのでは?と思えた。つまりタイトル同様売らんかな、という・・・(以下略)

監視委の委員長だった佐渡賢一さんも登場する。検事出身ながら事後摘発ではなくて、監視と牽制により事案を発生させないことが重要として、摘発一辺倒だった監視委の方向性を変えたという。行政官としてまっとうな感覚をもった方だったんだなあ、と感心した。

日本の会社に限らないのかもしれないが、タックスヘイブンでダミー的会社を作った時、(名義貸し業者が皆同じなので)私書箱の番号が同じで、監視や捜査する方からすると怪しい会社だとすぐバレた、という話が面白かった。悪事をたくらむ時は単純簡単な対策を面倒くさがらずに漏れなく行うことが大事だと思った。