蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

しあわせの絵の具

2019年08月17日 | 映画の感想
しあわせの絵の具

モード・ルイス(サリー・ホーキンス)は、リウマチをわずらい手足に障害がある。両親は亡くなり親戚の家に居候するが居心地は最悪で、近所の雑貨屋でみつけた家政婦募集のチラシを見て魚の行商や便利屋をしているエベレットの家で暮らし始める。ひねくれ者のエベレットとの暮らしはギクシャクしていたが、やがてモードは家にあったペンキなどで絵を描くことに喜びを見出す・・という話。

結局、モードはカナダで最も有名な画家になるのだが、生涯田舎の小さな家(家中に絵が描かれている)でエベレットと暮らしたそうである。
私は、貧乏くさい話が好きなので、本作は好みのド真ん中といった感じの内容で、借りてきたDVDを2回みてしまった。

モードの絵は素朴で、絵が上手な小学生の作品みたい、若いころに彼女の作品をみたら、そんなふうに思ったかもしれない。しかし、年をくった今みると、絵に可憐さというか、鮮やかな色で描かれた単純な構図の絵なのに静かなペーソスが感じられて、じっと見入ってしまうのだった。

アメリカやカナダって素人画家が近所の雑貨屋とかに自分の作品を(とても安い値段で)売りに出して、普通の人が気に入ったらそれを買い、まれに高く評価されてプロになってしまう、といったカルチャーみたいなのがあるように思う。日本でも江戸期の浮世絵なんかは広く市場で売られていたのだけど、現在では、絵を買う、ってお金持ちの道楽というイメージしかないのは残念だなあ。
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希望のかなた

2019年08月17日 | 映画の感想
希望のかなた

シリア内戦で故郷を追われたカーリドは、貨物船にまぎれこんでフィンランドへ入国する。難民申請をするが、強制送還が決まってしまい、収容所から脱走する。
街中でレストラン経営者のヴィクストロムと出会い、彼に匿ってもらってレストランで働くうち、従業員ともうちとけるようになる・・・という話。

アキ・カウリスマキ監督は「名前だけは聞いたことがある」人だったのですが、アート系映画の監督として有名なようです。

意図的な演出なのかもしれませんが、役者やセットが数十年前の映画の雰囲気で、ストーリー展開もぎこちない感じ。
そこから生まれてくるペーソスとかユーモアを味わうべき映画かもしれませんが、観ていてあんまり楽しい気分にはなれませんでした。

カーリドが働くレストランでは客寄せで寿司をメニューに加えようとするのですが、こればトンデモな代物で、日本にある外国料理のレストランの中にもあんなのがありそうなんて思えました。それにしてもフィンランドでも寿司が人気なんですね。
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破滅の王

2019年08月17日 | 本の感想
破滅の王(上田早夕里 双葉社)

1930~40年代、石井四郎(後の中将)が設立した満州の細菌戦研究所に勤務する藤邑は旧知で天才的研究者の真須木がR2vという(実はドイツから提供された)細菌を強化して対抗手段がない細菌兵器を開発したことを知る。このR2v(キング)をめぐって上海の防疫研究所の研究員:宮本、六川や陸軍の灰塚少佐の活躍を描く。

著者はSF系というイメージが強いので、そういう話なのかと思って読み始めたら、(キングの設定に多少そういう雰囲気はあるが)実話も交えた歴史ミステリのように思えてきた。しかし、読み進めると(フィクションではあるものの)化学(生物)兵器批判がテーマのようにも思えて来て、焦点・主題が絞り切れないまま終わった感じ(読み方が悪いだけのようにも思うが)。

戦時期の上海の情景、雰囲気がうまく表現されていた。あやうく危険もあるけど魅惑的な都市であったことが伺えた。
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