蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

約束

2018年07月14日 | 本の感想
約束(ロバート・クレイス 創元推理文庫)

爆薬を含む化学製品を作る会社の幹部から、会社のカネを横領した社員(エイミー)の探索依頼が探偵(エルヴィス・コール)にもたらされる。コールはエイミーの息子(テロの被害者で故人)の友人が住んでいたと思われる家を張込みする。別の案件でロス市警警察犬隊スコット・ジェイムズ巡査と相棒のシェパード犬:マギーもその家の捜索に訪れるが、その家から逃げ出したと思われる白人男性を追うが・・・という話。

アメリカ製のテレビドラマや映画のノベライズのような内容で、定期的?にヤマ場が発生し、犬と人間の絆、探偵やその友人たちのハードボイルドぶり、料理に関するちょっとした蘊蓄、二転三転するプロット、等々、計算しつくされた構成・筋書きだったと思う。

なので、ドラマを見ているように最後まで楽しめるのだけど、読み終わると何も残らないような気がして、少しさみしいのだった。「読み終わると何も残らない」というのも著者の狙いの一つなのかもしれないが。

翻訳者によると、本書はスコットものの人気作の続編であると同時にコールものの長いシリーズの最新作でもあるようで、長くこれらのシリーズを読んできた人であれば、もっと楽しめるのだと思う。
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猟師の肉は腐らない

2018年07月14日 | 本の感想
猟師の肉は腐らない(小泉武夫 新潮文庫)

著者自身がモデルの主人公(泉山醸児)が、友人で山奥に住んで猟師をしている猪狩義政(義っしゃん)を訪ねて、福島県の八溝山地へ出かける。そこで主人公は義っしゃん手製の猪肉、川魚、虫、蛇や蛙の料理を肴にして毎夜酒盛りをし、昼間は様々な自然をいかした山の暮らしの知恵と工夫を教えてもらう・・・という話。

私が子供のころ、醤油や味噌は近所の店の自家製のものを使っていた。そういう醤油屋、味噌屋さんが次第になくなり、スーパーで買った大手メーカの醤油や味噌を初めて味わったとき、ものすごく薬くさく感じて全くおいしくないことがショックだった思い出がある。野菜も家の裏の畑でとれたものを食べていたのだが、そのころの野菜に比べると、今どきのトマトやキュウリは明らかにクセや味が薄い。

本書を読んでいると、本当の肉や魚、野菜の味は、スーパーで売っている大量生産品?とは大分違うんだろうなあと思わずにいられない。

義っしゃんがふるまってくれる料理はどれをとってもとんでもなくうまそうで、読んでいると酒が飲みたくなって仕方なかった。
忘れないように?メモしておくと、
夏の部 1日目夕食
猪肉のくんせい、猪肉・岩魚の干物・ジャガイモ・ニンジン。・切り干し大根の味噌煮込み、トマト・キュウリの輪切り、岩魚の甘露煮、蝗の佃煮、(主人公のお土産の)くさやと粕取焼酎
2日目夕食
野兎の灰燻し、兎汁、山女の山ぶどう酒漬け、
3日目朝食
山羊のミルク、蝉の付け焼き、麦飯、大根とキュウリの味噌漬け
3日目昼食
カメムシの幼虫のホウロク焼き、カブトムシの蛹焼き(これがとてもうまいそうである)
3日目夕食
蜂の子(蛹)の炊き込み飯、赤マムシ入り味噌汁、自家製納豆
4日目夕食
どじょう汁(どじょう・ゴボウ・ニラを酒と醤油で煮たもの)、

冬の部 1日目夕食
岩魚と山女のカレー煮(これは主人公が作った)
2日目夕食
どじょう汁(冬の野菜いり)
3日目夕食
どじょう汁(昨日の残り)、野兎の串焼き

出てくる料理がうまそうなのもさることながら、義っしゃんの飼い犬、クマもとても愛らしい。終盤でクマが活躍する場面は胸がおどった。
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