蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ハンニバル戦争

2017年01月22日 | 本の感想
ハンニバル戦争(佐藤賢一 中央公論新社)

ポエニ戦争ものといえば、ハンニバルが主人公、ローマ側視点の場合でも彼が重要登場人物である場合がほとんどではないかと思うのですが、本書の主人公は大スキピオで、ハンニバル本人が登場するのはほんの数ページという異例の構成でした。

もっとも、
ハンニバルに何度も敗れたスキピオが、ハンニバルの戦法を研究して、やがてザマにおいて、カンナエでローマが惨敗した戦いをサイドを変えて再現する過程を描く、
というのが主筋なので、ハンニバルが登場していなくても、本当の主人公はハンニバルなのかもしれません。

重装歩兵でひた押しにするローマ軍を戦場中央にひきこんで、両翼の快速騎兵で包囲殲滅するというハンニバルの戦法はある意味ありふれたものなのですが、本書でも指摘されている通り、そんなふうに(傭兵が主力の)軍隊を思うがごとく機動させられるように訓練する、あるいはコントロール可能なまでに兵士たちの信頼を勝ち取る、という点が本当は難しいのでしょう。

佐藤さんの作品で最初に読んだのは「双頭の鷲」で、これが私の読書遍歴の中ではベスト5にはいるくらいの面白さだったせいか、どうもその他の作品が色あせてみえるんですよね。本書も期待したほどではなかった、というのが本当のところです。
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