蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

昨夜のカレー、明日のパン

2014年01月21日 | 本の感想
昨夜のカレー、明日のパン(木皿 泉 河出書房新社)

テツコの夫(一樹)は若くして亡くなったが、テツコは今も婚家で義父と二人暮らしである。二人とも今の暮らしが心地よくて(義父と未亡人の二人暮らしという)やや違和感がある関係を止めることができないでいる。二人を中心に家族や日常生活の意義を考えた作品。

テツコと義父の会話を中心に話が進むのだが、この会話が(著者(夫婦二人の共同制作)のエッセイ集(二人の対話形式)である)「二度寝で番茶」に似ているというのか、その続きを読んでいるようだった。

各章が独立した短編としても読めるようになっている。著者は脚本家が本職なので、各章が1話である連続ドラマのような感じにも思える。
ドラマと違うのは、各章が時系列で並べられていないこと。章の変り目で、時間が突然昔になって語り手がすでに死んでいる義父の妻や一樹になったりする。
これが一種謎解きのような役目を果たしており、あまり詳しく説明されていなかったテツコと義父の暮らしの来歴や周辺が明らかになってくる。

こういう構成は小説ならではで、映画やドラマでこんな構成にしたら、わけがわからなくなると思う。
脚本ではやりにくいことを、小説で実現しようとしたのかもしれない。

テツコと義父が暮らす、広い庭に大きな銀杏の木がある古い家の描写がとても素敵だった。事件らしい事件が起きないのんびりした映画にして、この古い家を見せてもらいたいなあ、と思った。
コメント
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