蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

フィッシュストーリー

2010年01月17日 | 本の感想
フィッシュストーリー(伊坂幸太郎 新潮文庫)

デビュー直後からハードカバー版発行時の書下ろしまで、執筆時期が異なる4つの短編を収める。

デビュー直後に書かれた「動物園のエンジン」には、伊坂さんの作品の特徴といったものがかなり盛り込まれている。
不可能趣味的な謎、オカルティックな設定、叙述的なトリック、現実世界への危機感等々。また
、面白さととんでもなさが紙一重の感じは「オーデュポンの祈り」と共通のものがある。下手をすると編集者に相手にもされなさそうな作風なのに、才能を見抜いて、ややとんでもなさを減らした「ラッシュライフ」に繋げた新潮社の力はすごいと思う。

一番良かったのは、やはり、表題作の「フィッシュストーリー」。
時間と場所が異なるエピソードが最後に一本につながるという映画的手法は、正直いってあまり効果的だとは思えない。
しかし、主役の売れないロックバンドの最後の録音シーンは、分量は少ないが圧倒的な面白さがあった。
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