蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

アンダーリポート

2008年07月29日 | 本の感想
アンダーリポート(佐藤正午 集英社)

検察事務官である主人公は、15年前、婚約者がありながら隣室の人妻にほのかな好意をいだく。
この人妻は夫からしばしば暴力をふるわれているが、主人公はなすすべがない。そのうち婚約者も主人公の感情に気づき、二人の関係は冷えていく。
人妻の夫は何者かに殺害される。主人公は人妻が殺人を犯したのでは、と疑うが、人妻にはアリバイがある。
15年たって、人妻と殺された夫の間の娘が主人公を訪ずれる。そして主人公は、あるきっかけから、15年前の殺人の真相に気づき、その証拠を探し始める。

佐藤さんの小説の主人公は、たいてい几帳面で、独身でも身の回りの整理整頓が行き届き、皮肉がきつく、世の中を斜めから見ている。
本書の主人公も例外ではない(欠かすことなく日記を書いているとか)のだが、クールなはずの、どの本の主人公も、ある一点については異様な執着をみせる。

同じようなタイプのキャラクタを登場させ、筋立てもどこか似かよったものがあっても、新作が出ると読まずにはいられない。実力ある作家はそんなものなのだろうか。

また、本書は構成が凝っていて、最後まで読み終わった瞬間、必ず、最初の章を再度読まずにはいられなくなるようにできている。
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