蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

仕事の流儀-ライバル対決 森内俊之VS羽生善治

2008年07月21日 | Weblog
仕事の流儀-ライバル対決 森内俊之VS羽生善治

7月15日にNHK総合で放送された番組。羽生さんが名人位を奪取し永世名人となった今年の名人戦を二人のインタビュウを交えながら描く。

局面によって変化する二人の表情がうまく捕らえられていた。森内さんが第三戦で絶対優位を築きながら、羽生さんがあきらめず粘る。森内さんが「なんだ、こいつ、いいかげんにしろ」みたいな表情を浮かべた場面、また、その後に森内さんに大ポカが出たところで、「しまった」という表情がモロに顔に出てしまう場面。
羽生さんはともかく、森内さんは感情をぐっと抑えるタイプだと思っていたので、意外であった。逆にいうとそれくらい痛恨の一手だったということか。
森内さんが第三戦で敗北後、感想戦のあとも盤から離れられず、一人座っていた場面も深く印象に残った。

もう一つ印象的な場面は、二人が微笑みを浮かべて楽しそうに指している表情をとらえたところ。高みに達した二人だけが理解しあえる真髄。
これを見て思い出したのが「フェルマーの最終定理」。
その証明を理解することすら、世界中で両手で数えられるほどの人にしかできないという。他のだれも知らない、他のだれも達し得ない彼岸の楽園で戯れることが出来る幸せ、みたいなものだろうか。
(もっとも2回目に見た時に気づいたのだが、もしかすると、この場面、居眠りしている記録係に気づいて二人が思わず笑ってしまった、ようにも見えた)

第三戦の後、森内さんは数日間、盤に向かうことができず、バッティングセンターでうさ晴らしをする。結局2勝4敗で名人位を奪われた翌日は始発でホテルを後にした。
前述の第三戦のシーンも含め、この番組は羽生さんの勝利とその天才を讃えたというよりは、(羽生さんに比べると)天才とは言いかねる森内さんが、一度は羽生さんに追いつき追い越したように見えながら、ここに来て再度つきはなされてしまった、という、敗者としての姿が主題になっていたように思う。
しかし、この敗者の姿はとても美しいものであったが。

最後に「プロとは何か」と聞かれて、羽生さんは「365日24時間、プロであることを意識すること」と、森内さんは「現状に満足せず型を打ち破ること」と(いう主旨を)答えた。

それにしても、この後もさらに一冠(棋聖)をもう一人の同世代ライバル佐藤さんから奪い、ここに来て第二の全盛期を迎えた羽生さんの勢いはすごい。7冠永世襲名がかかる竜王戦(一方、現竜王も今年勝てば永世竜王)で挑戦者になれば、大変に盛り上がりそうだ。
コメント
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