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魚の養殖と水耕栽培とを組合わせたAQUAPONICS:農業の未来に繋がるか?

2021-08-16 15:32:08 | 社会問題
閉じられた空間で野菜を育て、魚も育てる。しかも肥料も殺虫剤も使わずに。
この方法は未来の食糧生産に繋がるか? (DeutschWelle、2021年8月13日)

チラチラと紫色に光る宇宙船のような温室が、オランダEindhoven工業団地の旧式な酪農工場地区に建っている。工場が宇宙船のように飛ぶわけは無いが、Phood Farmの創業者達の好きなようにさせれば、その工場の事業は間もなく離陸の運びとなろう。彼らの希望は未来の農業がここから生まれた、と言われることである。

テニスコート程の広さの場所でレタスを週に200kg育てられるという5人の若き創業者達が用いた方法とは、AQUAPONICS(養殖Aquaculture別名魚牧場と水耕栽培Hydroponicsとの組み合わせ語)である。水と栄養素とを最高度に有効利用するシステムと言える。

「農業がわれわれの資源を費消している」

単一に栽培する食糧生産方法と過剰な肥料と殺虫剤の使用とが土壌に危害を加えて、生物多様性と生態系とをおびやかしている。

世界の食糧生産は全温室効果ガスの約20%(輸送時の発生量は含めず)に対応している。世界の約半分の人が年の一ケ月は厳しい水不足に見舞われているにもかかわらず、世界の飲料用水の70%が農業用向けに使われている。

Phood FarmはAquaponicsが解決への重要な役割を果たすと信じている。一つの理由はAquaponics法では使用する水の量が従来法に比して90%の節約になる点である。

「再循環方式農業システムはどのように働くのか?」

比較的簡単な工程である。苗が育った後にレタスの根を浮遊する発泡スチレンの板に挟んで水上に置き、収穫まで5,6週間放置する。

植物の水槽の前に、2個の大きなプールが置かれ、そこでは180匹の鯉が泳いでいる。鯉の排泄物を含んだ水溶液は、別の一つのプール(そこでは自然界中の微生物が存在して鯉の排泄物に存在するアンモニアを植物が利用可能な硝酸塩へ変換する)にポンプで移され処理される。

硝酸塩へと変換された水溶液は植物が栽培されている槽へ移送され、栽培植物が硝酸塩を利用し成長する。硝酸塩が消費された水は浄化されている。その浄化された水は再度鯉のいるプールへと戻される。

植物はAquaponics栽培法では余分の肥料を全く必要としないか、又は少しの量で育つことになる。“魚がいるので、彼らが全ての栄養素を提供してくれる”とPhood Farm共同創業者のElfring氏はいう。

システムは外界から遮断された密閉系であり高度に制御されているので殺虫剤も必要ない。収穫量も従来型の耕法に比して有意に高いと、Kloas氏(淡水生態学と内陸漁業のLeibniz研究所の科学者)はいう。

”10リットルの水があれば、密閉型再循環システムで2.5gの魚が生産できる。充分に装置化されたAquaponicsシステムを用いれば100gの魚と500gのトマトを同時に育てられる”とKloas氏はいう。

トマト・ナス・レタス・多種類のハーブ類と野菜が同様に育てることが出来る。原理的には穀類やトウモロコシも可能であるが、設備投資的に考えると実用化は難しいだろう。リンゴや柑橘類は向いていないという。

「Aquaponicsを利用することで魚類乱獲を防ぐ」

他のAquaponicsシステムと異なり、Phood Farm社は愛好家の為に鯉を養殖している。Elfring氏と共同経営者は食用魚への変更を近々考えている。これは海洋生態系の現在の大きな問題点の乱獲に対する彼らの貢献を考えての動きである。

養殖漁業は大洋での乱獲には有効であるが、養殖魚からの排泄物が周囲の生態系に負荷となるという欠点を持つ。また鮭等の肉食性魚の養殖では、飼料として餌になる魚の乱獲が起こる。WWF(World Wildlife Fund)によると、世界で漁獲の約20%が養殖漁業の餌として利用されている。

ティラピアや鯉のような植物性の餌で育つ種類の魚が、従って持続可能な養殖漁業やAquaponicsの為には重要な魚種である。

「食糧の自家生産と自家消費の推進」

Abdus Salam氏(バングラデシュ農業大学の科学者)によれば、小さい再循環型システムはアフリカ、アジアやラテンアメリカの新興国で特に有用なものだという。

10平方メートル程の屋根の上の空間があればバングラデシュの一家族の年間必要分の70%程の野菜が賄える、とSalam氏は言う。このことは資源が乏しく気候変動による影響を更に大きく受ける新興国では重要である。

100ドル程があれば、バングラデシュでは40kgほどの野菜が年に4回収穫でき、年間7kgのティラピアが育てられる、という。Aquaponics栽培法は市内の家の屋根の上とか田園地帯でもどこでも取り組めるものである。

「食糧安全保障のための大規模なAquaponics」

世界の人口が増大していき資源の不足が更に高まるとの意識から、Kloas氏は今後Aquaponicsの大規模化を考えている。“我々全員の食糧安全保障のためには大きな施設が必要だろう”と同氏は言う。

オランダの会社Omegabaars社がどうやって進めるかを示している。魚牧場が隣接のトマト農場と水と栄養素の分配回路を既に確立している。

Kloas氏は今後の5年10年をかけて展開をしていく必要があると言っている。”こっちだけを生産するとか、もう一方だけを生産するというシステムを考えるべきでなく、両者(野菜と魚の両方)を組み合わせることが食糧安全保障を考える鍵になる。“

Phood Farm社の価格はEindhovenの地場の価格と既に競争できる所まで来ている。若い会社はまだ高い利益を産むまでには育っていないが、今後数カ月、数年先には変わっているだろう。

市の中央部で大きな施設が計画中である。しばらくはAquaponicsの宇宙船は地上に留まっているが、離陸を待つ時間はもう少しのことだろう。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
yo-chan

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