老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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15人がムカデの足たれ!(ラグビーワールドカップに想う)

2019-10-01 17:05:11 | マスコミ報道
『15人がムカデの足たれ
「整然と動いているムカデの足について、脳と言う中枢が全ての足に指令を出しているのではなく、一本の足が全体のために動きを起こし、他の足がこれに連動している。」と考えた英国の学者がいた。
 この考え方は、チームスポーツのラグビーにも当てはまる。
監督・コーチという指導者が脳であり、選手は「足」だ。ムカデの足が多いチームほど、ボールを継続できるチームだと思う。
―中略―アドリブにこそ、指導者が口出しできないラグビーの面白さがある。
15人がムカデの足にならなければならない。』
・・・・・・1996年 毎日新聞の記事

この記事は、毎年、花園で行われる全国高校ラグビーの名勝負として語り継がれている名古屋の西稜商業対大阪の啓光学園の決勝戦の翌日に書かれた。
西陵商業×啓光学園 (前半) 1996年 花園決勝 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=pSpHVn3J2r0

わたしは、これほど的確な表現をしたラグビー論はない、と考えている。

わたしは、この掲示板で何度かラグビー論を書いた。スポーツ好きの私だが、ことのほかラグビーが好きなのは、上記のようなラグビー競技の持つ奥深さに魅かれたからである。

今年の一月に書いた「ラグビー競技の精神と多様性を見習え」から、もう一度引用させてもらう。   
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/9908853da0cc2ddb8bc7bd3411f9ced8
・・・・
「多様性こそラグビー文化」。4年前のワールドカップで活躍した五郎丸選手の言葉。こういう先進性こそ、日本ラグビーが世界的強豪国に肩を並べられる国として進化した最大の要因である。

さらにラグビーという競技は、正統的保守主義(漸進的民主主義。安倍自民党のいう保守主義とは全く違う)思想を見事に体現している。

少し、ルールに即して説明する。

★ラグビーは、ボールを前に投げてはいけない。
この場合の選択肢⇒ ①自分で運ぶ②キックで前に運ぶ(キックの場合は前に蹴る事を許されている)③後ろの味方にパスする

① ②の場合は、敵にボールを奪われる危険性が高い。⇒ラグビーの防御は、タックルという強烈な方法が許されており、自分だけでボールを運ぼうとすると、奪われる危険性が非常に高い。キックする場合は、敵陣に蹴りこむことになるので、ほとんどのボールを敵に奪われる。⇒そのため、③の方法を選択する場合が多い。⇒後ろの味方にパスする。

※このルールの思想的意味⇒進歩(前に進む)とは、後ろ向きに進むことである。⇒前進するためには、いったん後退する必要がある。⇒過去の検証なくして、進歩はない。
⇒この考え方は、イギリス人の国や社会に対する考え方と一致する。

●「ドイツ人は、考えてから走り出す。フランス人は、走ってから考える。イギリス人は、歩きながら考える。」この比喩は、欧州を代表する国家である英独仏の考え方の相違を見事に言い当てている。

★ラグビーボールの特殊性⇒楕円形のボールでどう転ぶか分からない。不確定要素が多い球技⇒この不確定要素に対応する技術と瞬時の判断力と個人の創意工夫が求められる。
⇒個人のアドリブが重要になる

★ラグビーは15人の選手が必要
ラグビーのような激しい肉弾戦を伴う競技では、怪我は日常茶飯事。15人だけではチームは組めない。最低でも20人から25人の選手が必要。しかも、不確定要素が多く、個人の判断と創意工夫が必要な競技だからこそ、チームとしての理念、戦略、戦術が重要になる。それを実践する選手の理解度、それを具現化する技術の練度、90分間戦い続けるフィットネスが重要になる。だからこそ、それを司る指導者の頭脳が問われる。

ここで問われているのは、古くて新しい【組織と個人】の問題であり、二者択一ではなく、組織も個人も生きるにはどうしたら良いか、という組織論である。

(1) 指導者の明確な理念が必要(戦術・戦略の問題)
(2) 選手の理念(戦術・戦略)の理解度が鍵を握る
(3) 組織が前進するためには、前の実践の総括が重要⇒後ろ向きに進む
(4) 組織が前進するためには、前の実践の継続が必要⇒継続の精神
(5) 組織が活性化するためには、個人の創造性が不可欠⇒アドリブが重要
(6) 個人の創造性を生かすためには、他の選手のフォローが重要⇒継続の精神
(7) 組織の活性化には、選手それぞれの能力にふさわしいポジションが必要⇒選手は与えられたポジションの理解が必要。同時に他のポジションに対する理解が重要。⇒能力の評価、ポジションのトータルな理解、フォローの問題

こう見てくると、外国人選手や混血の選手たちをチームの一員として迎え入れ、チーム活性化やチーム強化に生かす、と言う事は、日常からの国際性が必要になる。これをやり遂げて初めて、チームが強くなり、選手も進化する。
・・・・・・

さらにラグビーと言う競技。実に痛い競技。引退したラグビー選手に聞くと異口同音に「よくあんな痛いことを我慢できたな」と言う。

特に、フォワードの選手。身を挺して、ボールをバックスに供給する。世界のフォワード連中の大半は、身長は180~190Cm前後。中には2mを超える選手も稀ではない。体重は優に100Kgを超える。こんな選手が全速力で走り、タックルし、ぶつかる。

一口にボールの争奪戦と言っても、とんでもない肉弾戦である。ぶつかる衝撃、襲い掛かる力、圧力は半端なものではない。フォワードの選手は生傷が絶えない。

それとフォーワードの第一列。フロント・ローと言うのだが、スクラムを組む最前列に位置する。彼らは最前列でスクラムを組むため、多くの選手は耳が変形している。それはそうだろう。スクラムは8人。世界のトップチームの平均体重は、110Kg前後。つまり、8人で880~900Kg。両チームで、1800Kg前後。この16人が全力で押し合う。

その全ての力が最前列に加わる。想像を絶する力が、フロント・ローの選手たちの肩や身体に加わっているのである。耳も変形するはずである。

大畑というウイングの有名選手がいた。彼が言うのに「フォワードの選手が組み合う瞬間凄い音がする。骨と骨がぶつかる乾いた音がする。タックルの時にもすごい音がする。そんな音を聞いていると、ああ、奴らは信用できるな!と思う」と語っていた。

そんな痛い思いをしながら、バックスの選手に良い球を供給する。チームの勝利のために黙々と痛くて、汚れる仕事をこなしていくのである。文字通りの「自己犠牲」の精神の発露である。

【ONE FOR ALL , ALL FOR ONE】
ラグビー精神を表す有名な言葉だが、文字通りいつ怪我をするかも分からない状況に自ら身を投じ、チームのために献身的に痛くて汚くてつらい仕事を黙々とこなすフォワードこそ、ラグビー精神の権化のような存在である。

ラグビーはイングラドで生まれた競技。ザ・ナインと呼ばれる名門パブリック・スクールで始まった、と言われている。

※ザ・ナイン
(*1)設立年度が古い順にウィンチェスター(1382年)、イートン(1440年)、セント・ポールズ(1509年)、シュルズベリー(1551年)、ウェストミンスター(1560年)、マーチャント・テイラーズ(1561年)、ラグビー(1567年)、ハロウ(1572年)、チャーターハウス(1611年)の9校

【パブリックスクールのミッション(使命)】
・・・
各校の校長が口を揃えて言うのは、学術的な能力や芸術、スポーツの才能を伸ばすことはもちろんだが、それ以上に「良識と品格を備えた市民」を生み出すことが重要なのだということです。ハロウ校の校長はこう言っています。「成績だけではなく、大学においてもその先の人生においても、より良い人間になることを私は彼らに望みます。ハロウに来る目的が単に試験で高得点を得ることであれば、スポーツ、音楽、課外活動を減らさなければなりません。しかしそれでは彼らはあまり魅力的な人間にはならないでしょう。高い理想ほど、長くかかるのです」と。人間にはひとりひとり、独自の才能があります。独自の才能の発見と育成という教育本来のミッションを貫いているのです。
・・・
※英国名門校パブリックスクール「ザ・ナイン」から日本が学ぶべきこと
https://resemom.jp/article/2018/08/31/46543.html

以前に紹介したことがあるが、イギリス流武士道精神である「Gentleman」になる精神を感得するための重要なツールとしてラグビー競技が重要視された。さまざまな立場の多様性を重視しながら主体性を持って行動するというイギリス型のリーダーシップを学ぶ場として、ラグビーは活用されていたのである。

換言すれば、イギリス流エリート育成法の中心にラグビーが位置していると言って過言ではない。日本でラグビーを最初に取り入れたのが、慶應義塾だったのも偶然ではない。

以前にも書いた事があるが、「戦場にかける橋」のアレック・ギネス扮する将校の体格の立派な事。兵隊の2、3人は平気でぶっ飛ばせるガタイをしている。シャーロック・ホームズもボクシングをしていた。

つまり、イギリス紳士は、腕力でも庶民に決して負けないというわけである。これが、イギリス流紳士(支配階級)のありようだと言うわけである。

現在行われているラグビー・ワールドカップの参加国に英連邦国家の多いことを見れば、如何に英国流思想を踏襲している国家が多いことが良く分かる。イギリス、アイルランド、ウエールズ、スコットランド、ニュージーランド、オーストリア、サモア、フィジーなどがそうである。

せっかく、ワールドカップが日本開催されたのである。TVの「にわかラグビー評論家」どものバカ騒ぎに惑わされず、ラグビー競技の持つ思想性や奥深さを学んで、現在の日本のエリート層連中の薄っぺらさを見つめなおすのも、一つの見方だと思う。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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