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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「死刑台のエレベーター[新版]」(著:ノエル・カレフ/訳:宮崎 嶺雄)

2010-09-26 22:58:54 | 【競馬】窓越しのレース
 完全犯罪をもくろんだ主人公(一応)ジュリアン。それを達成したと思われた直後に無人のビルのエレベーターに閉じ込められてしまい、その間にある若いカップル(フレッドとテレザ)に車を盗まれ、36時間後にやっとエレベーターから脱出した時には、全く身に覚えのない殺人容疑をかけられていて……さあどうなる? という話です。

 フレッドとテレザがジュリアンの車を盗んでからの長い長い逃避行、ジュリアンの妻ジュヌヴィエーヴとその兄夫婦のやりとり等々を読み進めながら、いつになったらジュリアンが閉じ込められたエレベーターから脱出するんだ? と思っておりました。で、気づいたらもはや物語は2/3を超えていました(笑)。
 一体これはどういう風に物語の決着をつけるのかと思ったものですが、読了後にやっと、ああ、なるほど、そういうことを書きたかったのか……と気づいた次第です。レーベルが「創元推理文庫」だったので、どうしても謎解きを連想してしまってましたが、実際はそうじゃない。エレベーターそっちのけで進んでいくエピソードのひとつひとつが、最後にジュリアンを待ち受ける事態が明らかになるにつれて面白いように結びついていきます。
 完全犯罪がもうひとつの完全犯罪(と言えるのかどうかは微妙だけど、こっちはもう犯人いなくなってしまったし)を呼び、完全であったがゆえに、ジュリアンにとってとてつもなく大きな陥穽となってしまった。嘘が嘘を呼び、しまいには拠りどころであった真実すらも嘘を事実に変えるだけのものと化してしまう。この構成力はすごいかも。

 ぶっちゃけ、下手に完全犯罪なんかやってもろくなことにはならないぞ、という話かもしれないとも思いました。(笑)←違うと思う。


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