2 吸血鬼
5
5年前。新宿。
「悪意だ。それもかなり強い」
村上勝則が純にささやいた。
ゴールデン街の片隅だった。
雨はあがっていた。
水溜りにネオンが映っていた。
光っている。
「先生これは……」
犯罪の痕跡現場にどす黒い悪意が渦をまいていた。
「感じるか」
「すこしだけ」
「微弱な反応でもすばらしい。やはり純には特殊能力がある」
すすり泣くような音がしていた。
その音をきくと純はどっと汗が噴き出した。
戦慄。
とてつもない恐怖が純をとらえていた。
どうして、こんなたわいもない音を怖がるのか。
その実態をしりたくて、純は物陰からのぞいた。
路上に女が倒れていた。
なにやっているんだ。あの男は。
なにか妖しい。純はかけよろうとした。
「むだだ。もう死んでいる」
勝則にとめられた。
「見えるか。吸血鬼だ」
「吸血鬼? そんな――吸血鬼がいるなんて」
「そうだ。吸血鬼だ。やはりみえるんだな。おれが見込んだだけのことはある」
男の口の端からは血がしたたっていた。
「ぼんやりとですが、吸血鬼に見えてきました」
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5年前。新宿。
「悪意だ。それもかなり強い」
村上勝則が純にささやいた。
ゴールデン街の片隅だった。
雨はあがっていた。
水溜りにネオンが映っていた。
光っている。
「先生これは……」
犯罪の痕跡現場にどす黒い悪意が渦をまいていた。
「感じるか」
「すこしだけ」
「微弱な反応でもすばらしい。やはり純には特殊能力がある」
すすり泣くような音がしていた。
その音をきくと純はどっと汗が噴き出した。
戦慄。
とてつもない恐怖が純をとらえていた。
どうして、こんなたわいもない音を怖がるのか。
その実態をしりたくて、純は物陰からのぞいた。
路上に女が倒れていた。
なにやっているんだ。あの男は。
なにか妖しい。純はかけよろうとした。
「むだだ。もう死んでいる」
勝則にとめられた。
「見えるか。吸血鬼だ」
「吸血鬼? そんな――吸血鬼がいるなんて」
「そうだ。吸血鬼だ。やはりみえるんだな。おれが見込んだだけのことはある」
男の口の端からは血がしたたっていた。
「ぼんやりとですが、吸血鬼に見えてきました」